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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
63/107

参章・肆ノ壱 ~洛陽絵巻~

どうも、DTKです。

お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、63本目です。


長尾と孫呉の面々が洛陽に着く前に、洛陽留守番組の一幕をお届けします。

肩の力を抜いてご覧頂ければと思います。


なお、実際の地形や距離とは異なった表現があります。

その辺、お含み置き頂ければと思いますm(_ _)m



チチッ、チチッ…



穏やかに晴れ渡る空の下、木の上で二匹の鳥が鳴いている。

((番|つが))いなのか、並んで枝に止まり、仲睦まじそうに身体を寄せ合っている。


「暇じゃのう……」


その様子を部屋の窓から眺めているのは、足利義輝。通称を一葉という。

ここは洛陽の一室。

彼女は先日、妹の双葉たちを助けるためにお家流を放ち続けた結果、体内の氣が尽き果て、しばらく生死の境を彷徨っていた。


しかし、華佗の治療で一命を取り留めた。

氣穴を半ば強引に開くことによって、体内に再び氣が巡り始めたのだ。

こうなれば、後は安静にし、回復に努めればよいのだが…


「こんな日くらい、少し外で気分転換をしてもバチは当たらんじゃろう」


元来、ジッとしている事が性に合わない一葉。

身体が動かせないほどの重症ならともかく、身体が動くまで回復しているのに、床に臥せっているのはどうにも我慢ならない。

ということで、今日も今日とて部屋からの脱走を試みるのだが…


コンコン。


「お姉様、起きていらっしゃいますか?」

「あ゛……ふ、双葉、か?」


出し抜けの来訪に、一文字目の『ふ』が完全に裏返る。


「……入りますよ。お姉様」


大体何があったか察しながら、双葉は扉を開け入室する。


「お姉様っ」


寝台には掛け布団が乱雑に寄せられており、そこにあるはずの姿はない。

寝台の主はしっかりと外履きを履いて、片足を窓枠にかけている。

現行犯だった。


「もう、何度言ったら分かってくれるのですか。どうか安静にしていて下さい」


つり上がった眉がすぐさま逆さに弧を描き、泣きそうな顔になる。


「う……そのような顔をするな、双葉。もう余は大丈夫なのじゃ。ほれ、この通り!」


一葉は手足をバタバタと振り回す。


「少しくらいは動かんと、身体が鈍って仕方がないのじゃ…」

「でも、お姉様…」


自分のために無理をして、自分の目の前で倒れてしまった姉。

双葉が心配しすぎるのも無理はない。

しかし一葉は身体を動かしたい。

縋りつく妹を前に、どうしたものかと頭を悩ませる一葉。

そこへ……


コンコン


「一葉殿、おられるか?」


医者の華佗の声だ。


「おぉ、華佗か!入ってよいぞ」


一つの妙案を思いついた一葉は、嬉々として華佗を招き入れた。






………………

…………

……




「と言うわけで、余は外に出たいのじゃ」


回診に来た華佗に対し、診察もそこそこに、いかに自分は健康で身体を動かしたいかと言うことを滔々と語る一葉。

妙案とは名ばかりの正面突破だった。


「ふむ…」


しばし顎に手を当て、考え込む華佗。

俄かに、


「失礼」


カッと目を見開き、一葉の全身を舐めるように凝視する。

傍から見たらアレな光景だが、これも華佗の診察の一種だと、一葉も双葉も慣れたものだ。


「……氣穴も完全に開いている。恐るべき回復の速度だ。こちらに関してはもう心配要らない」

「ならっ!」

「しかし、しばらく氣が流れていなかったこともあり、全身の氣脈が未だに半分寝ている状態にある。本調子になるのは、もう少しかかるだろう」

「そ、そんなぁ……」


期待値を上げられてから落とされた一葉は、ガックリと肩を落とす。


「だがまぁ…激しい運動をせぬのであれば、出歩くくらいは問題ないだろう」

「本当かっ!?」


落ちた肩が再び上昇する。


「一葉殿はなかなか活発な性格のようだし、あまり籠もりっきりというのも、精神の状態を崩してしまうかもしれないしな」

「おぉ、おぉ!お主、分かっておるのぅ!足利家の典医として召し抱えても良いぞ!」


うんうん、と何度も満足気に首肯する一葉。

それを制するように、


「ただし!くれぐれも無茶は禁物だ。それだけは約束してもらうぞ」


華佗が釘を刺す。


「うっ……それくらい、分かっておるわ!」

「分かっていても、それをお忘れになるのが、お姉様なんですけどね…」


困ったものだ、とばかりに小さく嘆息する双葉。


「ははは、あまり妹御を困らせるものではないぞ、一葉殿」

「うるさいわ」


プイと拗ねてしまった。


「なら手始めに、私と転子殿のところへ行くか?このあと診察の予定があるのだが」

「そうですね、それくらいなら…どうです、お姉様?」


いきなり外を出歩くのは不安だった双葉も、屋内なら多少は安心したようだ。


「ころか…そういえば、久しく顔を見ておらん気がするな。ならば行くぞ。疾く行くぞ」


決めたとなるや、スタスタと一人部屋を出る一葉。

確かに、体調は問題ないようだ。


「あ、お姉様。もう…ころの部屋の場所は分かるのですか?」


慌てて一葉に続く双葉。

この広い城の中で見失えば、それこそ一葉を野に放つのと同義だ。


「ふぅ……やれやれ」


苦笑を浮かべながら、華佗が最後に部屋を発った。






――――――

――――

――




「~~♪」


室内に、ころの鼻歌が響く。

ころは宛がわれた部屋で繕い物をしていた。


足を骨折したころは、絶対安静を言い渡されていた。

しかし、皆が必死になって頑張っているのに自分だけ何もしない、というのはころにはどうしても我慢出来なかった。

なので本当に細かい仕事、破れた服や壊れた備品などの修繕を回してもらっていた。

それ以来、こんな自分でも役に立ててる、とご機嫌だ。

働き者と言おうか、何と言おうか…


ちなみに、ころの部屋は一葉の部屋とは大分離れている。

当初、ころも一葉と同じ並びの部屋を宛がわれたのだが…


「ちょっ!…こ、こんな広い部屋落ち着きませんよ~~!

 それに、私なんかが一葉さまと同じような部屋を使うなんて、畏れ多いです…」


と言い、固辞。

最終的に、少し手狭な使用人用の部屋の余りを使っている。


コンコン


「転子殿、おられるか?」

「あ、華佗さんですか?どうぞ、開いてますよー」

「失礼」


耳慣れた医者の声。

しかし、開いた扉から入ってきたのは全く想定外の人物だった。


「久しいのぅ、ころ。存外元気そうじゃな」

「か、一葉さま!?」


飛び上がりそうなくらい驚くころ。

足が健在であれば飛び上がっていたかもしれない。


「もう、お姉様。いきなり入ってはころが驚くじゃありませんか」

「あ、双葉さまも…」


一葉の後ろから顔を出す双葉。

ころの反応は一葉とは違い、落ち着いている。

というのも、ころの身の回りの世話は双葉がしているのだ。

最初はやはり畏れ多いと断ったのだが、想像以上の押しの強さで押し切られていた。


「こらこら、これは私の回診なんだから、まずは診察させてくれ」


苦笑を浮かべた華佗が二人を部屋の端に寄せる。

世界広しと言えど、二人をこんな風に扱うのは剣丞と華佗くらいだろう。


「さ、転子殿。脚を見せてくれるか?」

「あ、はい」


手にしていた繕い物を置き、右足を差し出す。


「失礼」


包帯を解き、薬効のある薬草を外す。

露わになったころの右足首を診察する。


「…うむ。骨も正しくくっ付いているし、患部の腫れもほとんど引いた。骨折に関してはほぼ治ったと言って良いだろう」

「本当ですか!?それじゃあひよたちと一緒に…」

「それはまだだ」

「え…でも、治ったんですよね?」

「怪我自体は治ったが、次に歩く練習をしなければならない」

「歩く練習、ですか?」

「あぁ、一刀や剣丞の国の言葉で、りはびり、と言うそうだ。しばらく患部を固定していたから、腱が固くなっているし、筋力も落ちている。すぐに元のようには動けないぞ」

「そうですか…」


しょぼん、と肩を落とすころ。


「まぁ、基礎運動能力は高そうだし、そう長くはかからないだろう」

「本当ですか!?」

「あぁ。ただし、急にやると後遺症など残ってしまうかもしれないから、焦らずじっくりとだがな」

「はいっ!焦らずじっくり、ですね!」


沈んでいたころの顔に笑顔と希望が戻る。

病は気から、を実践する名医だ。


「のぅ…華佗よ。余はその、りはびり、はせんで良いのか?」


ころの話を聞いていて不安になったのか、一葉が嫌そうに聞いてくる。


「寝たきりの状態が長かったから、本来なら一葉殿の方が必要なのだろうが…」


ははは、と乾いた苦笑いを浮かべると、


「氣穴が閉じていただけで、それを開けてしまえば他はどうやら問題なさそうなんだ。氣穴が開き過ぎないように制御するのが大変だったくらいだ。強いて言えば、このように散歩をするのが、りはびりと言えるだろう」

「ふむ…?」


分かったような分からんような顔の一葉。


「要は、一葉殿の身体は規格外、氣の総量も規格外、ということだ」

「なるほど、よう分かった!ならば多少は無理をしても…」

「だが!氣の運用で無茶をすれば、寿命が縮まるぞ。なるべく長く、剣丞と共に過ごしたいのではないか?」

「うっ……そ、そうじゃの。主様と時を過ごせなくなるのは困る…」


一葉はグッと眉根を寄せる。


「ふふっ、さすがは華佗様。お姉様の性格を心得ていますね」


口元を押さえながら双葉が笑う。


「あはは、本当ですね」


釣られてころも笑う。

部屋が笑顔で満たされたところへ…


「こ~ろちゃ~~ん!!」


突然、バタンッと勢いよく扉が開かれる。


「ひよさん…部屋に入る前は、のっくをしないと…」

「まぁ、我々の慣習にはありませんからな」


文字通り、部屋に突撃したひよの後ろから、あはは、と言う困った笑いと、ははは、という乾いた笑いが追いかけてくる。

雫と幽だ。


「こらこら、怪我人の部屋だぞ。もう少し静かに…」

「あ、華佗さんこんにちは!ころちゃんの怪我はどうですか!?」

「ん…あぁ、骨は元通りにくっついたし、腫れも引いた。後はりはびり……」

「あぁ!よかったよ~!ころちゃ~~ん!!」


言うや、ころに抱きつくひよ。


「ちょっと、ひよ…苦しいってば!」

「だってだって~…ころちゃんが治ったって聞いたら嬉しくって~!」

「ひよは相変わらずじゃのぅ」


呆れ半分、安心半分といった目でその光景を見つめる一葉。


「公方さま!?」


ようやく、帽子をかぶった少女、雫が部屋の隅にいた一葉に気付いた。


「おや…もう出歩いて大丈夫なのですかな?」


華佗殿がご一緒なら抜け出てきた、ということはないでしょうが…

と、皮肉を入れる幽。


「ふんっ…これも、りはびり?の一環じゃ!大して見舞いにも来んかった不忠者がよく言うわ」

「いえ、某が行くと公方さまにお気を使わせてしまうと考え、あえて行かなかったのですよ。ま、お元気そうで何よりです」

「……お主も、息災そうで何よりじゃ」

「うふふっ…」


そんな二人を見て微笑む双葉。

なんだかんだで、お互いの元気な様子に安堵しているようだ。


「ところで、雫たちのお仕事は順調ですか?」

「えぇ。もうすぐ完成しそうですよ、双葉さま」

「なんじゃ。なんぞ作っておるのか?」


一葉が耳聡く、双葉と雫の会話に入っていく。


「はい。雲梯、という攻城兵器なのですが、とにかく凄いのです!」

「ほぅ?」


キラリと一葉の目が光る。


「それはどう凄いのじゃ?」

「それはもう!真桜さんという絡繰技師の方がいらっしゃるのですが、私達には思いもつかない発想や技術を持っているのです!我々の時代から千年以上も前の世なのに、とにかく凄いんです!」


興奮で説明が論理的ではなくなる雫。


「歯車がこう、噛み合って、大きいのがわぁ~って動いて…私の口では説明できませんね。本当は実際に見て頂くのが一番なので……」

「そ~か!ならばこの目で見ねばな。行くぞ、疾く行くぞ!ほら雫、案内致せ!」


その言葉を待っていた、とばかりに雫の手を掴むと、そのまま部屋を飛び出す一葉。


「お姉様!」

「ちょっ…公方さま!?」

「おい一葉殿!あれほど無理はダメだと…」

「あぁ一葉さまが!ころちゃんどうしよう!?」

「……なんか、いつもの生活が戻ってきたって感じだね」


こうして、留守番組は平和な?日々を送っていたのだった。




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