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プロローグ

PCを整理していたら見つけたかなり昔の作品です。

王道ですが、自分が好きな設定だったので新たに書いてみようかと…思いました。

でも、どうなることやら…


あまり長くせず、完結できるよう頑張ります!!


「アティ様…すてきですぅ…」

うっとりと見つめてくる侍女にアティは苦笑して答えた。

「はは…ありがとう。マリア。」

答えた後、アティは目の前の鏡に映る自身の姿を改めてみた。

流れるような美しい金髪は低い位置に結われ、決して大きくない胸もさらしを巻かれぺったんこになっている。

その身を包んでいるのは、男性が着る礼服だ。

胸元には、王家を象徴する鷹の紋章がついており、そこにはめ込まれた赤い宝石がキラメキを放っている。

アティ、アリアティーノ。小国エイリスの姫だ。

しかし、目の前にいる自分はとても姫君には見えない。何処から見ても、美少年だ。

アティは誰にも気付かれないようにそっとため息をついた。


…ここまで兄上にそっくりだと、感動を通り越してショックだわ…


元々、アティは女性にしては背が高く、可愛いという感じではなかったし、妹のティティと違って剣術も好きだったため、女性特有のふっくらさはなく、どちらかというとすらっとしていた。

それでも、ドレスを身にまとい化粧を施されたアティはちゃんと女性に見えたし、月の妖精といわれるほどの美女であった。

それが、どうだろう。

化粧をとり、胸にさらしを巻いて平らにし、男性の服を着ただけなのに…男にしか見えない。


…本当に、ショックだ。いったいなんだって私がこんな目にあうんだ…


ことの始まりは、もともと体の弱い兄、フォルスが妹姫であるティアナティーノの結婚話にショックを受け倒れたことがきっかけだ。

妹のティティは、アティと2歳違いの姫で、アティと違い小さくて愛らしい姫で求婚者が絶えない自慢の姫だ。

その姫に、大国グランディ皇国の新王が求婚してきたのだ。

これには父である国王も兄上も、もちろんアティもティティも驚いた。

グランディ皇国とは東に位置する、大国だ。

しばらく跡継ぎ問題による内戦が続いていた。

がしかし、末弟であった継承権第4位の皇子がついに、その内乱を治め国王となったのは最近の事だ。

長く続いた内乱で、国力は落ちていたし、内乱に乗じて攻め込んできた隣国との戦もありグランディはそろそろ危ないとの噂まであった。

それを新国王は自ら出陣し、すべてを解決してしまったという豪傑だ。

…人物だけ聞けば、アティだってすごいとは思う。

その豪傑がなぜティティに求婚してきたのか、アティにはわからなかった。

ティティの美貌は各国に響き渡っているから、そのせいかとも考えたが…

…腑に落ちないわ…。


アティにはそれだけでないように思えてならなかった。

…だって、内乱を自らの手で解決して、兄たちを差し置いて王になっちゃう人物だよ?そんな男が美貌だけで王妃を選ぶだろうか…それとも男は所詮顔で女を選ぶのか…


「アティ様?どうかしましたか?」

 侍女の声にはっと我に返る。

 しばらく思いにふけってしまっていたらしい。

「ごめん。大丈夫。あまりに兄上に似ていたから驚いてしまって…」

「いいえ!アティ様!フォルス様より凛々しいです!男らしいですわ!!」

…それってどうなのよ…

 のどまで出かかった言葉を飲み込んで、アティはなんとか微笑んだ。


「ありがとう…」

 そういわれた侍女は頬を染めてうっとりとしている。

…だから、なんで頬を染めるのよ…

とにかく、兄がぶっ倒れたせいなのだ。

 兄フォルスがティティをものすごく可愛がっているのは国中の者が知っている事実である。

 だから、グランディ王から求婚があった事をしった瞬間に気を失った。それからずっと寝込んでいるのだ。

 これには父王も困った。

 グランディ皇国からの求婚を簡単に断るわけにはいかない。

 グランディ皇国の新王の即位式に国王代理として皇太子である兄が出席することになっている。それにティティも連れてきて欲しいとの知らせがあったのだ。

 だが、肝心のフォルスが倒れてしまっている。

 そこで出てきたのがアティだった。

 アティとフォルスは男と女の差はあれど、とても似ている兄妹で、体の弱くひょろひょろしているフォルスに比べ、アティは剣術や弓が大好きで小さい頃から外で遊んでいた為、体力には自身があった。

 ないしょの遊び場が騎士団の稽古場だったため、騎士団の知り合いも多く、その能力には定評がある。

 だから、アティにこの話が持ち上がったのだ。

 兄王子そっくりの暴れん坊の姫君ならば、きっとばれない。

 そんなわけで、アティは兄に化けて妹のティティとともにグランディ皇国にいかねばならないのだ。

 「姫様、わたくしも一緒に参るのですから、そう落ち込まないで下さい。」

 「エマ…ありがとう。わかってる。大丈夫だよ。私、兄上より王子らしい王子を演じる自信あるから」

 「その意気です。姫様。でも…ティティ様のことはいかがなさるおつもりで?」

 「それなのよね〜」

頬杖をつきながら、アティはちらりとエマを見た。

 エマとは生まれたときからの付き合いだ。

 乳母のエリーの娘で、アティより4つ年上の姉のような存在だ。

 こんかいのグランディ行きについても、エマが来てくれるというだけで、とても心強い。

 が、しかし今回は姫としてではないから、ずっとエマが侍女としてついているのもおかしい。

 「エマ、今回わたしは騎士団の誰か…多分、団長のダーウィンあたりが私の従者としてつくと思うの。そうすると、エマと私がいつまでも一緒っていうのはおかしいわ。エマにはむしろ、ティティのほうをお願いすると思うから、そのつもりで。」

 「かしこまりました。お任せ下さい。グランディ王だろうがなんだろうが、ティティ様におかしなことしようとしたら、ぶっ飛ばしてやりますわ!」

 「はは…国際問題にはならない程度にお願いね…」

 アティはもう一度、鏡の中の自分をみて、ぐっと手に力を入れた。

…ここまできたら、覚悟を決めるしかないわ。グランディ王にはなんとかして

ティティをあきらめて貰って、無事に帰ってくる。そのためには、私がしっかりしなくちゃ!


読んで頂きありがとうございました!!

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