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竜騎士の日本見聞録  作者: ロクイチ
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第190話 竜騎士の卒業旅行その2(悪夢再び)


さて、出発当日、成田空港のロビーでは・・・・・・


「やっぱり嫌だあぁぁぁぁぁっ! あんな悪魔の乗り物に、誰が乗るものかあぁぁぁぁっ!」


「イザベル、いーかげんにしなさいよっ! ここまで来て何駄々こねてるのさっ!」


まるで幼児のように柱にしがみついて、搭乗を拒否るイザベルと、それを何とか引きはがそうと悪戦苦闘

する綾香、そして見送りにきた面々の唖然とした表情があった。


「話には聞いていましたけど、まさか魔王軍をも恐れることのなかったベルお姉さまが、ここまで飛行機が

苦手だったとは、意外ですわ・・・・・」


「何でも、金属の塊が空を飛ぶことが、未だに信じられないみたいなの、はあ、、、、」


「ほらイザベル、他のお客さんにもジロジロ見られているでしょ。もう恥ずかしいから柱にしがみつくの、

やめなさい」


しかしイザベルは、首を横に振ってイヤイヤをするばかりであった。


「うう~、、、だって飛行機怖いもん! 絶対乗らないもん!」


強すぎる飛行機への拒否感のため、幼児退行まで起こしかけている。どうも、以前の鹿児島行の便で

乱気流に巻き込まれた時の恐怖が、フラッシュバックしてしまったようだ。周囲もこのパープー娘、どうしよう

かと途方に暮れ始めた時、ため息をつきながら綾香がスマホでどこかに連絡を入れたのである。


「あ、もしもし麗華さん、うん、実はイザベルがね、、、、そう、準備はバッチシなのね。じゃあイザベルに

変わるわ」


綾香は中国の麗華に連絡を入れ、スマホをイザベルに渡した。


「なっ! そうかわかった、、、、、うむ、竜騎士の名誉に賭けて、万難を排してでもそちらに行くぞ」


麗華の話を聞いたイザベルは、これまでの態度がウソのように居住まいを正した。


「見苦しいところをお見せした。このイザベル、命を代償にしてでも飛行機を克服し、中国に向かうぞ」


「いやベルちゃん、飛行機って命を代償にするもんじゃないでしょ・・・・・」


「魂の盟約を結んだ相手だが、いまだにこういうところがわからん・・・・・」


「あの凛々しい聖女さまのお姿は、別人だったのでしょうか・・・・・」


呆気にとられる周囲を尻目に、イザベルはゲートをくぐり機上の人となったのである。


「ふえ~、、、、やっと着いたな、、、、」


「あんた、いーかげん飛行機慣れないと、遠出できないわよ・・・・」


成田空港から4時間あまり、一行は無事上海に到着した。鳳グループのご招待だけあってビジネスクラス

の快適な旅だったのだが、イザベルはちょっと揺れただけでもこの世の終わりのようなうめき声を上げ、

綾香がなだめすかすということを繰り返していたのだった。


「はあ、今から帰りの飛行機が思いやられるわ、、、、あ、いたいた、麗華さん久しぶり」


「久方ぶりだな。息災であったか」


「ええ、私も久しぶりにお会いできてうれしいです」


上海で2人を出迎えたのは鳳麗華、高校時代のクラスメートで中国でも影響力を持つ鳳一族の跡取り娘、

そして、中国当局が血眼になって追っている腐った地下組織、”鋼鉄の乙女”幹部という裏の顔を持って

いる。そんな彼女がなぜ、イザベル達をご招待したのかというと、、、、


「イザベルさんには、政府がご迷惑おかけしましたから。鳳一族としてもお詫びをしたいと思いまして。それに

私の生まれ育ったこの国を、直に見て頂きたかったのですよ」


というのは表向きの理由、


”愚腐腐腐腐、、、、最近ネタも枯渇気味でしたから、間近で観察すればまた新たな萌えネタが・・・・”


という腐った理由であった・・・・・


そんな腐った思惑も知らぬまま、イザベルと綾香は迎えの車に乗って、市内のホテルへ向かった。この

ホテルも鳳一族の経営で、外国の要人やセレブも宿泊する一流どころであった。


「今夜は7時からお二人の歓迎も兼ねた夕食会を行いますので、時間がきたら下のレストランまで下りて

きてくださいね」


「うむ、承知した」


「うふふ~、本場の中華料理楽しみだわ~」


こうして中国での1日目は満漢全席とまではいかないが、本場の広東料理フルコースの豪勢なものとなった。


「鈴木イザベルさんと綾香さんの中国訪問を心より歓迎いたします。乾杯!」


「「「「「「「乾杯!」」」」」」」


麗華の父親の音頭で乾杯が行われ、静々と宴が始まった。乾杯の酒は中国の定番、貴州マオタイ酒で

ある。かつて毛沢東や周恩来も宴会の際に愛飲していたという酒だが、アルコール度数は50度を超える

強いものだ。これを小さな杯で一気に飲み干すのが、あちらの宴会のスタンダードである。


「うむ、私は”随意”で、、、、」


「まあ、あんた酒弱いから、舐める程度にしといた方がいいわよ」


もちろん、下戸の人のために”随意”という逃げ道もある。イザベルが早々とウーロン茶に切り替えたのに

対し、綾香の方はクイクイっとマオタイ酒を呷っている。


「綾香よ、ここは外国だ。くれぐれも飲み過ぎてハメをはずすでないぞ」


「あはは、大丈夫よ。これでも限度はわきまえているからさ」


そう笑顔で答える綾香に、なんとなーく言い知れぬ不安に襲われるイザベルであった。その1時間後、

彼女の不安は見事に的中してしまう。


「「「「「「「今日もお酒が呑めるのはっ! 宋先生のおかげですっ!」」」」」」」


「「「「「「「それえっ! 乾杯! 乾杯! 乾杯! 乾杯!」」」」」」」


手拍子に煽られマオタイ酒の入った杯を一気に飲み干す綾香と宋という男、彼はグループの顧問弁護士

らしい。


「ぐはっ! もうこれ以上は飲めん、無念だ・・・・・」


飲み終えた瞬間、宋は膝から崩れ落ちてしまう。対する綾香は平然とした顔だ。


「なあ~んだ、中国の人達って、意外とお酒弱いのねえ~」


「くっ! 誰かあの日本娘子に勝てるものはおらんのか!」


「こうなったら、徳民老師におすがりするほかあるまい! ささ老師、どうか仇を討ってください!」


「ちょっ、ちょっと待たんか貴様ら! ワシはそんなに酒は飲めんぞ。随意じゃ随意!」


しかし、すでに出来上がった面々には徳民の悲痛な叫びも届かない。彼は抵抗むなしく綾香の前に引き

ずり出されてしまった。


「あら、今度は徳民さんがお相手なの。うふふ、麗華のおじーさんだからといって手は抜かないわよ」


「お嬢さん、だからワシは随意だと言ってるだろうに!」


「「「「「「「今日もお酒が呑めるのはっ! 徳民老師のおかげですっ!」」」」」」」


「「「「「「「それえっ! 乾杯! 乾杯! 乾杯! 乾杯!」」」」」」」


徳民の心からの叫びは、手拍子にかき消されてしまった。杯を呷った徳民もまた、綾香の前に膝を屈して

しまうのであった。一方、その様子を見ていたイザベルと麗華は、


「あ、悪夢だ、、、、私は再び悪夢を見ているのか・・・・・」


「綾香さんがあんなにお酒が強かったなんて、、、、あれは完全に人外レベルですよ!」


と恐れおののいていた。まるで某会津でもあったような光景だ。完全にデジャブである。そして、またもや

悪夢は彼女たちだけを見逃すことはなかったのである・・・・・


「麗華お嬢様、徳民老師の仇を討てるのはもはやあなた様以外におりません!」


「い、いや私は随意で、それよりイザベルさんの方が、、、、って、どこに隠れてしまったのですか!」


戦場で鍛えた感で危機を察知したイザベルは、隠行の術式をかけその身を眩ましたのである。かつて

皇城を抜け出すために磨いたスキルが、今役に立ったのであった・・・・・


「あら、今度は麗華さんが相手なの。おじーさんの敵討ちとは敵ながらあっぱれだわ。でも手加減はしない

わよ」


「あ、綾香さん、私は随意で、、、、聞いてくださいぃぃぃぃぃぃっ!」


麗華の心からの願いは叶うことはなかった。手拍子とともにマオタイ酒を一気に飲まされ、彼女もそのまま

崩れ落ちてしまったのである。


「麗華よ、、、、キョンシーになることなく成仏するのだぞ。さ、部屋に戻るとするか」


あーなった綾香を止められる者は、もはやこの場に存在していない。イザベルは身を隠したまま部屋に

戻ろうとしたその時、


「あらあら、ずいぶん賑やかかと思えば、綾香さんじゃないですか」


「っ! 川間さん、あなたがなぜここに・・・・・・・」


パーテーションで区切られた別の宴会場から現れたのは、アルファ・オプティックの広報担当、川間である。

今、上海を舞台に2人の宿命の対決が、幕を開けようとしていた。


マオタイ酒は度数は強いですが、口当たりは意外と良いのですねー

自分も初めて中国に行った時はつい調子に乗ってしまい、1本開けたら

そのまま朝まで意識を失ってしまいました・・・・

今は中国でも乾杯の時は、ビールの方が多いようです。


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