幸せの始まり
初投稿です。
天井が見える。
白い清潔な布を貼ってまだ数時間しか経っていないような、その綺麗な天井は私をまどろみから覚ますには十分すぎるほどに刺激的に感じられた。
朝起きて、朝食を作り、食べ、着替える。 いつもよりも軽い心持ちで、体さえも軽く感じる。
愉快な気分で身支度を整えているこの男には初めての彼女ができたのである。そして、今日はその彼女と初めてのデートの日だ。この男、つまり私は今とても幸せな表情を浮かべていることだろう!
今年の一月に十八歳を迎えた私は去年の九月、中学三年生の時から好きな女性に、受験生でありながら、告白をした。返事を聞いた時、私はこの世のすべてが思い通りになったような、飛び上がってしまうような、理性など半ば失った状態になったことを覚えている。
さて、私は桜舞う四月の公園で人を待っている...のだが予定より早く着いてしまったせいでなかなかに手持ち無沙汰である。公園に入って少しまっすぐに行ったところにあるベンチで私はスマートフォンをいじり始めた。しかし、それもすぐに飽きてしまい私は春の太陽に照らされた桜をぼうっと眺めていた。風のあるないに関わらずひらひらと落ちていく桜の花びらは浮かれている私にさえ命の儚さを想起させた。
「幸せも...いや...きっと大丈夫だ」
突然、目の前が真っ暗になる。私は引き戻される。暖かい感触をまぶたが感じる。私が恋した温度だ。
「誰でしょーか?」
「舞花...お前らしいっちゃあお前らしいけれども... 少し恥ずかしいよ...」
視界が開ける。振り返るとそこには太陽に照らされた真夏の向日葵のような笑顔があった。
私もつい笑顔になってしまう。
「じゃあ... 行こっか!」彼女はそう言い、私はベンチから立ち上がる。その瞬間、右手の自由は彼女に奪われる。ちょっと引っ張りすぎではないだろうか。ぐいぐいと引っ張られ公園の前のアミューズメントパーク(ボウリング場とゲームセンターの混合施設なのだが、目的はゲームセンターである)に連れていかれる。
公園の入り口に着いた頃、私はなぜかあの桜が見たくなりふと振り返った。
「ほら!信号わたるよ!ほーら!はやく!」
「あ、あぁ... わかったよ...」
私の心は凍り付いていた。
無い。
先程まであれほど照り輝いていた桜が、春の優しさが、なにもかもが―。
続きはあるかわかりません。