13話:カマイタチ
光の眩しさに目を思わず瞑ってしまったが、目が慣れて開けるようになるとそこにはW.O.Fの世界が広がっていた。自分自身のアバターに完全に入ることができ、右手で左腕を少しつねってみた。確かに痛い。感覚共有は本当の事らしい。
「あら、やっと来ましたわね。では、着いてらっしゃい。案内しますわ。」
城ヶ崎に促されて俺とシロは歩を進めた。賑わう繁華街を抜けて暗い路地裏のような所へと連れて行かれた。周りは壁で囲まれており、完全に行き止まりである。
「おい。城ヶ崎まさかこんな不良が喧嘩しそうなところでやるってんじゃねえよな?」
「バカになさらないでください。」
そういうと、城ヶ崎は手を行き止まりの壁へとかざした。その瞬間壁が光を発して穴が空いた。
「これは、スターストールに出場する人限定で入れるクエストステージですの。まぁ、ここでは架空のバグなどがいて修行する方が多いみたいですわね。スターストール自体もこのクエストステージ内で行われますわ。」
そう言って城ヶ崎は穴の中へと入って行った。俺とシロも置いていかれないように急いでその後をおった。
穴を抜けるとそこには一面の大草原が広がっていた。
鮮やかな緑色の草の中に綺麗な花が咲き、太陽の輝きのなかでより一層美しさを増していた。W.O.F内も夏のようである。
「綺麗だ…」
思わず呟いてしまった。
「では、始めましょうか。この時間のここには人はあまり来ませんから。邪魔は入りませんわ。」
城ヶ崎がそう言った。
すると、城ヶ崎はW.O.Fのシステム画面をいじり刀を取り出して俺の方へ投げた。
「能力が使えないのでしょう?使うといいですわ。」
その発言に対して少しイラっとしてしまった。
「へ、へぇ。なに。自分は余裕ってか。」
「えぇ。もちろん。」
城ヶ崎に即答されてしまう。
「瞬!僕は相手の能力解析のサポートしか出来ないにゃ!すまないが頑張って欲しいにゃ。」
隣にいるシロに言われた。俺は頷き城ヶ崎のいる方へ向き直す。
そういえば城ヶ崎に補助ペットがいないのが気になるが…
まぁいい。
自分の首元…始まりの星の原石へと目をやる。こいつがどんな能力かは知らないが今は期待するしかない。
城ヶ崎へと向き直す。城ヶ崎は余裕と言った表情だ。
草花が風でなびく。勝負は今か今かと始まりを告げる合図を待っていた。
城ヶ崎が持っていた扇子を片手を振り下げて大胆に広げた。
その刹那。瞬が地面を思いっきり蹴り飛び出す。日本刀を思いっきり振り下ろして城ヶ崎に斬りかかる。城ヶ崎はそれを読んでいたかのように鮮やかにかわす。
城ヶ崎は、扇子を瞬に向かい投げる。瞬は余裕と言わんばかりに顔をずらしてかわした。
しかし、かわした空気に触れた途端に自分の頬が切れているのに気が付いた。切れた頬から血が流れる。
投げた扇子が城ヶ崎の元へと戻ってくる。
唖然とする瞬に向かいシロが話しかけた。
「にゃるほど。あいつの星の原石はあの扇子だにゃ。能力名アネモス。風を自在に操る事の出来る能力にゃ。フェーズ1では風力2程度…つまり軽風までしか扱えないにゃ。けれど、フェーズ2まで到達してしまうと風力7…つまり強風まで自在に操れるようになるにゃ…」
「まってくれ。風の強さはわかった。けれど、なんで俺の頬が切れたんだよ。」
城ヶ崎がその質問に対して得意げに答える。
「カマイタチって小存じかしら?妖怪としても有名ですわよね。まぁ私が妖怪を使役しているってわけではありませんわ。カマイタチの正体には諸説色々ございますけれど、風の中に含まれた微量の砂塵というのが私の中のカマイタチですの。あなたを通り過ぎる瞬間風に包まれた大量の砂塵があなたを切り裂いた。ね?簡単でしょ?」
そういうと城ヶ崎は持っていた扇子を閉じた。
「わたくしはフェーズ2まで到達しました。起こせる風力は7。簡単に説明すれば風に向かって進むのが困難というレベルの風ですわ。その中にカマイタチを使われて見たら…ね?考えたらわかるでしょ?」
城ヶ崎はもう諦めろと言わんばかりの態度である。
確かに勝ち目は薄い。というよりも無いに等しいかもしれない。しかし、やるしかない。勝つしかない。
「素敵な提案ありがとうな城ヶ崎。けれど、俺は諦めない。俺は勝つよ。」
その言葉を聞いた城ヶ崎はニッコリと微笑むと閉じていた扇子を、バッとし広げた。それを瞬に向かい振り下ろした。




