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夢から覚めたら異世界でした  作者: 東条 太郎
第二章 闘技大会編
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第二十二話 VSルルズ

 

 ワァァァアアアア


 観客の声援が会場中に響き渡る。おそらく応援しているのは俺ではなく、対戦相手であるルルズであるだろうが。

 流石にDランクの冒険者たちを1度の攻撃で倒したといっても、Bランクの冒険者には勝てないだろうという考えだろう。

 Dランク冒険者……どんだけ弱いと思われてんだよぉ…。


 気を取り直し、控えから出てフィールドに立つ。

 向こう側から俺と違う人がやってくる。

 ……やはり、名前だけで人を判断してはいけない。子供のような名前だが、(最初のころはルルズでも可愛い者だったのだろうが)人である限り年をとる。そして見事大人になった。

 俺の前にいる人は、身長は軽く190を越え、鎧を纏っていても分かるほど筋肉が盛り上がっている。

 肌は、日によく焼けて小麦色をしている。目は茶色で白目のところがなければ肌の色と同化して分からないほどだ。かなりの使い手とみた。髪の毛も茶色で、土属性のエキスパートみたいな感じだ。

 背中に背負うは、アックス。ただ、柄の部分が少し太いものだ。

 鎧も、重騎士のごとく重そうなものだ。


 ちなみにだが、決勝リーグから、何かしらの制限が設けられる。

 今回は、魔法を制限される。

 残念だったね!今回君は魔法が使えないよ!


 ということは、俺も身体強化魔法が使えないんだが、まぁ、大丈夫だろう。…たぶん。


 両者役者がそろったことで、審判が試合開始の前フリを始める。


 「さぁ、第98回セントラル闘技大会決勝その第一試合を始めます。右手、ベテランBランク冒険者ルルズ選手。そして左手、オッズ30という、驚異的な数字をたたき出した、今回のダークホースであるレックス選手。今回の審判は私、フランが勤めさせていただきます。……試合開始ッ」


 司会者がしゃべり始めると、観客も静かになり、緊迫した空気が流れる。

 長い前フリが終わり、両選手共に武器に手をかける。そして前触れなく試合が始まった。

 前触れがなかったのは、審判が忘れていたのか、もとよりなかったのかそこまで分からないが、少し心臓に悪い。


 両者馬鹿みたいにすぐに動かず、互いに相手を見、隙をうかがっている。

 一瞬であるはずだが、永久とわの時間が流れたかのごとく、一瞬が長く感じた。

 そして、先にルルズが動いた。


 ルルズは、土を強く蹴り約3秒で10mほどつめてきた。重そうな鎧を着ているのに、予想以上に早い。

 そこで背中から武器を取り出し右足で地面を踏みしめ、右方向から左方向へなぎ払った。―――ただ、その刃は届いているようには見えない。動かずともよけれるのでは?と、一瞬だけ思ってしまった。

 武器を展開・・しながら前方2、5mをなぎ払う。柄の部分にまで刃が隠れている。無論その範囲の中に俺はいる。もちろん、刃の部分には、非殺傷用のキャップがつけられている。


 (ヤバイッ)


 俺は脊髄反射でイナバウワーをして、迫りくる刃の脅威から逃れる。

 斧が通過したことを確認してから、次の攻撃に備えるため、すぐさまバク転で距離をとる。―――案の上バク転をすると同時に、右足で蹴りにかかっている。

 (おぉ!!初めてバク転ができた!)

 本人は、全然違うことを考えてたが…。

 少し喜びながら、相手を見る。警戒しているのか、まだその場所にいた。

 兜で顔は見えないから、警戒しているのか驚いているのか分からない。


 今度はこちらから仕掛けた。

 背中にかけてある大剣の柄に手をかけ、スキルである【縮地】を使い先ほど自ら空けた距離を0、5秒ほどでつめる。

 ワイバーン戦でもコレ使えばよかったと思ったのは、この試合が終わってからだ。


 【縮地】で距離をつめ、自身の間合いに入ると共に、背中の大剣を振り下ろす。

 身長が低い分、懐に入り込みやすい。だが、相手の反応も早かった。距離をつめられると感じた瞬間、すばやく距離をとり、俺の一撃を避していた。

 うーん。やっぱりBランクにもなるとDランクとは違うな。


 俺の初撃は、見事にかわされ大剣は地面に叩きつけられる。

 (あっちゃ~刃が欠けてなければいいけど)

 地面は、剣を中心に見事陥没した。そして、周りに二次被害として巻き上げられた土が飛び散る。


 地面に刺さった剣を支点に、俺は振り下ろしたときの移動エネルギーの残りと、腕の力でルルズへ地面と平行に飛ぶ。

 空中で体制を建て直し、再び懐にもぐりこむ。そして鎧ごと一度殴る。もちろん痛い。ただし、鎧の中に振動は通ったはずだ。証拠にルルズは俺が飛んできた分だけ場所が移動している。

 殴った場所を見れば、見事にへこんでいる。なんかうれしい。


 手が痛いので、一度後へ下がる。もちろんバク転でだ。そして、大剣を回収し、背中へ戻す。

 再びルルズのほうを見るが、先ほど俺が殴ったところを押さえて膝をついている。


 「おい、大丈夫か」

 「大丈夫な様には見えないが…」


 観客席の方からルルズを心配するような声が聞こえる。俺は?俺は?

 たっぷり10秒ほどまって、審判であるフランにより試合の終了が告げられる。


 「初戦第1試合ルルズ選手とレックス選手の試合は、なんとレックス選手の勝利です!!」


 「「オォォォォオオオオオオ!!」」


 観客の人たちも、BランクとDランクでは悔しいことにランク的に高い、Bランクを優先するようだが、これは闘技大会なのでやっぱり番狂わせがあるほうが楽しいのだろう。ウェルカムのようだ。


 俺はルルズのほうへ近づき、手を差し伸べる。一応握手のつもりだったが、相手のほうは分かっていないのかなかなか手を出そうとしない。催促するように「ホラ」と言いつつもう一度手を出す。これでようやく分かったのか、手を出して互いに握った。…いや、こっちが握ったから、握り返したという方が正しいのかもしれない。

 ついでに手を引き、立たせる。

 フ、勝とうが負けようがしっかりと対応するのが紳士なのだよ。予選のときはやってないけど…


 「おおっと、実に爽やかな終わり方ですね。みんなも見習って欲しいですね」


 フランがそう言った後、俺たちは互いにフィールドを後にした。いや、俺が勝手に出て行っただけだけど。……大丈夫だよね!



◆◇◆



SIDE ルルズ


 俺は、セントラルに代々続く騎士家の次男だ。代々城に騎士を輩出するいわゆる名家というやつだ。

 今までに何人ものの優秀な騎士を輩出したらしい。特にレイモンド兄さんは、近衛騎士となり自分の家はさらに注目を浴びた。

 この期待にこたえるべく、俺は冒険者となりただひたすらに実力をつけた。その結果、2年でBランクにまでランクを上げた。そして、闘技大会に出た。


 予選は周りの人間が自身と同等なため、苦戦こそしたものの、何とか勝ち進んだ。

 決勝リーグ一回戦は、Dランクのレックスという冒険者だ。Dランクなのでオッズは30を越えている。予選こそ圧倒していたらしいが、こういうことは時々ある。冒険者になる前に、ある程度の期間師事をしていた者や、親などから教えられていたものなどは、Dランクくらいまでなら、していないものとの差はかなり大きい。Cランクくらいからは、経験を積み段々差は縮まるとされている。まあ、それでもしっかりとした教えを受けているものの方が、基礎がしっかりしているのでその分、強いのは強いのだが。


 だが詳しく聞いてみると、彼は、予選をたったの一振りで終わらせた。周りの16人を、一振りでだ。

 いくら誰かに師事をしていたとしても、同ランクの冒険者16人をたったの一振りで倒すのはなかなかに難しい。ということは、かなりの実力の差があったようだ。ランクでは表していない実力の差が。これは、Dランクだからといって、侮るわけにはいかないと思った。だが、不思議と負ける気はしなかった。2年でBランクまで上がってきた自信から来るものだろうか。


 試合が始まった。


 最初は様子見としてしばらく待った。黒いマントを羽織り、マントは足の先の部分まであるため、中に何を着ているのか分からない。もしかしたら暗器を仕込んでいるかもしれない。

 集中しているためだろうか、やけにこの時間が長かった気がした。

 しばらく待っても仕掛けてこないようなので、こちらから行くことにした。

 踏み込み足に力を入れ、溜める。そして爆発させるが如く動く。間合いに入ると同時に背中に背負っている愛用の武器に手をかける。そして振りぬく。

 相手であるレックスは、武器に手をかけても動く気配が無かった。ただ単に動きが早すぎて反応が追いついていないのか、それとも当たらないと確信しているのか、俺にはわからない。ただ振り抜くのみ。

 前者なら言うことはない。だがもし後者なら、それは間違いだ。この武器は、柄の部分が折りたたみ式で、振りぬくスピードが速ければ速いほど、早く展開して本当の姿を現す。その姿の間合いは、ざっと腕の長さを含めて2、5メートル。展開前なら1,5メートル位だからその位置なら当たらない。だが、1メートルも間合いが伸びれば、十分その範囲内に入る。

 俺はこのとき勝利を確信した。もし一撃目が避けられたとしても、この次に攻撃を仕掛ける用意は完璧だ。


 案の定攻撃は避けられてしまった。だが、頭をそらし手が地面についている。この体勢なら次の攻撃を入れるのは赤子でもできる。後に下がったわけではないから、相手は斧の中だ。腕が伸びきってしまっている。すぐに斧を戻すのは不可能。なら軸足と反対側の足で蹴る。


 だが、この攻撃までも避けられてしまった。しかもバク転でだ。背中に大剣を背負っているのにもかかわらずだ。ずいぶん器用なものだ。……感心している場合ではない。おそらく兜で隠れているだろうが、顔はずいぶんと驚いた顔をしているのだろうと。そして、兜をかぶっておいてよかったと思った。おそらくずいぶん不細工な顔をしているだろうから。


 少しの間驚きで動けなかった。その一瞬の間に、相手は恐ろしい速さで距離を詰め、背中の大剣を振り下ろそうとしていた。

 あわてて回避した。あと一瞬遅かったら、俺は今の地面のように粉々にされていたのだろうか。……いや、それは困る。この防具は今まで稼いだ8割以上ものお金をつぎ込んで作ったものだ。いくら一度の依頼で、物によっては1,000,000G以上ものお金を稼げるとしても、最近Bランクに上がったばかりでは、そうそうそんな依頼を任せてくれるわけがない。大概そういったものはかなりの危険が付きまとい、熟練の冒険者でさえも成功させることが難しい物だから。


 回避したが、相手は地面に刺さった剣を使い、こちらに向かって飛んでくる。こちらは無理に回避したため、体勢がまだ整っていない。容易に懐への侵入を許し、レックスは俺の鳩尾を狙っていたのかは分からないが、見事に鳩尾の部分を殴る。何故か、鎧の中までかなりの振動が通った。振動は容赦なく横隔膜を揺らし、呼吸をするのも辛い。

 当の本人は、早々にバク転で元の位置まで戻り、大剣を回収。臨戦態勢はバッチリのようだ。だが、こちらは呼吸ですらしんどく、立つことも辛かった。どう見ても、こちらが勝つことは天地がひっくり返ってもないだろう。だから、素直に膝を折り、これ以上の試合続行不可の旨を審判に知らせる。

 しっかりとその意味を理解したのか、審判は試合終了の声をあげる。会場は声で溢れた。


 少しした後、視界に手が映った。黒いものが見えるため、さっきまで試合をしていたレックスだろう。試合をし、俺は負けた。お前に何かをされる義理は無い。そう思い無視をしていたが、「ホラ」と言われれば、手をとるしかないだろう。べ、別に一人で立つのがしんどかったわけじゃないんだからね!…………いっその事一思いに殺してくれ…。

 手をとるが、何をするのか分からない。レックスが手を握ってきたため、ついつい握り返してしまう。コレを何かの了承の意として捕らえたのか、一気に手を引き、俺を立たせる。

 レックスは何をするでもなく、俺を立たせた。

 そして、フランが言い終わった後に、フィールドを後にしていった。





最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字等お待ちしております。



更新遅くなってすいません。宿題も理由のうちに入りますが、戦闘シーンって難しいですね!

あと、8月中に1話位更新してもよかったですね…すいません。


ちょっとだけ調子に乗りすぎちゃいました。そこらへんは許してください(笑)


それと、すでに3分の1ほど過ぎてしまいましたが、小説大賞の方もポチッとしてくださるとうれしいです。

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