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竜騎士の日本見聞録  作者: ロクイチ
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第16話  楽しいショッピング


「さ、今日はわたしも学校休みだし、お買いものいくわよー、イザベル」


「別に、今ある服でもかまわないのだが・・・・・・」


張り切る綾香に対し、イザベルはあまり乗り気ではない。


「なーに言ってんのよ。おしゃれは女の子の特権、いや義務なのよ。しっかり楽しまなきゃ、

人生大損よ」


イザベルが持ってきた服は、ホテル暮らしの頃に政府から支給されたリクルートスーツと、

ファーストファッションで購入したシャツやジーンズなど数着である。元々服装には無頓着な

彼女はこれでも十分だと思っていたのだが、綾香が「女子力向上よ!」などと言い出して

都心部までショッピングに出かけることとなったのである。もちろん、ついでに自分の服も

購入する気満々だ。


「ねーいいでしょおかーさん、女の子としてさすがにあの服装だけ、ていうのはないと思うの」


「そんなこと言って、アヤちゃんも新しい服買いたいんでしょ。まあ今回は許す。ただしムダつかい

はしないようにね」


「てへ、バレたか、じゃ行ってきまーす」


「気を付けて、あんまり遅くならないようにね」


2人は最寄駅で綾香の友人と合流してから、都心部へと向かう予定になっていた。駅前まで

やってきた綾香は先着していた友人に気づいて手を振った。


「あ、いたいた、彩絵、こっちこっち、イザベル、紹介するね。わたしの友達の・・・・・・」


「はじめまして、わたしは一色彩絵というの、よろしくね」


「こちらこそ、よろしく」


イザベルは彩絵を見上げながら自己紹介した。そう、イザベルの身長は170cmと女性にしては

比較的高い方だが、彩絵はそれより頭一つ高く180cmを超えている。


「彩絵はバレーボール部のエースでね。インターハイにも出場してるすごい選手なのよ」


綾香の言うとおり、全てが平均値の都立F西高の中で、バレーボール部だけが全国区の活躍を

しているのは、彩絵の力に負うところが大きい。恵まれた体格と天性のバネから繰り出される

スパイクはすでに代表レベルの威力であり、”急降下爆撃機”との異名をもっている。

そして、その整った容姿から某有名選手にちなんで校内では”プリンセス・サエ”と呼ばれており、

バレンタインには後輩女子からのチョコがダース単位で贈られてくるそうだ。


合流した3人は新宿駅で山手線に乗り換え、渋谷駅で下車した。目的地は道玄坂にある有名な

ファッションビル、通称”マルキュー”である。


「イザベル、ここナンパ目的の男の人多いから気を付けて」 「うむ、わかった」


もっとも、イザベルがちょっと殺気を出しただけで、邪な目的で近づいた男たちはコソコソと

逃げ出してしまうのだが。


「ふふふふ、さーて、いろいろ合わせてみましょうか」


綾香の着せ替え人形と化したイザベル、しかし、素材がいいのでどれを着ても、ヘタなモデルより

決まってしまう。とりあえずミックスニットのロングガウンやデニムのショートパンツ、ハットや

ブーツ、バッグなどもろもろを購入、お金は当座の資金として、吾妻のポケットマネーからそれなりの

額が支給されているので問題はない。


綾香や彩絵もそれぞれお目当ての服やアクセサリーなどを購入し、近くのカフェで昼食をとることに

なった。


「それにしても、毎日スイーツを味わえるようになるとは思ってもみなかったぞ」


「え、向こうってお菓子なかったの?」


「いや、皇族は質素倹約をモットーにしていてな、お菓子などは月1回の光の神に感謝を捧げる日か、

家族の誕生日以外には口にすることはできなかったのだ」


そうして、イザベルは問わず語りに祖国の歴史を語り始める。500年ほど前、小国がひしめく地域

を初代皇王ルークが統一し、建国したのがルーク皇国の始まりである。その後は優秀だったり平凡

だったりする王が国を治めてきたのだが、建国から200年ほどして愚王が現れた。


自らの贅沢のために重税を課し、国中に密偵を放ち不平不満を言うものは容赦なく罰していった。

民は目と目だけで不満を表わすようになり、家臣が「民の口をふさぐのは、水路をふさぐよりも

危険です。乱が起こりますぞ」と諫言しても、その愚王は耳を貸さなかったのである。


そして、国の荒廃を憂いた皇太子が高位のドラゴンの協力を得て反乱を起こし、新たな皇王の座に

つくことになった。監禁された愚王はその後すぐに公式には病死、実際には暗殺されたのだという。

新たな皇王は皇族の贅沢を固く禁じ、国を支えてくれる民に対して感謝の気持ちを忘れることの

ないよう、子々孫々にいたるまで守るよう伝えていったのである。


皇国とドラゴンとの協力関係も、この時代から始まったそうだ。そして、現代日本の女子高生である

綾香と彩絵には、イザベルの語ったことは、どこか遠い世界の神話か伝説のように聞こえていた。


「はは、つまらん話をしてしまったな。それから皇都には日本に比べてもそん色ないスイーツ専門店

もあるぞ。一般の皇民にはそんな縛りはないから、お金さえあれば好きなだけ食べられるな」


「いや、つまらないなんて、そんなことないよ、、、、なんか本当にファンタジーって感じ?」と綾香


「うん、それだけで大河ドラマや小説になりそうだよ」と彩絵


買いものを終えてF市に戻ってきた3人、しかし、まだ時間は残っている。


「それじゃー、せっかくだしカラオケいってみよーかー」


綾香の一声で、イザベルのカラオケ初体験が決定した。


※参考HP http://www.shibuya109.jp/ladies/

新キャラ登場しました。この子もけっこうチートです。

なお、作中の愚王に家臣が諫言した言葉は、実際の中国の故事だそうです。

現代でも通用する言葉ですね。

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