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竜騎士の日本見聞録  作者: ロクイチ
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第139話 竜騎士、初デートに挑む!


「そうか、実験結果は厳しかったか・・・・」


「吾妻殿、これではまだ日本本土どころか、人一人送ることもできぬな」


日本国東京都F市、鈴木家の居間では大型液晶テレビを介して吾妻とダリウスが揃ってため息を吐いて

いた。ティワナの研究により、ようやく日本側からフェアリーアイズにつながるルートが構築され、極秘裏に

鋼鉄のインゴットを送る実験を行ったのである。だが、その結果は思いも寄らぬ結果となった。


「ご覧の通り、インゴットは表面が溶けた状態で城壁に食い込んでおりました。もしこれが人間なら、どの

ような状態になってしまうか・・・・・」


エリザが回収したインゴットを見せると、日本側の面々は顔色を変えた。特にティワナは落胆の表情を見せ

ていた。


「確かにこれでは、生物を送るのは無理ですね、、、それに今回は城壁だから良かったものの、もしそちらの

人間にインゴットが溶着してしまったらと思うと、ぞっとします・・・・」


「今回は念のため、インゴットの出現予定地点には結界を貼っておきましたから。しかし、今後の実験はより

注意をする必要がありますね」


ティワナとエリザのやり取りを聞いていた吾妻が、ふと呟いた。


「これじゃまるで、フィラデルフィア計画みたいな結果だな」


「首相、それまずいですよ」


斉木の言葉に吾妻はしまったという表情をして口を閉じた。しかし、この中に吾妻の言葉の意味を理解できる

者が一人存在した。重度の中二病患者の聡である。彼は、この手の都市伝説にも興味津々なのであった.


「首相、それって本当にあった出来事なんですか」


「い、いや、それはな・・・・・」


聡の言葉に口ごもる吾妻、イザベルや綾香は”フィラデル何とかってなんなの?”等と聡に質問する。


「それは、第二次大戦中にアメリカ海軍が極秘に行ったとされる実験だよ。有名な都市伝説だよ」


フィラデルフィア計画、駆逐艦エルドリッジに強力な磁場発生装置を搭載し、レーダーを無効化する実験を

行ったのだが、駆逐艦そのものが消えてしまい、再び現れた時には乗員が船体に溶け込んでいたりと、

悲惨な結果になり海軍が慌てて隠ぺいしたという都市伝説だ。オカルト雑誌の定番ネタでもある。


「はあ、吾妻首相、ちょっと今のは迂闊でしたよ。皆さんもこの事は聞かなかったことにして下さいね」


「すまん、斉木君」


どうやら、本当にあったことらしい。そしてティワナもこの話からヒントを得て、マナの代わりに強力な磁場で

次元転移を試みたらしいが、かつてのアメリカ海軍同様うまく行かなかったようだ。


「やはり、反物質のエネルギーを利用した方が良かったかもしれないですぅ」


ティワナは何やら素人には理解できない難しいことをブツブツと言い始めた。


「ティワナさん、それならマナの代わりになるの?」


「ええ、得られるエネルギーは膨大なんですが、制御するのが困難でして、でも兵器としてなら実用化は

すぐ可能ですよ」


「えっ、兵器って・・・・・」


斉木の言葉に、ティワナはトンでもないことを言い出した。


「はい、威力は広島型原爆と同程度、もう少し研究すれば水爆並みの威力も可能です。しかも、核兵器と

違って放射能も出な・・・・・」


「ティワナさんストップです! 今の話も国家機密に指定します。皆さんも聞かなかったことにして下さい!」


そんな兵器を日本が持った日には、世界の軍事バランスが崩れてしまう。ヘタしたら日本が世界中から

攻められる恐れも出てくるのだ。


「・・・・・全く、今日は寿命が10年は縮まったぜ。みんなも頼むから今のは絶対に口外しないでくれよ」


「吾妻殿、そちらの世界も色々としがらみがあるようだのう」


と、そんなドタバタ劇が繰り広げられていたのだが、イザベルと綾香は大して興味もないようであった。

そう、彼女達は都市伝説や兵器がどうこうよりも、間近に迫った自分のデートの方が大事なのである。


「まあ、難しいことはそなたらにまかせるぞ。我らはそんなことより、デートの準備をせねばいかぬからな」


「そーねー、いよいよ年齢イコール彼氏いない歴と、お別れするチャンスがやってきたのよ!」


「「「「「ええっ!!」」」」」


2人の爆弾発言に、これまでのことは日本、皇国側とも吹っ飛んでしまった。ダリウスや達夫は”一体どこの

馬の骨とデートするんだ!”などといきり立ち、良枝やリーゼは”あらあら、まあまあ”といった反応である。


「ああ、相手はちゃんとした企業に勤めておるぞ。身元はしっかりしているから、そう心配は無用だ」


イザベルの言葉にも、達夫やダリウスは”ぐぬぬ”といった反応だ。しかし、


「おとうさん、このパープー娘たちがようやく幸せをつかむチャンスを得たんだから、ここは親として応援して

あげるべきでしょ」


「あなた、良枝さんの言う通りですよ。このチャンス逃したら、あんのスカポンタン一生独身かもしれません

わよ」


良枝やリーゼのディスってるような援護射撃もあって、達夫とダリウスは渋々ながら2人のデートを認めた

のである。


「ところで、2人はどこでデートするの」


「私は六本木でお食事の予定だけど、イザベルは?」


「ああ、私は箱根に一緒に旅行するぞ」


イザベルの返答に、周囲はまたまた”ええっ!”といった反応だ。


「わぉ、いきなり婚前旅行なの。大胆ねえ」


「お、おい! 最初から一緒に宿泊なんて絶対に認めんぞ!」


周囲のてんやわんやな状況に、イザベルは慌てて付け加える。


「すまぬ説明不足だった。もちろん日帰りだから一緒に泊まることはない。いくら私でも知り合ったばかりの

男に体を許すことなぞないぞ」


彼女の言葉に男親の連中も少しは安心したようだった。


「でも、どうして箱根なの?」


「私が最初にこの世界で旅したところが箱根だったからな。あの時のことは今でも昨日の事のように思い

だせるぞ。彼にもその話をしたら、じゃあ日帰りで箱根へ行こうかと誘ってくれたのだ」


綾香の質問にそう答えるイザベル。周囲もそれに納得したような表情だ。


「ベルちゃん、それじゃ相手の人はあなたが異世界人だって知っているの」


「おかーさん、しょっぱなからテレビで転んだこと言われてたからねえ・・・・」


「ぐっ、、、、綾香よ古傷をえぐるような真似はやめてくれ」


いきなり黒歴史を掘り返されたイザベルは、いつものリアルorz姿勢となってしまった。ともあれ、彼女は

この2日後、人生初のデートを迎えることとなったのである。


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