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第10話 解毒だけしてもらえば良かった

「お兄様。マーリンと抱き合っているの? それとも押し倒されているの?」


 俺は神経毒に侵され動きが鈍い。ユニコーンを掬い上げた状態で人の姿を取り戻したマーリンを避けることもできなかったのだ。


「そんなわけあるか。それよりもマーリン。生贄とはなんだ。まさかパーシヴァルを生贄に捧げなきゃ解毒できないのか? そんなことはさせないぞ。」


 俺はマーリンが動けないようにそのまま羽交い絞めにする。


「違うって、だから抱きつくな。兄上は本当に毒に侵されているのか? 毒に侵された人間はだんだん弱っていくものなんだがなあ。」


 『毒耐性』スキルで毒が回るのが止まっているからなのだが説明できないので無視することにする。


「パーシヴァルを生贄に捧げるんじゃないんだな?」


 俺は再度マーリンに確認する。神獣ユニコーンは穢れて国は荒廃するわ。パーシヴァルが死んでしまうわでは何にもならない。それなら俺1人で死ぬほうがどれだけマシかわからない。


「ああ痕は残るが手首から少しだけ血を貰うだけだ。」


「ダメだ。ダメだ。ダメだ。パーシヴァルは女の子なんだぞ。」


 女の子って年齢じゃないけど。手首に痕が付くなんてありえない。


「じゃあヴィヴィアンで「だからダメだって。」」


 今度はあっさりとヴィヴィアンさんを生贄として使おうとする。湖の乙女の本当の年齢はわからないがヴィヴィアンさんはもっと若いように見える。


「あの男ではダメなのか?」


 ワームに半分捕食された状態の男の身体を指して言う。


「ダメだ。毒に侵された血ではダメなんだ。」


「だから私が・・・「パーシヴァルは黙っていろ!」」


 パーシヴァルが口を挟もうとする。


「そうだ。これはどうだ。」


 俺は『箱』スキルからアーサーの遺体を取り出した。


「あれから何日経っていると・・・あれっ・・・死に立てなのか? 何故だ。どうしてだ?」


 『箱』スキル内は時間が経過しないらしい。


「使えるのか使えないのか?」


 もうそろそろ異世界転生者だとバレてもいいかもしれない・・・いや止めておこう。とんでもない義務とかあったら嫌だ。


「使える・・・ぞ。おかしいな。まあいいか。これだけ新鮮な生贄があれば、どんな魔法も使えるぞ。」


 マーリンの魔法使いとしての欲望をつついてしまったようである。とにかく早く解毒して欲しいんだがな。


「ああ解毒してくれれば何でもいいよ。」


 マーリンが大きな皿状の石の上にアーサーの遺体を置くと彼の右手がズブズブとアーサーの心臓辺りに潜り込んでいく。やっぱり素直に解毒の魔法にして貰うべきだったかもしれない。


 どういう仕組みか解らないが引き抜いた右手の掌の上には心臓が載っていた。まるで心霊手術だ。


 その後は覚えていたくもない光景が次々に現われ、そして消えていった。


 マーリンの上半身が血みどろになり、俺の身体もアーサーの血で汚れ真っ赤になったところでそれが終った。アーサーの遺体は影も形も無い。全て俺の身体に吸収された格好だ。


―――――――――――――――――――――

名前:アルトゥス

種族:人族

職業:猟師Lv4、騎士Lv1

年齢:37歳

HP:93624

MP:300

称号:勇者

スキル:翻訳、鑑定、状態、箱、賢、毒耐性Lv2

状態:[神経毒]

―――――――――――――――――――――


 マーリンの使った魔法は凄いものらしい。アーサーの職業、生命力、魔力を取り込み、グレーアウトしていた『賢』スキルまで取り込めたらしい。もちろん減り続けていた生命力は増加に転じている。


 だが『細胞毒』が消えたが『神経毒』がグレーアウトしている。特に身体も正常に動いている。解毒できなかったわけでも無いようだ。支障が無いんだから気にすることでも無いだろう。


「どうだ?」


「ああ大丈夫だ。身体も元通り動くし、あの何かが流れ出しているような感覚が無くなった。・・・ダメだ。それに触るな。パーシヴァル。」


 視線を周囲に向けるとパーシヴァルがオリハルコンの剣を湖の水で洗っていたのだ。


「ごめんなさい。私は汚れてた剣を洗おうと・・・。どうかしたの?」


 オリハルコンの剣にはワームの体液が付着していたはずだ。


「大丈夫なのか? 何か力が抜けるような感じはしないのか?」


「うんしないわよ。可笑しなお兄様ね。」


 俺はパーシヴァルに『鑑定』スキルを使ってみるが『細胞毒』も『神経毒』も状態が付いていないのだ。『清』スキルにより毒が効かない体質になっているのかもしれない。


 オリハルコンの剣を洗っていた湖では魚が浮いてくる。ワームの毒にやられているらしく状態が『細胞毒』となっている。


「パーシヴァル。その魚を持ち上げてくれないか?」


「1匹・2匹?」


「2匹共だ。」


 その数は10匹以上だが片手で1匹しか掴めないらしい。


「きゃっ。」


 パーシヴァルが持ち上げた途端、魚の状態から『細胞毒』が消え、魚が飛び跳ねる。解毒もできるらしい。なんだ。マーリンに解毒させなくても良かったんじゃないか。


「湖に浮いている分も拾ってきてくれるか?」


 パーシヴァルから手渡された魚を1匹1匹短剣で殺し、『箱』スキルに詰め込んでいく。明日の夕食のおかずに決定だな。小ぶりだから串に刺して丸焼きかな。

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