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竜騎士の日本見聞録  作者: ロクイチ
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第120話 聖女の慈悲


「イザベル様、少々あの者に慈悲を与え過ぎでは」


「さようでございます。ラミリアの犯した罪は、死罪でも償いきれぬほどの重罪でございますぞ」


地下牢から戻る道すがら、フレル達は先ほどのイザベルの”提案”が甘いのではないかと、疑問を呈した。

イザベルがラミリアに示した提案とは日本に帰還する際同行し、人生をやり直してみないか、というものだ。

最初は”そんな憐みを受けるいわれはない”と拒否するラミリアであったが、、、、、


「そなたはこれまで、狭い貴族社会のことしか知らなかった。地球、そして日本はクレアブルの常識なぞ

吹き飛ばすほど、未知の知識に溢れておるぞ。皇女であったこの私が言うのだから、ウソではない」


それでも、と難色を示すラミリアに、イザベルは追撃の言葉を放つ。


「それに日本には、大貴族であるそなたでも知らない美味な料理もあるぞ。しかもそれは庶民、こちらで

言う平民の料理なのだ」


ラミリアの眉がピクっと上がる。しかし、


「平民の料理が、そんな美味だなんて信じられませんわ」


「その思考自体が狭いというのだ。何しろその料理を求めて、日本の高貴な方や外国の元首が訪問する

くらいだからな。ふふふ、特に私のいる日本は地球世界でも、有数の食文化が進んだ国なのだ。私もそう

であったが、そなたも行ってみればきっと、目から鱗が落ちる思いがするぞ」


それでもまだ逡巡する様子のラミリアに、イザベルは止めを刺した。


「ああ、それからこちらでは王侯貴族の茶会でもなければ口にできないスイーツな、日本では子供の小遣い

でいつでも手に入れることができるぞ」


「わかりましたわ、イザベル様の慈悲におすがりさせていただきます」


ラミリアは速攻で落ちた。チョロい公爵令嬢である。


「しかし、ご自分の命を狙った者にやり直しの機会を与えるなど、やはりイザベル様は聖女の資格をお持ち

なのですね」


「いや、それは違うぞフレル殿、私は聖女などではない。ラミリアのことも私の自己満足のようなものだ」


いぶかるフレル達に、イザベルは続ける。


「竜騎士として私は戦場に立ってきた。中にはラミリアと同年代の者をも炎に包み屠ったのだ、、、、今でも

彼らの恐怖に怯える表情を夢に見る時がある」


イザベルの言葉に、フレル達は何も言えなかった。


「だからな、ラミリアの命を救ったのは、これで自分が手にかけた者たちへの贖罪になるのではないか、

そんな自己満足からなのだ。フレル殿、これがそなた達が崇める聖女の正体だ。ふふ、どうだ、さぞかし

落胆したであろう」


そう自嘲的に話を続けるイザベル、だが、それを聞いていたフレルやルレイ、護衛騎士達は揃って片膝を

つく騎士の礼を、イザベルに向かって執った。


「む、皆どうしたのだ」


「は、我らブライデス王国一同、改めましてイザベル様に忠誠を誓います。今確信いたしました。イザベル様

こそ真の聖女に相応しい御方です」


「我らの剣は全て、イザベル様に捧げます」


「・・・・そうか、では、共に世界に仇名す不届きな者ども、成敗しに行こうではないか」


「「「「「ははっ!」」」」」


その後国王にもラミリアの”異世界追放”を認めさせたイザベル達の元へ、急報が届いたのである。


「辺境都市ペルメより魔信です! 境界付近に魔王軍約2万が集結、天災級モンスターの存在も確認されて

おります!」


「オーク20に対しオーガ1の割合か、前回より強力だな」


「皆の者、心配するでない、このイザベル聖女の加護を持って、そなた達に合力するぞ」


軍の士気を奮い立たせるのも聖女の役割だ。まずは転移魔法陣によってイザベルとフレイ、選抜された

騎士たちがペルメへと向かったのである。


一方、その頃の日本国東京都、首相官邸、


「姫さんが拉致された世界が特定できただと!」


「はい首相、ティワナさんの解析によりますと、この地球とほぼ同じ環境です。未知の病原菌やウイルスの

心配もありません」


「よし斉木君、Sの出動はいつになる」


「3時間後の予定です」


3時間後の自衛隊某駐屯地、そこには吾妻と斉木、名島防衛大臣が隊員の前に並んでいる。彼らの横には

89式装甲戦闘車1台が鎮座していた。対空戦闘も可能な35mm機関砲、対戦車誘導弾などを装備した陸自

の誇る装備である。


「諸君、今回の任務は異世界に拉致された国民を救出するという、自衛隊創設以来初めてものである。

相手は魔法という、我々にとって未知の技術を使う者たちだ。だが、これまで厳しい訓練に耐えてきた君達

なら、それを乗り越えて必ずや任務を達成できるものと、信じている。頼む、拉致された国民を救ってくれ」


吾妻の訓示に隊員たちは敬礼で答える。この場には鈴木家も全員顔を揃え、すっと隊員たちに一礼した。

その様子を見た精鋭たちは、必ずこのミッションを達成すると心に誓うのであった。


「ティワナさん、では部隊の送迎頼みましたよ」


「はい斉木さん、必ずお姉さまを日本に連れ戻してみせますわ」


ティワナは隊員たちに続いて89式に乗り込んだ。彼女とドラコ、イリス、そしてヴィドのマナを合わせれば、

何とか装甲車1台は異世界に送り込みが可能であった。


そしてティワナの構築した魔法陣が89式を包み込むように輝き、異世界へと送り込んだ。後に残された人々

は、祈るような気持ちでその光景を見つめていたのである。


ブライデス王国軍と魔王軍、そして陸自精鋭との三つ巴の戦いに、、、、

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