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竜騎士の日本見聞録  作者: ロクイチ
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第126話 聖女召喚の後始末その1


日本国陸上自衛隊の某駐屯地、広大な車庫に刻まれた魔法陣が光り出すと、吾妻たちの目の前に89式

とイザベル達が姿を現した。


「吾妻首相、任務完了いたしました」


「ご苦労だった。諸君らの奮闘に感謝する」


まずはSの隊長が吾妻にピシっと敬礼しながらミッション達成の報告を、吾妻は答礼でそれに答える。


「姫さん、まずは無事で良かったな。ご家族も心配していたぞ」


「吾妻殿、私の救出に自衛隊まで動かして頂いたこと、感謝する」


イザベルとティワナは、すっと片膝をつく皇国式の礼を吾妻に向けた。


「で、そこにいるのが姫さん拉致の責任者と、公爵家の娘さんと、、、、その子は誰だ?」


「吾妻殿、詳しい話は後でするが、そやつがクレアブルの魔王だ」


「えっ!」


想定外の事態に、吾妻もポカーンとした表情だ。その時、隊員の1人がジークリフトの姿が見えないのに

気がついた。


「あ、あれ、あの大きな犬どこに行った?」


「まさか、逃げ出したのか」


「キュウーン、キュウーン」


その代り、足元に何とも可愛らしい子犬がいたのである。


「姫さん、向こうから子犬まで拾ってきたのか」


「い、いや、もっと大きなサイズだったのだが・・・・・・」


「ここ、マナがないから縮んじゃったみたいですね」


ティワナの言葉通り、マナがない日本では元の姿を保つことができず、哀れフェンリルの王は子犬と化して

しまったのである。


「ニールはまさか赤ん坊には、なってないな」


「でも、角と翼が消えてますよ」


とりあえずこれで、手術を受けなくとも済んだようだ。


「立ち話もなんだし、詳しいことは部屋を移してからにしよう。ご家族も待ってるしな」


イザベルはSの隊員たちにお礼を述べると、フレルや王国側の面々を引きつれて家族の待つ部屋へと

向かっていった。


「イザベルー! 無事で良かったよー!」


「ベルちゃん、本当に心配したのよ。お帰りなさい」


「心配かけてすまなかった。この通りピンピンしておるので、心配はないぞ」


駐屯地の別室でひとしきり再開を喜びあうイザベルと鈴木家の面々であった。落ち着いた頃合いを見て、

斉木が「では、今後のことを」と、フレル達王国側に話を向ける。部屋にはティワナが翻訳魔法の結界を

貼っているので、お互いの言語で意思疎通ができるようになっていた。


「・・・・・それでは、今回のこと全て責任を認めると言うのだね」


「はい、先にお話しした通り、イザベル様のご家族が望むなら日本の刑罰を受ける覚悟です」


フレルとルレイは共に頭を下げる。吾妻と斉木はイザベルと鈴木家の面々に判断を任せた。


「達夫とーさん、良枝かーさん、綾香、聡、確かに無理やり向こうに連れていかれたのは事実だが、彼らは

丁重に誠意をもって尽くしてくれたのだ。ここは、私に免じて許してやってくれないか」


イザベルの言葉に鈴木家の面々は、”全く、お人よしなんだから”と言いつつも今回のことは許すことにした。

フレルとルレイはまたまた感激の涙を流し、教祖さまのごとくイザベルを崇め奉るのであった。


「イザベル、あんたずいぶん向こうの人たちに慕われているじゃないの。アチラに移住したら夢の逆ハーよ」


綾香の言葉にイザベルのそっちの方がいいかなー、と思い始めた時、


「おお、もしクレアブルに残られるのであれば、生涯神殿でお守りし、絶対にご苦労はおかけいたしません」


要は、生き神サマとして神殿監禁コースである。さすがのイザベルもそんなバッドエンドは御免こうむるので、

顔を引きつらせながら丁重にお断りするのであった・・・・・


「ところで聞きたいのだが、君達が召喚したのは姫さんだけなのかね」


吾妻は、他にも異世界に拉致された日本人がいないかフレルに事情聴取をする。


「はい、歴史的には3度目、ブライデス王国としては初めてです」


「どんな人間を召喚したのか、記録は残っているかな」


「最初は約1000年前、本人は真名を明かさなかったのですが、第六天魔王と名乗っていたそうです。記録

によると召喚した国を乗っ取って魔王を瞬殺、天下布武と称して大陸統一戦争を起こしていますね」


いきなりの大物登場に、吾妻達日本側からどよめきが上がる。どー考えてもあの超有名な人物だからだ。


「次は約500年前、ユウト・シラヌイといい日本では中学生だったそうです。彼は魔王討伐後、日本に帰還

しています」


「これは、、、時間のズレはあるが近年の人物だな。斉木君、警察の行方不明者のデータベースと照合

してくれないか」


「かしこまりました」


その他、ごくまれに異世界の人間が現れることがあるそうだ。これは不可抗力なのでさすがに罪に問う

ことはできない。


「大抵、”チートだひゃっほい”等と意味不明の言葉を叫んでダンジョンや魔物に挑み、あっさり命を落とす

例が多いです。周囲も止めるのですが、聞く耳を持たないと記録に残っていますね」


それを聞いたイザベルは聡の肩をポンポンと叩き、


「聞いたか聡、これが現実だ。もういい加減左腕に邪竜が封じられているとか、妙な妄想は捨てるんだな」


「吉岡君にも、この話しておくか・・・・・」


こうして、厳しい現実を見せつけられた聡は、リアルorz姿勢になってしまうのであった・・・・


「さて、次は公爵家の娘さんと魔王の嬢ちゃんか、これはご家族の意見も聞いてみないとな」


「うむ、まずは紹介しよう」


そして、今度はラミリア達の処遇に話は移るのであった。


哀れフェンリルの王は可愛い子犬に・・・・・

当小説一番の不憫キャラです。


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