第11話 ゲットしたミニスキルを使ってみた
マーリンが湖の乙女に連絡したのかランスロットとガウェインとガラハッドもやってきた。
ランスロットが仕切って3人で来たらしい。なかなか良い判断だ。
3人で代わる代わる抱きついてくる。
「心配かけたな。」
「すげぇ兄ちゃん。ジャイアントワームを倒したのか?」
「ガウェイン。ジャイアントワームの討伐部位は解るか? 冒険者ギルド経由で国に申請すれば賞金が出るはずだった覚えがあるんだが。」
倒したジャイアントワームは急速に身体が縮まっている。身体の大部分が体液で出来ているようだ。
「あるよ。ジャイアントワームには無いようでいてシッカリとした足首があるんだ。そこを切り取るんだよ。」
ガウェインが言った場所を慎重に切り取るが体液は飛び出してこない。それでも念のためボロ布に巻いて『箱』スキルに入れる。これで2人が3年くらいシッカリと師匠について教育を受けることはできそうだ。
「どうしたんだガラハッド。」
「この男は?」
「良く男だと解ったな。初めは馬泥棒だと思ったんだが俺のことも竜の剣のことも知っていた。何処かの間者の可能性がある。何か知っているのかガラハッド。」
ワームに殆ど補食され身体は腰より下しか無かった。騎馬民族であるこの国の人間は皆ズボンを着用しているので区別をつけにくいのだ。
「いや・・・知らない。そんな身体をどうするんだ?」
「何処か別の場所で葬ってやる。また魔獣が寄ってきても困るからな。」
今はワームの痕跡が残っていて近寄って来ないだろうが、半日も経てばどうなるかわからない。取りあえず『箱』スキルに入れておくことにした。それにガラハッドの様子が変だ。何かを知っていて言い出せずにいるようだ。
彼は国家に所属している守秘義務もあるだろうから無理に聞き出さないことにする。そのうち何かを話してくれるだろう。
「兄ちゃん。何処に行くんだ?」
「馬たちが逃げてしまったんだ。このままじゃ帰れない。ご苦労だが付き合ってくれないか。」
馬たちは街道沿いに何頭か居たのでワームを倒したことを伝えて、明日戻ってくるように言っておく。
2艘の舟に分乗して島に戻った。
「パーシヴァル。一緒に寝てくれないか。」
この言葉に生還を祝ってくれていた弟妹たちが固まる。
「そう言う意味じゃ無い。俺は仕方が無かったとはいえ初めて人を死に追い込んだんだ。少しだけ温もりが欲しいんだ。」
周囲に漂っていた緊張感が解れる。昨日は皆で仕組んでおいてなんだろうな。
あの手応え、そして目の前で人が死んでいく光景は2度と味わいたくない。何故、俺を放っておいてくれないのだ。監視されるような覚えも無いんだが、それともブリタニア家に俺の知らない何かがあるということなのだろうか。
翌朝、『箱』スキルに入れておいたパン種を元にピザ生地を作り、オーブン窯でピザを焼いて皆で食べた。
『賢』スキルには食べ物に関するあらゆる知識が詰まっていた。この世界に無いピザ生地の作り方もその1つだ。道理でアーサーは植物の育て方に詳しかったはずだ。
この世界のことを知る手掛かりになると思っていた俺は肩透かしを食らった格好だ。
「これ旨いな。もっと焼いてくれ。」
食い意地の張ったマーリンがお代わりを要求してくる。弟妹たちも同様だ。昨日の夜疲れて眠ってしまった所為で腹を空かせていたらしい。乾物もあるし、湖の乙女たちも用意してくれると聞いていたから、そんなことまで気が回らなかったのだ。言ってくれればいいのに。
昨日の雁の残りの肉や内臓をパーシヴァルに殺菌して貰い煮込みパテにしたものを具材にチーズを載せて焼く簡単なものになった。『賢』スキルを使えば、この世界の食材を使って生ハムも作れるし、ローストチキンも作れる。植物油の絞り方も解るからフィッシュアンドチップスなんて良いかもしれない。
「兄ちゃん。美味しいよ。」
しかし10枚焼いても20枚焼いてもまだ足らないらしい。もう少しでピザ生地のタネが尽きるという寸前で満足してくれた。