第十四話 ギルド長とのお話し
開いた扉から、豪華なドレスを着た女性が姿を現した。
でるところはでて、引っ込むところはひっこんでいる、すばらしいプロポーションの人だった。
だが、顔を見るとここ最近見たばかりのというか、毎日見ていた顔があった。
まぁ、つまりはクリスである。
「なんでここにクリス(レックス)がいるんだよ?」
「ん?なんだ、おぬしら知り合いか?それなら話が早い」
これは好都合とばかりに話を進めようとするギルド長。
「いや、俺たちは、先刻の依頼でたまたま同じ狩り場に居合わせただけの真柄なんで」
「お互いのことはまったく知らないといっていいのか?」
「まぁ、そういうことですね」
勝手に話を進めてもらっては困るので、一度話を挟んでおく。
「それじゃぁ、さっきの依頼の報告は、2人でやったことなのか?」
「いえ、依頼事体は自分個人でやりました。クリスとは、ここまで帰るまで一緒だっただけです」
本当は、少し手伝ってもらったけど、ほんの少しだけやから良いだろうと勝手に決め付け話しを進めていく。
気を利かしているのか、クリスはその間何も言わなかった。
「まぁ、そこらへんはぶっちゃけどうでもいいのだが、知り合いだったらまったく知らないやつらよりも幾分かましだろうと思っただけだからの」
アバウトだなここのギルド長。俺にとっちゃガチガチの雰囲気より断然ましだから全然いいけどな。
「それで、自分にギルド長からの直々の依頼は、あそこにいるクリスを王都まで送り届けることですよね?そして、ついでに自分が闘技大会に出ると」
直々の部分を強調したのは、ほら、なんかいやみ成分を含んでいるんだよ。
「そうじゃな、おおまかにはその解釈の仕方であっておるよ。ただ、恐らくおぬしが思っているより、この依頼はかなり重要な依頼だぞ。分かっていると思うが、決して失敗してはいけない依頼だ」
「へぇー。それはまた何故?」
失敗してはいけないのは、護衛依頼だからだろうけど、重要な依頼ってどういう意味だ?
「おぬしこの方を知らぬのか?」
「えぇ、自分は不勉強なもので」
おそらく、目をつぶっていても分かるほどの、ありえないわーとか、ウッソーー的な視線が突き刺さる。イタイ、イタイよ。
「ここの地方に住んでいればほとんどの民が知っていることなのだが…まぁ、いい。今から説明すれば良いだけの話。彼女はこの西エリエール地方を治める大国、アルファの第3王女クリスティーナ=ラグナジェリア=アルファ様なのじゃよ。これで分かったか?」
「なぁ…ッ」
まさか、少しの間だけであったが、同じテントで寝泊りし、一緒に依頼をこなし一緒にここまで帰ってきた彼女が、一国の王女様であったことと、本当の名前がかなり長かったことに驚きと意外感を隠しきれないのであった。
「そして、一巡り後にある闘技大会は、王族も出席するのだが、一国の王が出席しているのに、その娘である彼女が出ないわけには行かないのだよ。だが、3年に一回と決まっておるのはおるが、はっきりと何の季節の何巡り目にするのかは決まっていないのだ。そして、開催される月が近くなのにこんな辺境にたまたま居合わせたため、王女様を王都までの護衛依頼をそろそろ貼り出そうというところで『俺がいたわけですね』…その通りだ」
最後の部分を俺に取られ、少々落ち込むギルド長。
ちょくちょく思うけど、この人ちょっと子供っぽいな。
「こんなこと聞くのは変だと思っているんですけど、もし俺がいなかった場合どうするつもりだったんですか?」
「わし達が、信頼できる商人の隊に身分を隠して潜り込ませ、ここで商隊の護衛依頼として貼り出すつもりだったが。もちろん適正のランクは、平均Bランク以上のベテランパーティーに任せるつもりだった。最悪の場合わし直々に送るがの。」
ワァハッハッハッハと、笑いながら言う。
やはり、王族というのは大変重要に扱われているんだなと、再認識させられた言葉であった。
「まぁ、これでこちらからの用件は終わりだ。退室してもらってかまわないぞ。というか出て行ってもらわなければ困る」
一方的に呼びつけておいてちょっと扱いがひどくないか?とか、ちょっと考えてから言われたとおり退室しようとする。
「あぁ、今回の報酬をまだ渡していなかったな、今から受付へ行けば恐らく渡してくれるだろう」
恐らくって何だよ。確実じゃないのか?
まぁ、たぶんちゃんと報酬はくれるだろうと見切りをつけて、部屋から退室する。
すると、今さっきまでいた部屋から、受付嬢とギルド長の会話の声が聞こえた。しかも、とても信じられないような内容が飛び出してきた。
「ギルド長も、退室してください!!『いや、ここわしの部屋だし』今から、彼女が着替えられるんです。ギルド長は、王女様の着替えの場を見た変態とのレッテルをこれからずっと貼られたいのですか?『わかったのじゃ、出て行くからこれ以上この老いぼれをいじめないでくれ!』ギルド長はまだ、54歳のはずですが?まぁ、いいです。ここから退室してくれるのなら」
という、会話が聞こえたんだ。
受付嬢さんすげー。
おぉっと、なんか変なところで感心してしまったが、気を取り直して受付へ行くとしますか。
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