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第12話 のんびり開拓をしています

遅くなって申し訳ありません。

「兄ちゃん。こんなにリンゴを買い込んでどうするつもりなんだ?」


 翌朝、2日かけて自宅に戻った俺はディナダンを連れて買い出しに出かけた。『話』スキルを持っている所為か値切るのが上手いので買い出しのときには重宝するのだ。


 他のメンバーは領地の人々を駆り出し、マーリンが居る間にできるだけ開拓しようと奮闘中だ。


 ブリタニア家の領地周辺では少し森に入るとリンゴが良く採れる。大抵は冬場の保存食になるのだが『賢』スキルで活用法を見つけだしたのである。


「お酒になるんだ。搾りかすはジャムになる。種は油になる。」


 実はどうしてもフィッシュアンドチップスを作りたくて植物油の原材料を『賢』スキルで探していたのだ。その大部分は熱帯地方を原産とする植物ばかりだったのだが、唯一リンゴの種だけがこの地方でも獲れるものだったのだ。


「お酒ってワインのような?」


「そうだ。ワイン樽も買っているだろ。」


 ワインの原材料であるぶどうの種からも油が採れるのだが、ぶどうもこの地方よりもずっと南のほうでしか獲れない。


 『賢』スキルによるとリンゴの外皮には天然の酵母が付着しており、丸ごと絞り出すだけで発酵が始まる。リンゴのお酒というと前世ではシードルが有名だが、これを製造するには瓶の中で発酵させるため、栓ができるガラス瓶が必要らしい。そこでワイン樽を利用してアップルワインを造ろうとしているのである。


 発酵スピードは意外と速く1ヶ月くらいで1次発酵が終わり、果汁のみ樽を移し変えて2ヶ月ほどで2次発酵が終るらしい。ちょうど今が収穫の時期なので3ヶ月も経てばアップルワインの出来上がりというわけだ。


 『賢』スキルではいろんな時代の製法も確認できるので、この世界に会わせたものを選択している。


 ブリタニア家は騎士爵家だが何か祝い事があるたびに主家としてお酒を出さなくてはならない。従って1年でワイン樽を1樽くらいは消費するのが普通なのだが遠くから運んでくる所為で結構な値段がするのである。












「兄上。宮廷にはいつ行くんだ?」


 マーリンが滞在するようになって3ヶ月が過ぎた。雪が積もり開拓のスピードも落ちてきており、いつもの通り秋に作っておいた保存食で厳しい冬を過ごすつもりである。


 アップルワインも順調にアルコールに代わってきている。『賢』スキルによると糖度が高いと7%位にはなるらしい。週1回味見をしているが甘味が残っているからまだアルコール度数は上がりそうだ。


「そうだな。春になったら出発するよ。」


 間者が暗躍している状況下でブリタニア家のエクスカリバーの復活の挑戦権を得てから1ヵ月もしないうちに上京すれば、痛くも無い腹をさぐられそうだ。今はバン辺境伯領でランスロットのコネを使い、グリフレットに情報を収集させているところだ。


 アップルワインを売りに行こうとも思っているが今季は試飲だけで本格的な出荷は来季を予定している。宮廷に行くのも99パーセントそれが目的だったりする。


「王位が空白の間は国が乱れるんだぞ。魔獣の跋扈も止まらない。」


 マーリンが珍しく神獣らしいことを言う。


 本人には言えないが魔獣の跋扈を許しているのはマーリンの所為だ。マーリンが心穏やかに国の中心に居ることで魔獣が大人しくなるのだと思う。その証拠にここ3ヵ月ほどはブリタニア家の領地どころか、近隣の領地でも魔獣が里に降りてきたという話を聞かないのだ。


 グリフレットによるとその影響は近隣バン辺境泊の領地にまで及んでいるというから、国の半分近くを覆っていることになる。こんな辺境の更に僻地に居なければ国も平穏無事に違いない。


 確かに国が乱れてきている。外敵に狙われているかららしい。隣接する国々からチョッカイを受けている程度だが戦争になるのも勘弁してほしい。


 アーサー王伝説なら周囲の国々を取り込み、全ヨーロッパ統一するところから初めなければならないが、既にこの国は大国でチョッカイを掛けてきているのは間に僅かな国々を挟んだ大国で前世なら古代ローマ帝国に当たるところのようだ。


「ところで今日の夕食は何かな?」


 これだ。神獣はしっかりと餌付けされている。このままずっと、この領地に居てくれないかなと思い『賢』スキルでいろんな料理を作っては出しているのだが、グリフレットにバン辺境泊領でいろんな食材を買ってきて貰っているがネタが尽きてきた。


「リクエストはあるか?」


「この間食べた『天ぷらうどん』がいい。」


 フィッシュアンドチップスがどうしても魚の天ぷらになってしまうのは前世が日本人だからなのだろう。それならばと開き直って、天ぷらをレパートリーに入れたところ意外と好評なのである。


 タマネギとニンジンをベースにかき揚げ天ぷらを作り、『腕』スキルを持つケイにうどんを打って貰っている。


「ケイに相談するんだな。」


 レシピを教えた当初は喜んで作ってくれていたのだが最近は飽きたのか、文句を言うようになった。3日連続で作らされればそうなっても仕方が無いよな。


 試しにパーシヴァルに足で打つやり方を教えたのだが足でもできないらしい。次はエレインかな。



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