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竜騎士の日本見聞録  作者: ロクイチ
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第103話 竜騎士の無慈悲な断罪


イザベルの活躍により、バンパイアの真祖カミル率いる魔王軍を退けた辺境都市ペルメ、だが、ある意味

魔王軍よりもやっかいな連中の相手をすることになってしまった。真祖バンパイア出現の報を聞いた王都

より、王都近衛騎士団本隊がやってきたのである。


「敵は四天王筆頭を失ったのであろう。この機に乗じて攻めれば魔王の首も取れようぞ」


「カフィル団長、それはこちらが地の利を得ていたからです。今の戦力では、魔王の本拠地に攻め入れば

返り討ちに遭う可能性が高いですよ」


「ふん、SSランク冒険者のロベルともあろうものが、臆したのか! ワシの命令は王の命令と同義と心得よ!」


そうわめいているのは騎士団長のレイリス・デ・カフィル、やけにキラキラした実用性皆無な鎧を身に着け、

でっぷりと太った男である。大貴族の嫡男というだけで団長の座についた、王国軍の弱体化を象徴する

ような人物だ。


「あんなのが騎士団長とは、、、、ユウトよ、アレに敵わないと言われても、全然自慢できないぞ」


「お姉さん、お願いだから黒歴史を掘り返さないで!」


戦士どころか一般人でも倒せそうな人物だ。そんなこそこそ言い合っているイザベルとユウトに、レイリスは

目をつけた。


「む、そなたがバンパイアの真祖を退けたという女騎士か。まさかこんな薄汚い辺境にそなたのような美姫

がいるとは思わなんだ。今夜の伽の相手はそなたにしてやるぞ。光栄に思うがよい」


それを聞いたロベルやヴィド達は、”あちゃー”という表情になってしまった。


「おいおい、あいつ、私と初めて出会った時のユウトと同じこと言ってるぞ」


「だからお姉さん、もうこれ以上は言わないで! ぼくのライフはもうゼロだよ!」


「らいふとは一体何だ???」


レイリスを無視して漫才を続けるイザベルとユウト、それに彼はだいぶイラついてきたのだった。


「おい、貴様王国の大貴族たるワシを無視するとはいい度胸だな! ワシの言うことを聞かなければ、

どういうことになるかわかっているのか!」


「あん、悪いが、私はオークに抱かれる趣味はないぞ。あっちに豚小屋があるから、そこで今夜の相手を

見つけるがよいぞ」


そう言い放ってしっしっと手を振るイザベル、周囲は笑いをこらえるので必死だった。彼女に小馬鹿にされた

レイリスは激高し、お付きの騎士たちに命令した。


「貴様あっ、このワシの力がわからぬようだな! お前ら、この無礼者を斬りすて、、、、あっ」


「ううっ、、」「ひぃっ、、、」


イザベルの殺気に当てられ、レイリスや剣を抜こうとした騎士達はその場にへたり込んだ。レイリスの股間

からは、アンモニア臭のする液体まで漏れ出している。ロベルやユウト達は”あーあ、言わんこっちゃない”

という表情である。


「き、貴様っ、大貴族たるワシに危害を加えて、王都が黙っていると思うのか!」


「ならば、魔王の前に王都を滅ぼすまで。それもまた一興ではあるな」


レイリスの脅しもイザベルには通用しない。この女は本気だ、王都、いや王国をも敵に回すことを恐れない。

数百年前の勇者と同じだ。ようやくそれを悟ったレイリスは、もはや言葉も出ないほど震えていた。その時、

危急を知らせる伝令がペルメに駆け込んできた。


「巨大な魔物が境界線を突破! このペルメに一直線に向かっています!」


「なんだと!」


急報に色めき立つロベル達、そして伝令とほぼ同時に巨大な魔物が彼らの目の前に出現したのであった。


「あ、あれは魔狼フェンリル! また天災級モンスターが現れるとは!」


「くはは、我こそはフェンリルの王、ジークリフト、矮小なる者どもよ、覚悟するがよい!」


ジロリと周囲を睥睨するジークリフト、まさに王者の風格である。


「ヒッ、まさか天災級が!」


「に、逃げろおっ!」


レイリスやお付きの騎士達が逃げ出そうとするも、すでに腰が抜けておりみっともなく這いずり回る状況だ。

イザベルはそんな彼らを忌々しそうに見つめるが、まずは目の前の強敵に対峙した。


「こいつは、私にまかせろ」


「む、貴様がカミルを破ったという小娘か。我が牙の餌食になるがよいわ!」


「ふん、王と言いつつも魔王に尻尾を振る犬っころではないか。さあ、私にお手をしてみせぬか」


「おのれ! その言葉後悔させてやるぞ!」


イザベルの挑発に激高したジークリフトは、凄まじい瞬発力で一気に距離を詰め、イザベルに襲いかかった。

彼女はそれを紙一重のところでかわす。


「何で、あの脳みそミジンコ娘は天災級を挑発するかね、、、、、」


「ロベル殿、何だか嫌な予感がしてきたぞ、、、、、」


二度、三度とイザベルをかみ砕こうとするジークリフト、しかしイザベルは聖剣”ガレル”を出そうともせず、

ただその攻撃をかわすのみであった。


「小娘えっ、ちょこまかと逃げ回りおって、小癪なやつよ!」


だが、イザベルはジークリフトに答えることなく、口角を上げてこうつぶやいたのであった。


「ふむ、、、、なかなかの毛並であるな」


イザベルは身体強化も使い一気に加速すると、ジークリフトの背中に取り付いた。


「な、貴様何をするつもりだ!」


「思った通りだ。そなたの毛並、素晴らしいさわり心地であるぞ」


そして、イザベルはジークリフトの体をもふり始めたのである。


「あ、ああんっ♡」


「む、ここか、ここが気持ち良いのか」


「な、今のはちが、、、あ、しょこはらめえっ、お願いやめてえっ、あ、ああああああっ、んっ♡」

(注:悶えているのは狼です)


もふもふもふもふもふもふもふもふもふ・・・・・・・・・・・・・・・


「ふう、想像以上の体であるな。そなたは今日から私のペットだ。これからも可愛がってやるぞ」


「うっうっうっ、、、、もうおムコに行けない、、、、」


何だか、聞きようによっては鬼畜な発言をかますイザベルと、さめざめと泣くジークリフト、周囲は完全に

お口あんぐりな状態である。


「あー、、、、まあ、犬にでも噛まれたと思ってだな、忘れた方がいいぞ」


「う、うわあああああんっ! お前なんか魔王様に言いつけてやる! 覚えていろよー!」


「あ、ちょっと待て! 私はまだ満足してないぞー!」


ヴィドが慰めるも、ジークリフトは号泣しながら魔族領へと逃げていった。


「す、すげえ姉御、素手でフェンリルを泣かすとは」


「心底魔物に同情する日が来ようとは、思いもよりませんでしたよ」


「お姉さん、もう魔王越えちゃったかも・・・・・」


イザベルが魔王以上の存在として、クレアブルの歴史に名を刻むのもほぼ確定のようだ。ジークリフトに

逃げられてしまった彼女は、今度はその視線をいまだ腰を抜かしているレイリスや、近衛騎士団本隊に

向けた。


「さてと、貴様ら、敵に背を向けるとはそれでも騎士か。皇国では敵前逃亡は重罪だぞ」


「あ、ああ、、、どうかお許しを・・・・・」


そんな彼らに、イザベルはニッコリと微笑みながら無慈悲な断罪を下す。


「よし、そなたらも戦場で使い物になるよう鍛錬だな。特にレイリスとやら、そのような様で騎士団長を

名乗るとは片腹痛いわ! 貴様は特に厳しく鍛えてやるから、覚悟しろよ!」


「「「「「「そ、そんなぁぁぁぁっ!」」」」」」


彼らの悲鳴を無視し、イザベルは訓練を始める。天災級モンスター以上の存在に目をつけられてしまった

レイリスたちの、哀れな末路であった・・・・・


当初、3話くらいでさくっと終わらせる予定だったファンタジー編、書き進むうちに

ついつい長くなってしまいました。

次話で終わらせる予定です。

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