第十九話 王との会見
目線を少し上に上げれば、目の前に広がるは、でっかい城。
城壁はこれでもか!!というくらいに白く、真っ黒姿の自分はモーレツにとてつもなく目立つ。
城門も、城の大きさに比例して、縦10メートル、横7メートルくらいの大きなものだ。
そして、当然ながら城門の前には、兵士がいるわけで、何をしに来たのかわからない子供(←俺)に対し、最初は様子を伺うような目線だった。だけど、後ろからクリスが現れると、流石に一瞬驚いたようなようで、体をビクリとさせた。まぁ、すぐに元に戻ったけども。
「なあなあ、本当にここに入るのか?俺、正直ふつーに嫌だぞ」
「あぁ、本当だよ。君はここに今から入り、私の父、まぁこの国の王と略式のはずだろうが、会見を行うはずだ」
あー本当に嫌だ。欝だ。そうだ!腹痛なので休みますといえば、会見をしなくて済むか。
「それはないと思うぞ」
!!
俺の心を勝手に読むんじゃなぇ!!
「それはすまなかったな。まぁ、いい。早く済ましてしまおう」
全然よくないんですけどーー!!でも、早く済ませたいのは同意だ。こんなところから早いことオサラバしたい。
クリスが歩き始めると、それにあわせて門も開き始める。
ダダダダッ
複数の脚音が聞こえたと思うと、城の中から大体10名ほどの兵士が出てきた。だが、その格好はそこらへんの雑兵と違い、煌びやかな鎧を身につけ、無駄に装飾の施された長剣を帯刀していた。
あぁ!目が、目が焼ける。
「クリス様、長旅お疲れ様でした。それでは、あちらの方を会見の間にご案内しますが、クリス様はどうなされますか?」
「ありがとう。レイモンド。私は一度自室に戻るとするわ。レックスは一足先に案内して頂戴」
「ハ、かしこまりました。おい、2人クリス様とともに自室へ護衛。残りは私とともにレックス様をご案内するぞ」
彼が、そう命令すると、すばやく恐らく近衛兵の中の女性の兵士が2人クリスについていった。
残りの8名の兵士が、俺と一緒に行動するようだ。なんで、体が俺より1回りも2回りもでかい筋肉ムッキムキの、ごついおっさんたちと、一緒に行動せにゃならんのか。どうせなら、女性のほうがいい。まぁ、無理だろうけどな。
「それでは、ご案内いたしますので、くれぐれも私達から離れないようにしてください。へんな真似をくれぐれもされないようにお願いします」
「お、おぅ分かりました」
「ご理解、感謝いたします。あと、これを。」
ここの兵士は、ずいぶんと丁寧だなー。俺って、実は有名人?って、それはないな。うん、絶対ない。そうあって欲しい。
あと、この持たされたものはなんだろうか?
俺は近衛兵に案内されるがまま城内を歩き回った。
◆◇◆
こ、ここ広すぎる。かれこれ10分くらい歩いてるけど、まだ付かない。会見のところって、城門入って、すぐの階段を上がれば付くもんじゃないの?
そんなことを思っていると、前から金髪の男がこちらへ向かって歩いてきた。周りには、数人の女の人が金髪の男を囲んでいる。
(け、リア充めが。おまえらなんか、爆発しちまえばいいんだよ)
心の中で思っていると、それを察したかのように金髪の男が明らかにこちらへ向かって歩いてきた。
その男の目は碧眼だった。
(おいおい。The 勇者って感じじゃねえか)
すると、金髪碧眼のThe勇者さんに向かって、隣にいたレイモンドさんが反応した。
「これは、勇者殿。このようなところでどうなされましたか?」
本当に勇者だったぁぁーー!!
「いえ、クリスティーナ様が、お戻りになられたと聞いたもので、一度お会いしておこうと思いまして、城門へ向かっていっていたところです。ところでそちらのお子様は、いったいどちら様でしょうか?」
「そうでしたか。こちらは今回クリスティーナ様を護衛してこられたレックス殿です」
(へいへい、お子様で悪かったね。ん?誰がお子様じゃーー!!)
と、思ったが、面倒ごとになるのは目に見えているので、俺のオリハルコンの心で抑えきった。
「では、その君がここにいるという事は、クリスティーナ様は、すでにお部屋にいらっしゃるだろうから、僕はここで。また会見で合おうじゃないか」
勇者がそう言うと、レイモンドさんがお辞儀をしていた。
彼は、一足先に会見の間へ向かったようだ。
(そういや、さっきは気づかなかったけど、あの顔何所かで見たような……まぁ、いいっか。後で思い出せばいいだろう)
少し歩けば扉が見えた。その扉はそこらへんの扉とは違い、彫刻が施されてあった。枠からドアノブまで、彫刻が施されてある。しかも、ほのかに魔力が感じられる。そんなドアをよく見ると、ゲームをしていたときによく見た魔法文字が刻まれていたのだ。
(ドアに刻まれていることから見て、入室者を制限する類のものだと思うけど、俺は、これを潜り抜けるようなものなんかもってないし。あ!あの時渡されたやつか!納得)
俺達がドアの前に来ると、勝手に扉が開き始めた。
ここって、自動ドアが多いな。と、思った俺を責めるやつはいないだろう。
そんな不埒なことを思いつつ、会見の間へと踏み出した。
◆◇◆
意外と早く会見は終わった。クリスの言っていた通りかは知らないが、紹介とかは省かれて、すぐに本題に入り、王様からありがたいお言葉をちょうだいして終わった。あまりここに居たくなかった俺としてはとてもうれしいことだった。
一応略式であったけど、正式な会見が終わったので、おれの斜め前から、玉座の近くまで左右に1列づつに並んでいた、着飾った貴族だろう思われる人たちは帰っていった。中には、ムッキムキのいかにも武人ですという人もいたが。
会見の間に残っているのは王様と、先ほど廊下(というには豪華すぎる)で出会った勇者達ご一行達がこの部屋に残っていた。
「それでは、もう一度言うが、娘を無事にここにつれてきてくれてきてくれてありがとう。大会まで1ヶ月をそろそろ切ろうかという頃に、シラクの街の冒険者ギルドから、連絡が着てよかった。そろそろ、王族として公に出なければいけない時期に入っていたからな。本当に助かった」
「いえいえ、自分は当然のことをしたまでですよ」
「おぉ、これは寛大な心を持っておいでで、そこでですが、シラクからここまで2人で来ることができるその腕を見込んで、わが国の兵士達に指導をして欲しいのだが」
あれれぇ~この展開何所かで予想していたような~
そうだ、ワイバーン討伐のときに、思った覚えがある。
丁重に断らなくては!
「すいません。私には、そのような技量はまだ身についていないと自覚していますので、その話はお断りさせていただきます」
「むむ、そうですか、そのように言われるのなら、仕方がありませんな。この件については諦めさせてもらいますよ」
ふぅ~王様が話のわかる人でよかった~
「それでは、この僕、今代の勇者、戸田勇樹と一試合させてくれないどろうか?」
ん?戸田勇樹?何所かで聞いたことがあるよーな……
―――あぁ!!俺のクラスにいた、あの、戸田勇樹か!?あの、運動神経抜群頭脳明晰容姿抜群の戸田勇樹か?そういや、あんな顔してたな。長い間あってない気がするから、忘れちまっていたよ。あと、身長が高いから。
とりあえず、なぜ、あいつがここにいる?テンプレ的に穴に落ちたらこの世界に落ちたとか、普通に召喚されたのか。
まぁ、どうでもいいか。俺には関係ない。あいつあんま好きじゃないかったし。いつも自信に満ちた顔して、身長が高いから。―――え?身長関係ないだろ?あるんだよ、これが。
「その申し出も断らせてもらいたい。自分は闘技大会に(無理やり)出なければいけないので、もしここで、怪我などをしてしまったら、出れなくなってしまう」
闘技大会に出るという事を建前に、面倒なことから逃げる。
「そうか、それはすまなかった。では、闘技大会が終わった後、機会があればできないだろうか?」
「まぁ、それくらいならいいですよ」
「それでは、大会が終わったあとに。覚えておきますよ」
戸田が言い終わると、彼らは颯爽とヘやから出て行った。
王様も、これ以上話はないようなので、俺も部屋から出ることにした。
会見の間を出てすぐ、クリスと出会い、外出許可をもらったとのことなので、一緒に出ることにした。
◆◇◆
鉄平と勇者が出て行った後の会見の間
「さて、じぃ。彼をどう思う?」
「そうですね。基本的な基礎の力は勇者殿のほうが勝っているようですが、恐らく2人が試合をした場合、レックスでしたか?彼のほうが勝つと思います」
王の問いに対して、じぃと呼ばれた執事風の男が答える。
「何故そう思う?」
以外というような声で再び問い返す。
「そうですねぇ。はっきり言えば長年の勘でしょうか。無理やり理由をつけるとすれば、アリスさんと同じにおいがしますな。圧倒的な力の持ち主を目の前にしても、圧倒的に不利な自分ひとりで乗り切るような感じです。この、私のときのような」
自分でもうまく説明できないのですが。と、少し笑いながら答える。
「そうか、それなら例年よりより大きくなるとされるあれにも、なんとか耐えることができそうだな。私の代で、アルファ族の、このセントラルを、絶えさせてはいけないからな」
「そうで御座いますね。ところですが」
「ん?なんだ」
警戒を抱きながら問い返す。
「レックス殿が、ここを出た瞬間、彼の近くに気配が1つ増えましてですね、それがなんとクリス様なのですよ」
「な、なんだと。じぃよ、何故それをもっと早くに言わなかった!!」
「王様がわたくしに質問などをされたからでしょう?」
「くッ、近衛兵よ」
「「「ハッ」」」
部屋の近くにいた近衛兵がすぐさま集まってくる。
「今すぐ、先ほどの男を追いかけよ!対象の生死は問わん!」
「何をされておいでですか」
「やつを始末するのだ」
はぁ、これは駄目ですね。この親ばかには困ったものですね。
主に対し、大変失礼なことを思っていると自覚しながらも、この考えを改める気などない。
「王様失礼します。「なんだ『トン』『バタン』」近衛兵よ、先ほどの令は取り消しだ。各自持ち場に戻りなさい」
これで、何とかなりましたね。レックス殿にはこの町を守ってもらわなくてはいけませんので、今回はたすけておきます。次は見逃しませんから。
そんなことを思っておきながら、自身も染まってきていることに気づかない。
鉄平の、大会までの平穏な日々はこれによって守られた。代わりに多大な対価を知らず知らずの間に勝手に払われていたが。
最後までお読みいただきありがとうございます。
感想をしていただけるときっとすごく元気になれると思います。
誤字や脱字の報告もお待ちしております。




