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竜騎士の日本見聞録  作者: ロクイチ
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第98話 竜騎士、冒険者になる


次第に交流を深めつつある日本とフェアリーアイズ、だが、異なる次元にはこの両世界以外にも、無数の

世界が存在するのだ。その内の一つ、フェアリーアイズ同様マナに満ち溢れた剣と魔法の世界クレアブル、

その最大の大陸にあるアールネス王国辺境の都市ペルメの冒険者ギルドでは、最近頭角を現してきた

新人冒険者の話題で持ちきりであった。


「おいおい聞いたかあいつ、この間西方のダンジョン最深部まで制覇したそうだぜ」


「マジかよ! あそこ前にS級冒険者でさえ返り討ちにあった、高難度ダンジョンじゃねえか」


この世界では、ダンジョンと呼ばれる地下迷宮が多数存在する。その中に眠るお宝を求め、獰猛な魔物や

巧妙な罠なども恐れず、一攫千金を目指す”冒険者”が大勢存在するのだ。彼らはその実力に応じ最低の

Fランクから、現在では伝説上の存在と言われるSSS(トリプルS)ランクまで、冒険者ギルドから認定を

受け、自分の能力に見合うダンジョン探索や魔物討伐で生計を立てている。


「おっ、噂をすれば何とやらだぜ・・・・・・」


ギルドの入り口のドアがギィっと音を立てて開き、2人の冒険者が入ってくる。1人は長身の男性で、その

容貌はほとんどの女性なら(とりこ)になってしまうだろうイケメンだ。もう1人は希少なミスリル製の鎧に

身を固めた若い女性、美少女と言っても言い過ぎでないほどの容姿だが、彼女の纏うオーラがただの女性

冒険者でないことは、一目瞭然だ。


「じゃ、こいつを査定してくれ」


彼女は、カウンターで背負っていた袋から今回の”成果”を取り出した。それは、災害級モンスターに指定

されている冥界竜のツノであった。


「おい、、、、あれ冥界竜のツノだろ」


「まさか、一匹で一国の軍に匹敵するアレを仕留めたっていうのか・・・・・」


ギルド内が冒険者たちのどよめきで包まれる。災害級を単独で狩れるなど、少なくともSS(ダブルS)ランク

でないと不可能なのだ。


「はーい、それじゃ査定してきますので、しばらくお待ちくださいね」


「ああ、今日はこれで終わりだから、一杯やりながら待たせてもらうよ」


しかし、ギルドの受付嬢は慣れているのか、特に驚きもせずにツノを持って奥の査定室へと向かっていく。

そして彼女とそのツレのイケメン男性は、ギルド内の酒場でマスターに注文をする。


「オレはドワーフ火酒のファインオーク20年物をダブルで頼むぞ」


「私はミルクとホットケーキを頼む」


注文を受けたマスターは、”かしこまりました”と飲み物とホットケーキの調製に取り掛かる。注文の品が出て

くる前の間、2人は雑談を始めた。


「イザベルよ、そなた相変わらず酒はダメか」


「むう、、、火酒どころかエールでひっくり返ってしまったからな・・・・・」


イザベルと呼ばれる女性の方は、アルコールには弱いらしい。ちなみにひっくり返った後攻撃魔法を無差別

に放ってしまい、ギルドマスターから”二度と酒飲むな!”と、きついお叱りを受けたのであった。


そんな談笑を続ける2人に、大柄な男が近づいていく。


「なんだあ、最近話題の新人ってどんないかついヤツかと思ったら、まだションベン臭え小娘じゃねえか」


「おい、誰だあの命知らずは」


「あいつは、”双斧のギラン”だぜ。一番Sクラスに近いって言われてる」


辺境都市ペルメは、人族と対立している魔族領に隣接している最前線だ。そのためギランのような腕利きで、

なおかつ荒くれ者の冒険者が多いのもここのギルドの特徴である。


「はあ、何だ我らは今、仕事の疲れを癒しているところだ。奢ってくれるなら大歓迎だが、冷やかしならあっち

いってくれ」


イザベルはギランの煽りに特に反応することもなく、片手でしっしっと追い払う仕草をした。だが、こんなこと

で引き下がるギランではない。


「はん、酒も飲めねえガキが何粋がってやがる。今までの成果も大方そっちのドラゴンの兄ちゃんがやった

んじゃねえか。人型になれるドラゴンなんてそうはいねえからな。その兄ちゃんに腰でも振って、てめえの

手柄にしてもらってんだろう」


「おい、ギランとやら、これ以上の侮辱は許さんぞ」


男性の方が気色ばんで立ち上がる。が、イザベルはそれを引き留めた。


「まあ落ち着けヴィド、”弱い犬ほどよく吠える”というやつだ」


イザベルの言葉に、今度はギランが激高した。


「何だとっ! このトカゲ野郎にお世話になってるクセに、、、、えっ!」


ギランの言葉は続かない。イザベルが恐ろしいほどの怒気を体中から放出しているからだ。


「貴様、我が魂の盟約を結ばりし高位のドラゴンたるヴィドを、今何と言った。ちょっと表に出てもらおうか」


「けっ、トカゲ野郎と言ったんだ。てめえ男のことになると怒るんだな。おもしれえ、付き合ってやるぜ」


ギランも腕に覚えのある冒険者だ。この程度でびびる訳はなく、むしろ相手が強者と知って闘争本能に火が

ついたようだ。


「お待たせしました。査定の結果ですが、、、て、あれ?」


「すまんアヤーカ、あやつ”また”挑発に乗ってしまってな・・・・・」


「ヴィドさん、”また”ですか、、、、今度はギルドの建物壊さないようにしてくださいね」


アヤーカという名の受付嬢の頭にはネコミミが、腰からはフサフサの尻尾が飛び出ている。彼女は猫の

獣人であった。この世界には他にもエルフ、ドワーフなどという他種族が存在しているのだ。すでにギルド

の周囲には、イザベルとギランの決闘を見物しようという野次馬でいっぱいだ。ペルメではこれも日常の

娯楽なのである。


「さあ、嬢ちゃんどっからでもかかってこいやあぁぁぁぁっ!」


ギランは両手にバカでかい斧を持って、イザベルに対峙する。だが、イザベルは先ほどの怒気はどこへやら、

すっかり醒めた表情で彼を見つめていた。


「どうした、今さらびびって声も出なくなったかあ!」


「いや、、、、あれだけ吠えていたから相応の実力者かと思いきや、この程度だったかと、全く期待はずれも

いいとこだな」


イザベルの言葉に、今度はギランが切れた。彼は両手の大斧をイザベルに向かって叩きつけたのである。


「このアマ! 細切れにしてやるわ!」


第一撃は避けることができても、第二撃は避けることができない。そのように相手を誘導するのがギランの

戦い方だ。しかし、彼の大斧は両方ともむなしく空を切ったのである。


「な、これを避けるとは、、、、えっ!」


その瞬間、ギランは信じられない光景を目にしていた。ドワーフの名工に鍛えられた自慢の大斧が、2本とも

両断されていたのである。


「ば、ばかな、、、、これは一体、ぐえっ!」


ギランは下半身から脳に伝わるような激痛を感じ、その場に倒れてしまった。彼の間合いに入り込んだ

イザベルが、その股間に強烈な蹴りをお見舞いしたのである。


「敵を前に呆けるとは、、、、まったくこの未熟者めが」


その情け容赦ない一撃を目撃した男性陣は、ヴィドも含め全員その股間を思わず押えてしまったので

あった。あれは痛いぞと、、、、、


決闘騒ぎから約1時間後、ギルド内の酒場は大宴会の真っ最中であった。酒の肴はもちろん先ほどの

イザベルとギランの決闘である。そんな中、イザベルはぶすっとした表情でミルクをちびちび飲んでいた。

その前には意識を取り戻したギランが土下座していたのだ。


「嬢ちゃん、いや姉御がこれほどの腕とは思わず、からんだオレがバカでした。煮て食うなり焼いて食うなり

好きにしてくださって結構です」


「いや、貴様を食ってもまずそうだから遠慮しとくぞ。それより、他にも謝る相手がおるであろう」


「そうでした。ドラゴンの兄いにも無礼な発言、真に申し訳ありません」


ギランはヴィドの方に向き直り、再び土下座をする。そこに酔いの回った冒険者が話しかけてきた。


「はは、ギランさんもやっぱり姉御の洗礼を受けることになったか。ここにいる連中みんな突っかかって

同じ目にあってるからなあ」


「そ、そうだったのか、、、、しかし姉御、オレの斧をぶった切ったあの技は一体・・・・・」


「ああ、それはこのオリハルコンの聖剣”ガレル”でやったぞ」


イザベルの手から、聖剣”ガレルが顕現する。それを見たギランは絶句した。


「お、オリハルコン、あの伝説の! そういえば鎧はミスリル、そんな装備王都の近衛騎士団でさえ持って

いませんぜ。姉御は一体何者で、、、、」


「我が国の竜騎士団では標準装備だったのだがな、、、、ここではそんなに希少なものだったのか」


「へえ、、、一体どこの国の竜騎士団で?」


「ルーク皇国だ」


聞いたことのない国名にギランは首をひねる。それに人型になれる高位のドラゴンを、竜騎士の愛騎に

してる国なぞこの世界には存在していないのだ。混乱してるギランに他の冒険者が助け舟を出した。


「ギランさん、姉御は”渡界人”なんだよ」


「そうなのか、ごくたまにそんな話を聞くが、まさか姉御が・・・・」


数十年に1回は、他の世界から転移してくる者がいるらしい。中には”チートだひゃっほい”と訳のわからない

ことを叫んでダンジョンに突入し、あっさり死ぬこともあるそうだ。


「まあその事はいい。今回は許すが次はないぞ」


「あ、姉御、なんて寛大なお言葉、このギラン子分として忠誠を誓いやすぜ。おし、野郎ども今日は迷惑

かけたな! 今日はオレの奢りだ、みな盛大に飲んでくれ!!」


「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」


酒場内は更に大盛り上がりとなった。イザベルは


「まったく、、、、あんなむさくるしい連中子分になぞ、まっぴらだぞ」


と苦笑していた。冒険者は明日をも知れぬ職業だ。荒っぽいが基本的には気のいい連中である。彼女は

こういう雰囲気は嫌いではなかった。こうして、イザベルの冒険者ライフは日々続いていくのであった。


「ううっ、、、ヒック・・・・」


「あれ、姉御酒飲んでないのに酔っぱらったんですかい?」


イザベルは、酒場内に充満する酒の臭いで、酔いが回ったのである。この様子を見たヴィドの顔色が真っ青

になった。


「や、やばいっ! みんなここからすぐ逃げろ!」


「え、やばいって・・・・・」


「ははは、よし、今日は私が一発芸を披露してやるぞ!」


”ちゅどーん!”


イザベルは店内で、全力のファイヤアローを放ってしまった。酒場は阿鼻叫喚のるつぼと化した。これにより

冒険者ギルドは半壊、激怒したギルドマスターからきついお説教を喰らったのち、弁償のために当面タダ

働きをするはめになってしまったとさ・・・・・


ちょっとテンプレなファンタジー設定の物語を書いてみました。日本とは違いマナが豊富にある

剣と魔法の世界なので、主人公のパープーさもパワーアップしています。

もう少し続く予定です。

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