~ある鼠たちの物語~
朝日が目に刺さる。体はまだ夢から醒めていないようで重い。それでも米沢雄登は、耳に障る目覚まし時計を止めるために起き上った。ああ、今日も一日が始まる。そう思うと気分は憂鬱だったが、無理やり笑って着替え始めた。
部屋を出て下に降りると誠さんと遥が、喫茶店になっているキッチンで、朝食をとっていた。
「ずいぶん遅かったじゃないか。何をやっていたんだよ、朝から。」
「別に。何もしてないよ。普通に着替えていただけ。」
「だったらもっと早く来いよ。折角のコーヒーが冷めちまう。」
小洒落た喫茶店のカウンター席には、遥の隣の席に、コーヒーと、サンドウィッチが用意されていた。雄登は、近くにあった新聞を読みながら、それらを食べ始めた。しばらく読み進めて行くうちに、ある記事に目が釘付けになった。
『寺田氏、党を離党する。』
思はず溜息がでた。
寺田がまた動き出す・・・。しばらくとりとめもなく、自分の思考にふけっていると、横から不意に
遥が顔をだし、
「寺田がまた動くそうだって。ここも安心できないね。あっ、後でここに行っといてね。
人探しだって。
「おまえ・・・。なんで人に仕事丸投げするんだよ」
「だって、実際あんたの方が顔いいからだよ。あんたは、チビなところ以外道行く老若男女みんなが
振り向くような奴なんだぜ。絶対あんたが行った方がいいって。」
そう言われるとなんだか断れなくなる。
「遥もついていけよな。じゃないと報酬を半分以下か、無しにするからな。後雄登もおかしいし、いちいちそんなのに乗るなよ。」
流石誠さんと前半は、思った。しかし後半のはなぜだ?少々ひどいようなきがするが。
「ちぇー。誠さんがそういうなら仕方ない。雄登、あんたが相手して、あたしが近くで
見ているから。場所は赤街を抜けたところにある噴水広場ね。」
そんなことを言いつつ、もう行く支度をし始めている。
「雄登も早くしないと、遅れるぞ。それじゃ、俺はこの店の支度を始めないといけないから。
いい知らせまっているぞ。」
そんな言葉を残して店の奥に誠さんは消えた。俺も早く支度を済ませていかなきゃな。
そんなことを思いながら急いで、遥の後を追った。