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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
107/107

陸章・参ノ弐 ~四天王~

どうも、DTKです。

お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、107本目です。


正体不明(?)の敵に攻め込まれる武田軍。

四天王がそれぞれの思いで行動します。


この辺は構想当初から書きたかった所なので、楽しんで頂ければ幸いです^^

まぁ、描くのが心苦しくはありましたが…



「くっ…」


春日は歯噛みをしていた。

前線では愛すべき兵たちが、まるで道端の草を踏み潰すが如く、散らされている。

自ら前に出たいが、指揮を放り出すわけにもいかないので、ただ黙って見ていることしか出来ない。

謎の将の侵攻は、粉雪の隊が横合いから突撃したため、今は多少勢いが弱まりはしたものの、それもいつまで保つか分からない。


「春日さん!」


そんな折、後方から心が援軍を引き連れてきた。


「ちょうど良いところに!心、隊の指揮を引き継いでくれ」

「え…それはどういう……」

「某は前に出て、粉雪と共にあの化け物を止めてくる」

「か、春日さん、それは…」

「後は全て任せる。撤退の時機だけは見誤るなよ」


春日さん待って、という声は激しい馬蹄の音に掻き消された。




…………

……




優れた武人は向かい合うだけでその力量が分かるという。


「な…なんなんだぜ……こんなの反則なんだぜ!」


粉雪も武人としてそれなりの自負を持っていた。

だが『それ』を前にしては、敗北の二文字しか頭を過ぎらなかった。

それでもやるしかない。

それが、常勝武田軍を支える赤備えを任された者の責務だからだ。


「てやあぁぁぁぁーー!!!」


徒歩(かち)の敵に対し、馬上からの振り下ろし。

上から押し込むほうが力を加えられるので、圧倒的優位。

のはずだったが……


「邪魔」


フォンと、どこか遠くで聞こえた風切り音が馬を通り抜けて粉雪に迫った。


ギィ……イィィンッッ!!


敵の一撃は何とか槍で受けられたものの、粉雪の大きくない身体は、戦場中に響き渡る音と共に宙を舞った。


「「粉雪っ!!」」


それは、場所は違えど離れた位置にいた春日と兎々の目にも届いた。


「ぐっ!!」


宙より落ちた粉雪。

下にいた兵が受け止めに入ったものの、その衝撃は激しく、激痛に顔を歪める。

受け止めた兵も数名、腕や肩を押さえている。


「大丈夫か粉雪!?」


そこへ春日が辿り着いた。


「春日……これくらいへっちゃらなんだっっつぅ!!」


身を起こそうとした粉雪が反射的に首を押さえた。


「粉雪!首はいかん。下がって治療を…」

「そんなの……ダメ、なんだぜ…」


心配する春日を振り払うように、しかしゆっくりと粉雪は立ち上がる。


「春日も…もう分かってるんだぜ?」

「……………………」

「後は頼んだんだぜ」


粉雪は口元だけ微かに笑うと、


「山県隊のみんな聞くんだぜ!山県の赤備えは誇り高き武田の先鋒!武田に仇なすものは全てアタイらでやっつけるんだぜ!動けるものはアタイに続くんだぜーーー!!!」


周りの兵を鼓舞しながら、放馬していた馬に飛び乗ると、再び敵目掛けて行ってしまった。


「粉雪ーーー!!」


すんでの差で兎々が駆け込んできた。


「…兎々か」

「春日さま!粉雪は!?」

「再び前に出た」

「そんな!あの高さから落ちて無事なわけないのら!」

「………………」


春日は瞑目し、兎々の言葉にも無言を貫く。


「春日さま!!」

「兎々。今から私の言うことをよく聞け」

「な、なんなのら…?」


春日の只ならぬ声色に、兎々は気圧される。


「今から、全軍を撤退させる」

「な!?なにを言って……」

「かの武士(もののふ)には例え幾万の兵で攻めようと、恐らく敵わん。『そういう存在』なのだ」

「そんな……それじゃあ、粉雪は――!」

「だからお前は、後方の心を((殿|しんがり))とし、お屋形様と合流。何としても御身を無事にお逃がしするのだ」

「え…?」

「後方にはまだ着到していない薫さまもいるはずだ。それとも上手く合流を果たし…」

「春日さまは!?春日さまは、どうするつもりなのら…?」


畳みかけるように指示を出す春日の話を、兎々は何とか止めると、嫌な予感のする疑問を投げかけた。


「………………」

「春日さま!」

「……当然、拙も粉雪に続く」

「そんな……なら兎々だって…」

「ならんっ!!」

「ひうっ…」

「お前にはお屋形様をお守りするという大事な役目を与えたのだ!これは四天王筆頭としての命令だ!背くことは断じて許さん!!」

「兎々らって…兎々らって戦いたいのら…なんのための四天王なのら……」


四天王の末席として、末席だからこそ、その責任を人一倍感じている兎々。

同じ四天王の粉雪が、春日が、そして恐らく心も、その責任を履行するのに、自分だけそれが叶わない。

悲しさの、悔しさのあまり、戦場のど真ん中にも関わらず、兎々は身体を震わせながら涙を流した。


「……なんのための、逃げ弾正なのら…」

「だからこそだ」


春日は膝をつき、彼女の左肩に手を添えながら、兎々の目を見ながら優しく、しかし力強く、


「拙よりも心よりも粉雪よりも、御館様を無事お逃がしするにはお主の…逃げ弾正の力が必要なのだ」


と言った。


「あ……」

「万が一のときは、命を賭して、御館様を守るのだ。分かったな」

「……分かったのら!」


涙を腕で拭うと、兎々は武士の顔でそう応えた。


「うむ……良い目になった」


そう言うと春日は兎々に背を向け、敵の方へと向き直った。


「お主はまだ若い。出来ることなら、生きる道を行け」

「はっ!…春日様、ご武運を」


兎々の言葉に、右手を軽く挙げて応える。そして大きく息を吸った。


「行け!兎々っ!!」


兎々は馬に飛び乗ると、粉雪とは逆方向、本陣の方へと駆け出した。


「武田の未来。しかと託したぞ…」


背の目でそれを見届けると、両の眼には人垣を割りながら進み来る敵の姿が映った。

一度瞼を閉じると、俄かにくわっと見開く。


「我こそは不死身の馬場美濃也っ!名も知らぬ武士(もののふ)よ!いざ尋常に勝負せよっ!!この身、ただで抜けると思うなよっ!!」


一喝。

春日は馬腹を蹴り、敵へ向かって駆け出すのだった。




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