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竜騎士の日本見聞録  作者: ロクイチ
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第211話 日本経済界が暗黒神に掌握されつつある件について


湯呑みを手にしたまま呆然としているイザベルとヴィドの前に、綾香を乗せた輿が近づいてゆく。両脇には

制服姿のOLが長い柄のついた大きなうちわを、綾香に向けて仰いでいた。その姿は清朝末期に権勢を

振るった西太后を彷彿とさせた。予想の斜め上をはるかにぶっ飛ばすその光景に、イザベルとヴィドは

すでに言葉もない。だが、これはまだほんの序の口であった・・・・


「や、2人とも待たせてごめんねー」


「あ、ああいや、今来たばかりでな、、、、」


何とか再起動を果したイザベルは、かろうじて返事をする。ヴィドはいまだ固まったままだ。


「じゃ、ちょっと降ろしてくれるかしら」


「「「「ははっ! 全ては偉大なる綾香様のご意志のままに!」」」」


2人の前に、綾香を乗せた輿が静かに降ろされる。しかし、輿から床までは結構な高さがあった。それに

気がついたイザベルが手を貸そうとしたその時、60代くらいのスーツ姿の男性が四つん這いになった。

綾香はその男性を踏み台にして輿から降りてくる。まるでどっかの映画で見た古代ペルシア帝国の皇帝、

クセルクセスのような振る舞いだ。正に絶対専制君主、それを見たイザベルは、再びフリーズしてしまった。


「あら、2人とも何ぼーっと突っ立ってんのよ。とりあえず座って座って」


「い、いや、、、綾香のイスは・・・・」


そうイザベルが言葉を絞り出そうとした時、綾香は先ほど踏み台にした男性を今度をイス代わりにする。


「そなた、、、、なぜに人をイス代わりにしておるのだ・・・・」


「ああ、なんでも本人の希望なのよねえ」


すると、その男性が恍惚とした表情でイザベルに話しかける。


「はい、こうして綾香様にお仕えすることが、卑小なる私めの望みであり、喜びでございます」


「お、おい、、、、」


しかし、それを聞いた綾香は冷徹な視線を彼に送る。そして、、、、


「会長、何度言ったらわかるのかしら。何家具が私の許可も得ないで勝手にしゃべってんの。もう背中

踏んであげないわよ」


「も、申し訳ございません! 平にご容赦をっ!」


絶対零度なオーラを纏う綾香の言葉に、男性は慌てて許しを乞うた。だが、イザベルはその中に聞き捨て

ならない単語があるのに気がついたのである。


「会長って、この男性は、、、、」


「ああ、ウチの会社の会長さんよ。ちなみに輿を担いでいるのは社長と取締役の皆さんね」


「そ、そうか、、、、」


平社員の身でありながら、すでに社内を掌握した綾香にイザベルは絶句する。


「あ、あははは、イザベルよ、我は相当疲れているようだな。何だかえらい悪夢を見ているぞ」


「目を逸らすでないヴィドよ。残酷なようだがこれは現実だ」


付き合っている彼女のあまりな女王さまっぷりに、ヴィドはとうとう現実逃避を始めてしまった。


「む、ところでこの会長殿どこかで見たことがあるような気がしたが、確か経団連の理事も勤めておられ

なかったか」


この直後にイザベルは、その事にうっかり気がついてしまったことを深く後悔することになる。


「ええそうよ。会長さんの紹介で経団連にもずいぶん知り合いが増えてねえ。将来私が政治家になる際は

全面バックアップしてくれるって」


「綾香よ、、、、そんな簡単に経団連の支持が得られるものなのか」


「いやーそれが、私を見た途端みんな平伏しちゃって、全てを捧げますって言われちゃったのよ」


どーやら、暗黒神だかのカリスマ性でもって、日本経済界の重鎮たちをも眷属にしてしまったようだ。綾香、

なんて恐ろしい子!


「ははは、そうか、まあ時間もない事だし、そろそろレストランに行くか」


イザベルは今までのことを全てスルーすることに決めた。そして、いまだ現実逃避して何事かブツブツ言って

いるヴィドを引きずるようにして、社外に出たのである。


「「「「「いってらっしゃいませ、綾香様!」」」」」


「うん、じゃあみんなもまた明日ね~」


社員総出のお見送りを受けて、意気揚々と会社を後にする綾香。その後、一流レストランでフルコースを

堪能するはずだったイザベルとヴィド、せっかくの料理がまるで砂を噛むような味しかしなかったそうな。


めでたしめでたし、どんとはれ。


次回は、イザベルと綾香が良枝かーさんの正体に迫る予定です。

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