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竜騎士の日本見聞録  作者: ロクイチ
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第116話 竜騎士、聖女デビューする


『やったぞ! 召喚は成功だ!』


『おお神よ、、、、これで世界は救われます』


「う、ううっ・・・・・」


周囲の話声で、イザベルは目が覚めた。そして、まずは現在の状況把握に努めたのである。一般人なら

パニックに陥ってしまう状況だが、さすがは幾度も修羅場を潜り抜けた竜騎士だ。己が生き残るための

最適な方策を、頭の中でシュミレーションし始めたのである。


”ふむ、、、魔導師らしき者は10人、すでにマナ切れで疲弊しておるな”


イザベルにとってマナ切れの魔導師など、カカシよりも容易い相手である。彼女は自分にとって脅威となる、

武装兵力に注意を向けた。


”完全武装の騎士は15人、そこそこの腕前だが、対処できないほどではないな”


イザベルは、騎士達が害意を向けてきた場合に備え、密かにオリハルコンの聖剣”ガレル”をいつでも顕現

できるよう準備をしたが、彼らからは悪意といったものは感じられない。それどころかむしろ憧憬の眼差しすら

向けてくるのだ。当面危険はないと判断したイザベルは、一旦攻撃準備を解除した。


「誰か、この状況を説明してくれる者はおらぬのか!」


イザベルはゆっくり立ち上がると、周囲を睥睨し若干の闘気を込めながら説明を求めた。この程度の気でも、

騎士たちはたじろいでしまう。だが、そんな彼らの後ろから、ひと際豪奢な鎧を身にまとった者が、彼女の

前に現れ、片膝をつく騎士の礼を執った。


「突然のお呼び出し申し訳ございません。私はブライデス王国王太子、フレル・ヴィ・ブライデスと申します」


「ふむ、そのブライデス王国とやらが、なぜ私を呼び寄せ、、、いや拉致したのだ?」


イザベルの言葉に一瞬顔をしかめるフレル、しかし彼はイザベルの顔を見据え、しっかりと返答する。


「どうか、ブライデス王国、いやこの世界をお救いください、聖女様!」


「はあっ!」


聖女、それはイザベルとは対極の位置にあるワードであった・・・・・


「ふむふむ、500年ぶりに魔王が復活したから、討伐のサポートをしてほしいと」


「はい、すでに魔王の復活に伴い、天災級モンスターの目撃情報も入ってきております。あつかましいお願い

とは重々承知の上でございます。ぜひ、この”クレアブル”をお救いください」


「んっ、、、、?」


”クレアブル”、それはどこかで聞いたことのあるような名称だった。イザベルはフレルに確認のためある

質問をした。


「クレアブルか、ペルメのギルドマスターロベル殿は息災か?」


イザベルの言葉に、今度はフレル達の表情が驚愕に包まれた。


「聖女様、なぜ伝説のSSS(トリプルS)冒険者、ロベル殿のことをご存じで、、、、」


「この世界にきた時、ある程度の知識が頭の中に入ってきたのだ」


イザベルは、よくあるラノベ設定を言い訳にしてかつて”夢”の中で出会った人物の話をする。フレルはそれ

に納得し、ロベルは150年前に亡くなったこと、あのレイリスは英雄騎士として現在も絶大な人気を誇ること、

ギラン達冒険者は召喚勇者のユウトと協力して、魔王を打ち破ったことなどを説明した。


「ふむ、、、、あれは500年前の出来事になっているのか。ところで、その時に美しい竜騎士が勇者の手助け

をしたことは、伝わっておらぬのか?」


その言葉に、今度はフレルが首をひねる。


「いえ、、ただその時期に、ペルメが攻撃魔法によって更地になりまして、天災級モンスターをも上回る脅威

から”消滅級”と呼称されました。それが何者かは伝わっておりません」


それを聞いたイザベルの全身に、嫌な汗が流れ始める。何だかものすごーく心当たりがあるからだ。


「ふむ、そうか、だがこの私が聖女の力をもって、消滅級でもなんでも浄化すること、ここに誓うぞ」


「おお、何と力強いお言葉、我ら感謝の言葉もありませぬ!」


イザベルは速攻で、聖女として振る舞うことを決めた。そんな彼女をフレル達は感謝感激の面持ちで崇め

奉った。まあ、”ウソも方便”なのだ。


「さあ、まずは詳しい話を聞こうか。このイザベル”聖女”として、この世界に平和をもたらそうぞ」


「はい、ありがとうございます!」


すでにフレル達の聖女信仰度合はMAXである。こうして、イザベルの聖女デビューが決定したのだった。


・・・・・さて、その頃の日本国東京都F市、鈴木家の居間はお通夜のような状況であった。沈痛な雰囲気の

中、綾香と良枝のすすり泣く声のみが響いている。


「首相、防犯カメラの映像からもお二人のおっしゃる通り、イザベルさんは魔法陣のようなものに包まれて

消えたことは間違いありませんね」


「そうか、ティワナ君、この映像を見て何かわかったことはあるか」


急を聞いて駆け付けた吾妻と斉木は、ティワナに助言を求めた。


「はい、映像を見る限り、この魔法陣は何か特定の条件にあたるものを呼び寄せる術式のようですね。今回

たまたまお姉さまがその条件に合致したために、連れ去られてしまったのでしょう」


「それで、どこに拉致されたかわかるのか」


「ええ、地球とはまだ通路がつながった状態ですから、すぐ解析できます。こちらからお姉さまを連れ戻しに

行くことも可能ですよ」


ティワナの返答を聞いた吾妻は、斉木にイザベル救出の手立てについて確認をとる。


「はい首相、名島防衛大臣を通してSの手配をかけております。本来ならSATの役割ですが、魔法を使う

向こうの武装勢力とぶつかる可能性もありますので、できる限り重火器を装備して向かいます」


「戦車や攻撃ヘリは送れんのか」


「申し訳ありません首相、私とドラコ、イリスさんのマナを合わせても10人程度を送り込むのがやっとでして、

ただ、私も救出作戦には同行します」


ティワナの言葉を聞いた吾妻は、わずかに渋い顔をする。


「おいおい、民間人をそんな危険なところにはいかせられんぞ」


「私が行かないと、帰還の術式を発動できませんよ。それに、お姉さまを拉致するなど天に唾する所業、

この”炎獄の魔女”ティワナが許しません。その身をもって償わさせて頂きますわ」


普段愛らしいティワナから、凄まじい怒りの気が立ち上る。彼女も内心はイザベルの拉致に怒り狂って

いるのだ。


「そうかわかった。だが無理はせんでくれよ。それから斉木君、姫さんを拉致した勢力が抵抗するようなら

かまわん、全ての武器使用を日本国首相として許可するからな」


「了解です。全く、我が国の国民を拉致するなど、こんな無法は二度と許すことはできませんからね。皆さん、

イザベルさんは政府が全力をもって救出しますので、ご心配でしょうがしばらくの間辛抱してください」


北の独裁国家に国民が長年の間拉致されていたことは、吾妻達にもトゲとなって残っている。彼らは不退転

の決意をもって、イザベル救出を鈴木家の面々に誓うのであった。


いわゆる聖女召喚ものが書いてみたくて、やっちゃいました。

主人公がアレなので、王道展開になるかは不明。



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