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竜騎士の日本見聞録  作者: ロクイチ
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第148話 世界を越えた「親バレ」


日本語には俗に”親バレ”という言葉が存在する。大抵の場合は女の子が後ろめたいと思っていることが、

親(主に父親)にバレることを指す言葉だ。まあ大体彼氏とのいちゃらぶがほとんどなのだが、中には風俗

で荒稼ぎしているとか、援交とかAV出演とか割とシャレにならない事例もあるそうだ。


ちなみに、人気AV女優が突然引退した時は、この親バレが原因のことが多いらしい。


閑話休題


東京都F市、鈴木家の居間では家長である達夫、液晶テレビの画面に映っているダリウスの2人が、まるで

ゾンビのような顔つきになってしまっていた。原因は言うまでもなく、あのパープー娘である。


「さすがの私も1回目は涙が出るほど痛かった。だが回を重ねる内に、明の温もりが私に伝わってきてな」


そう堂々と彼氏とのいちゃらぶ体験を皆の前で吹聴するイザベル、彼女には親バレという概念は存在しない

のであった・・・・・


「姫さん、もうこれ以上はやめとけ、、、、、ご両親もう死にそうな顔しているから」


「殿下、吾妻殿のおっしゃる通りです。ダリウス陛下を御覧なさい。血涙を流しておりますぞ」


さすがに吾妻とガイナスも見ていられなくなり、イザベルに注意する。一体どこの世界に愛娘(まなむすめ)のいちゃらぶ

話を聞かされて、喜ぶ父親がいるのだろうか。


「ふ、ふふふふふ、、、、達夫殿、今、わしは皇国軍全軍を率いて、日本に攻め入ろうと思っているぞ」


「ダリウス陛下、申し訳ない、、、、相手の男はどんな手を使ってでも、刑務所にぶち込んでやりますから」


しかし、イザベルは2人の父親の真っ当な反応が、予想外であったようだ。


「む、父上、達夫とーさん、私がようやく生涯の伴侶を得ようとしているのに、うれしくはないのか」


「イザベル、そういう問題ではない。結婚どころかまだ婚約もしていないのに、何をやっているんだ!」


「達夫殿の言う通りだ。そんな男にほいほいついていくような娘に、育てた覚えはないぞ!」


普通の娘なら2人の父親の反応に小さくなってしまうところだが、そこは竜騎士として数多くの修羅場を

くぐり抜けたイザベルである。父親たちに負けぬ怒りのオーラを全身から立ち上らせたのであった。


「ちょっと待て! 2人とも、この私がそんな尻軽女に見えたのか! 明が生涯を共にするにふさわしい男

と思ったからこそ、愛を確かめ合ったのだ!」


「な、、、、イザベル親に口答えする気か!」


「はい! そこまでです! 皆さん冷静になってください!」


激高した達夫はイザベルに手を上げようとしたが、それは斉木の言葉でかろうじて止められた。綾香や

良枝、ティワナ達はその様子をハラハラしながら見守っていたのであった。


「イザベルさんも、もう少しご両親に配慮した発言してくださいね。親からすれば、可愛い娘を盗られたような

ものなのですから」


「斉木殿、すまぬ、私も少し浮かれすぎていたようだ」


とりあえず暴力沙汰は避けられた。周囲もほっとした様子である。


「ところで、イザベルさんは本当にお相手の男性と、結婚したいと思っているのかしら」


「もちろんだ、まあ、本来は紹介を先にすべきではあったな」


だが、斉木はイザベルの返事に少し考え込む。そして、


「うーん、、、、イザベルさん、今回ご両親への紹介は先にしなくて結果的に良かったですね」


「む、なぜだ斉木殿」


イザベルだけでなく、達夫やダリウスも”なぜ?”と訝しげな表情だ。


「ええ、そうなるとルーク皇国のご両親にも紹介する必要があるでしょう。日本が異世界と連絡を取り合って

いることは国家機密ですから、それをあなたの彼氏に知られるのはまずいですよ」


「あ、そうか・・・・・」


斉木に言われてイザベルも、あらためて自分の特殊な立場を認識したようだ。


「そういうことで、佐野さんに機密解除をするために政府内でも調整が必要なのですよ。ですから、ご家族

への紹介は少し待っててくださいね。ダリウス陛下、達夫さんもこの件は一旦政府預かりでお願いします」


「すまぬ斉木殿、ご迷惑かけるがよろしくお願いする」


「そういうことなら、、、、イザベル、どちらにしろその後には私が相手の見極めをするぞ」


「うむ、そうじゃな、わしも達夫殿と同意見だ」


とりあえずこの場は何とか納まった。しかし、後に怒髪天を突く達夫とダリウスの”試練”を受けなければ

ならない運命の佐野を思い、周囲はそっと涙をぬぐうのであった。


「ふう、やれやれ、、、、一時はどうなることかと思ったよ」


「本当に、まさかイザベルさんがあそこまで、あけっぴろげな性格だなんて思いもよらなかったですよ」


鈴木家を後にした吾妻と斉木は、帰りの車の中で”はあ”とため息をつく。さすがに恋人同士の睦ごとまで

親に話すとは、予想外であったのだ。


「まあ、こそこそ隠されるよりはこちらも”対応”がしやすいから、かえって良かったけどな。斉木君、姫さんの

相手の調査は頼んだぞ」


「はい、すでに公安に身辺調査は指示しております」


先ほどの政府内の調整うんぬんは口実である。吾妻と斉木は佐野の背後に、他国やテロ組織等と関わり

がないかどうか、徹底的に調査する腹積もりなのだ。


「首相、もし相手に何らかの問題があった場合は、どういたしますか」


「ああ、その時は姫さんには悪いが、”処理”をするぞ」


「かしこまりました」


そう話す吾妻と斉木の表情は、先ほどの親子ゲンカでオロオロしてたのがウソのように、冷徹な政治家の

顔に戻っていたのであった。


「リ閣下、例の異世界人の件ですが、日本国内に”目”を潜り込ませることに成功いたしました」


「よし、よくやったぞ」


某北の国、その実権を握ったリは部下の報告に満足げな表情である。彼らは日本の警戒網を掻い潜り、

少しずつ日本国内に基盤を築きつつあった。


「ターゲットについて、今現在の状況報告です。その気になれば作戦も実施可能ですが・・・・」


「いや、今彼女を拉致した場合、真っ先に我らの関与を疑われるぞ。機会は必ずくる。その時を待つのだ。

なに、これまで2千年も耐えてきたのだ、今さら1年2年はどうということもないぞ」


「かしこまりました。では、そのように」


そして、リは別の部下を呼ぶ。


「異世界人が我らに非協力的な場合の対応策は、どうなっている?」


「は、我々がこれまでに積み上げてきた洗脳の技術は、米帝すらはるかに凌駕いたします。魔法の技術、

民族の栄光のため必ずや手に入れて見せましょう!」


「うむ、その意気だ! 頼んだぞ」


こうして、イザベルを巡る陰謀も着々と進行していくのであった。


知らないうちに、国家機密に巻き込まれた佐野の運命や如何に・・・・・

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