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竜騎士の日本見聞録  作者: ロクイチ
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エピローグその5 世界を覆う暗雲


「それで、北の山脈の状況はどうなっておるのだ」


「はは、昨日に比べ魔力波動は1.5倍に増えております」


「結界はどのくらい持ちそうか」


「魔導省の計算では、あと2日くらいかと・・・・」


グラン西方帝国の帝都、帝王デーメルは部下からの報告を聞いて嘆息していた。2千年の間封印されて

いた伝説の邪神、それが復活しそうとの報告を受けているからだ。


「わかった、軍にも引き続き警戒態勢を維持させよ。もし邪神が復活したら、まずは我が軍が迎撃を行うぞ」


「かしこまりました」


そう指示を出すデーメルには、MSC48のライブで声援を送っていたミーハーな表情はない。彼は冷徹な

為政者に切り替わっていた。


「イザベル殿下や日本の使節が訪問している時に、このようなことになるとはのお・・・・」


「その殿下ですが、自ら邪神の首もらいに行く、と意気込まれていたそうですよ。それに、日本も自衛隊

とか言いましたっけ、、、、援軍の派遣を検討しているとのことです」


「ははは、それは殿下らしいな。しかしこれはフェアリーアイズの問題だ。日本やその民となっている殿下

の手をわずらわせる訳にはいくまいて」


しかし、日本側は結構ノリノリで自衛隊の派遣準備を進めていたりする。曰く、


”怪獣との戦いは自衛隊の伝統”


とのことで、名島首相自らカール・グスタフを持ってフェアリーアイズに行こうとしたらしいが、さすがにこれは

斉木によって阻止された。彼は、”僕だって怪獣と戦いたいのにい”とブツブツ言っているそうだ。


「名島殿も相変わらずだな」


「吉岡さんも、”僕の邪眼で邪神を滅してみせる!”と息巻いていたそうよ。斉木さんがため息をついていたわ」


「斉木殿の苦労が忍ばれるな・・・・」


どうやって邪眼で邪神を滅するのだろう。全く、中二病患者の思考は理解できない。


「まあそれはともかく、今夜はあの串焼き屋だ。相変わらず繁盛しているようだからな。楽しみだぞ」


「うふふふ、串焼きにビール、楽しみだわあ」


しかし、そんな綾香の楽しみを打ち砕く者が現れた。言うまでもなく達夫と良枝である。


「アヤちゃん、あなたは今日はビールジョッキ1杯までよ」


「そうだ、昨日も晩さん会でワイン2本もあけてたじゃないか。飲み過ぎは体に良くないぞ」


「そ、そんな・・・・」


皇城内だというのにorz姿勢になる綾香。周囲のメイドや文官たちも何事かとジロジロと見ているので、

本当にやめて欲しい。しかし、イザベル達は後で思い知ることになるのだ。綾香の酒に対する邪神以上

の執念を・・・・


「綾香、それは一体なんだ・・・・」


「何言ってるのイザベル、ビールのジョッキじゃない」


綾香が手にしていたのは、バケツのような巨大なジョッキだった。彼女は”これでもジョッキ1杯”と強弁

しているのだった。酒飲みの意地汚さがよくわかる事例である。


「私、アヤちゃんの育て方間違えちゃったのかしら・・・・」


「仕方がない、日本に帰ったら強制入院させるしかないか・・・・」


両親の嘆きをよそに、綾香は串焼きをつまみながらビールをうまそうに呷っていく。確かにここの串焼きは

炭火焼というだけでなく、その焼き加減も絶妙なものなのだ。ともかく、一行はタレや塩コショウ、スパイス

などで味付けされた絶品串焼きを楽しんでいた。そんな時、トラブルが起こってしまう。


「あ、なんだあ、何やら店内がくせえと思ったら、トカゲの兄ちゃんがいたのか」


近くのテーブルにいた男達のグループが、ヴィドのことを指差して下品な笑い声を上げる。まあどこの世界

にもタチの悪い酔っ払いはいるものだ。皇国の民はドラゴンに敬意を表しているので、おそらく所用で訪れた

外国の者であろう。


「まあ、あいつらは”影”にまかせ、、、おい綾香っ! 何をする気なんだ!」


一行をひそかに護衛している”影”が男達を排除する前に、綾香が彼らのテーブルに近づいてしまった。


「あんたら、、、、ヴィドに何言ってんのさあっ!」


「ぶげほっ!」


暴言を吐いた男は、綾香がどこからともなく取り出した金属バットの一撃で吹き飛んでしまった。それを

見た仲間の男達も色めき立つ。


「このアマ、何してくれてんだ」


「もう容赦しねえぞ!」


ナイフを取り出して綾香に向かう男達、しかし、彼らも金属バットのスイングの前に沈んでしまう。


「この野郎! こんなもんじゃすまさないわよっ!」


「もういい綾香、それ以上やると死んでしまうぞ」


更に止めを刺そうする綾香だったが、さすがにイザベルとヴィドが止めに入った。2人になだめられ、綾香も

ようやく落ち着きを取り戻す。男達は皇国の影に拘束されていった。


「だってえ、、、、あの人たちヴィドの悪口を・・・・」


「もうよい綾香、そなたが我をここまで想ってくれることうれしく思うぞ。だが、もうこんな無茶はしないでくれ。

全く、寿命が縮まる思いだったぞ」


「ヴィド・・・・」


2人は衆目も気にせず抱き合って、何とも甘い雰囲気を醸し出している。イザベル達もやれやれとほっとした

その時、ヴィドのポケットから小さなビラがはらりと落ちた。それを拾ったのはイザベルの娘桜であった。


「ヴィドおじちゃん、なんか落ちたよ」


「あ、それは」


ヴィドが慌ててそれを回収しようとしたが、そんな事を見逃す綾香ではない。ヴィドよりも早くそのビラを桜

から受け取り目を通す。それには目線を入れた煽情的な女性の写真とともにこう記載してあった。


”鶯谷人妻専門 ハニームーン”


「ヴィド、、、、これは一体なんなのかしら」


「あ、綾香、、、ははは、ちょっと仕事の付き合いでな。断り切れずに、、、、」


「ヴィド、お 黙 り な さ い」


「ひ、ヒィっ!」


見苦しい言い訳を並べるヴィドに、綾香は阿修羅のような顔を向けるとその全身から、ドス黒い瘴気を放出

した。そしてそれは、豊富なマナの影響を受けて増殖し、フェアリーアイズを覆い尽くすのであった・・・・


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