第10話 竜騎士、記者会見に出陣す!
「おぉ~、、、これはこれは、、、、」
辛かった研修もようやく終わろうとしている2月のある日、イザベルたちは上野にある東京国立博物館へと
やってきていた。冒頭の言葉は、国宝として展示されていた太刀を見たイザベルの感想である。
「う~む、、、これが鉄でできた剣とはとても思えぬな。オリハルコンの聖剣に匹敵する切れ味とみたぞ。
これ何とか手に入れることはできぬものか」
「はは、これは国宝ですし、それに日本は銃刀法で厳しい規制がありますからね。個人で所有するのは
難しいかな。ところで向こうの世界ではオリハルコンなんてあるんですか?」
「ああ、これがオリハルコンの聖剣”ガレル”だ」
するとイザベルの手にシュっと抜き身の剣が現れた。
「ちょっ、ちょっとイザベルさん、いきなり何出してんですか! これ銃刀法違反ですよ!」
「イザベルよ、こんなところで物騒なもの出すでない! すぐにしまえ!」
周りから怒られ、イザベルはしぶしぶ剣を消した。
「あーびっくりした。とにかくこれ法律違反だから没収しますよ!」
大山が言うとイザベルは困った顔をして
「そう言われても、聖剣とは契約を交わしておってな、私が死ぬまでこの身より離れることはないのだ」
「それ聖剣じゃなくて呪いの魔剣じゃないですか! はあ、もういいです見なかったことにしますよ、、、、」
「絶対にそれ人前で出さないようにね!」
SP達から懇々と注意されるイザベル
「ちなみにホテルに置いてある鎧はミスリル製だが、、、、、」
「「もう、いいです!」」
西川と大山は、何も見なかった聞かなかったことにしたのだった。
「ところで上野にきたということは、今日のランチはあのうなぎ屋かな?」
「おう、アレはオレもまた食べてみたいな」
そう言う2人の声に、西川と大山はピタリと動きを止めた。そして不自然な笑顔を向け、
「いや、今日はおいしいラーメン屋があるからそこにしましょうか?」
「関西風のうどんの店もありますよ。やっぱりいろいろな食事をした方が勉強になるでしょう」
何故かうなぎがいいとリクエストしても、なんだかんだ理由をつけて連れていってくれないのであった。
閑話休題、そのころ首相官邸の執務室では、吾妻と斉木がイザベルたちの件で打ち合わせを行っていた。
「しかし、1か月ちょいでここまでくるとは、あの2人相当優秀だな」
「IQテストでは200はあるという結果です。あくまでも目安ですが。講師陣も教えがいがあると張り切ってますしね」
イザベルたちについた講師陣は、いずれも厳選されたこの道のエキスパートばかりである。彼らが優秀な
生徒に張り切りすぎたおかげで、イザベルたちはブラック企業の社畜なみに疲労困憊しているのだが。
「姫さんのホストファミリーの選定はどうなっている?」
「はい、すでにいく組かの候補を絞っています。もう間もなく決定しますよ」
イザベルを養子に迎えるホストファミリー、思想信条に偏りがないのはもちろんだが、何よりもお互いに
相手を慈しんでいける関係になれるかということ、そして警備の面から警察や自衛隊関係者の家族から
選定が進められていた。
「本人たちも、一回は世話になる日本に向けてあいさつをしたいとの希望だったな」
「はい、3月1日に記者会見を行うことで、調整を進めております。ホストファミリーやヴィドローネさんの就職先も、
このあたりまでには決定します」
「・・・・・あの姫さん、大丈夫だよな。記者会見で妙なこと言わなければいいけど、、、、、」と吾妻
「・・・・・そのあたりは、事前に十分言い聞かせておきますので、、、、」と斉木
百戦錬磨の2人だが、なぜか押し寄せてくる不安に夜も寝付けなくなってしまうのであった。
そして、日本中、いや世界中が注目する3月1日、地球の歴史始まって以来の異世界人による記者会見の
日を迎えたのである。