第十三話 依頼報告
「よぉっしゃーーやっと街に着いたーー」
「よしなよ。みんなが見ているじゃないか」
「何を言ってるんだ。あの激闘を制してから、かれこれ5日間もかけてやっとここまで帰ってきたんだぞ。少々叫ぶくらいいいじゃないか」
クリスが、頭を抑えて首を振り、「あぁ、こいつ分かってないなぁ~」みたいな雰囲気をかもし出している。
「ここで、そんなことされたら、通行の邪魔になるだろう?」
「なるほど。それならそうと言ってくれればいいのに」
「普通考えれば分かるだろう。なんだ君の頭は飾りかい?」
「飾りとはなんだ、飾りとは。まったく持ってその通りだよ」
「そうだろ、ちが……わないのかい。やっぱり本当に貴方は馬鹿だったのね」
おれの、学力は全国学力調査により、なんと輝しき第5253/5300(人)なのだよ。自分より下が50人もいないという。
いや~でも、あのテストは難しいよな。全然わかんねえんだよ。
白紙率9、8割を超えるおれの頭の悪さを馬鹿にするんじゃねぇ。いや、元から馬鹿なんだがな……
自ら認めるとなんか悲しいな。
その代わりといってはなんだが、ゲームのほうの知識は豊富だぜ。インターネットを開いて、公式サイトやら、攻略サイトetc……を、毎日のように見ていたからな。親からは、その一生懸命さを、1割でもいいから、勉強のほうに割いてくれないかねぇ~とか言われていたな。まぁ、割いたことなんて夏休み、冬休み等の長期休みの宿題が、溜まりに溜まったときか、同じく長期休みの宿題を少しでも早く消化して、1時間でも多くゲームや、趣味をするために頑張って時くらいしか思いあたらねぇけど。
使っているだけ、マシなのか?
まぁ、いいや。
「速くギルド行こうぜ。早く風呂に入りてぇ」
「ええ、そうだな。速く行きこうか」
いつもより2割り増しの速さで歩いていく。ギルドの前までは。
「ぜぇぜぇぜぇ。し、しぬぅ。心臓破りの階段名前に恥じないしんどさ。本気で一回ギルドに抗議してみようかな」
「な、情けないな。こ、これ位のか、階段くらいで息を切らすなんて」
こやつ、気づいているのかな?どっちも同じくらい息を切らしているんですよ。
「ふぅ、やっと落ち着いた。よし、んじゃぁ中に入りまっせ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。はぁはぁ、すぅーふぅ~。行きこか」
一度深呼吸をすると、落ち着いたのか行動を促してくる。
ギィー
ドアが少し悲鳴を上げて、道を開ける。
中には、少しの間見ることのなかった光景が広がっている。
昼間から酒を飲んでいる者。冒険者同士で喧嘩を始めているやつらetc……多種多様だ。
俺たちは、周りには一切目もくれず一直線にギルドの、カウンターの方へ向かう。
「こんにちは。今日は何のご用事でいらっしゃいましたか?」
「依頼の遂行完了報告と、報酬の受け取りだ」
俺の代わりに、クリスが受け答えをする。
「それでは、ここにご自身の冒険者カードと、今回受けられた依頼書と、その依頼の依頼成功の証拠の品をお出しください」
0円の営業スマイルでにっこりと微笑みかけながら、何所からか出してきたトレーを出す。
クリスは迷わず依頼書と証拠の品である、ホワイトワイバーンの鱗をだす。
「はい。ホワイトワイバーンの1頭の狩猟ですね。鱗が本物か確かめますので、少々お待ちください。………数分後………本物でしたので、依頼は成功とさせていただきます。報酬金の10,000,000Gです。ここでお確かめになってもかまいませんよ」
ジャラジャラと音を立てながら中にたっぷりのGが入ったと思われる麻袋が出てこずに、10枚の紙がカウンターの下から取り出された。
おいおい、報酬の10,000,000G何所から取り出した?いや、カウンターの下なのだが、あんなところに保管していていいのか?簡単に盗めそう。盗まないけどね。しかも、手元を一切見ずにきっちり、ジャストに金券らしきものを10枚取り出した。受付嬢さんすげー
「次の方どうぞ~」
病院かよ!!という、突っ込みを内心しておきながら、報告をし始める。
「ええっと、依頼の成功報告にきました」
「それでは、ここにご自身の冒険者カードと、今回お受けになった依頼書と、その依頼書の依頼成功の証拠の品をお出しください」
クリスのときと同じように、0円の営業スマイルを振りまきながら、これも何所からか出てきたトレーを出してくる。
クリスと同じようにそこに依頼書を置き証拠の品を置き、冒険者カードを置く。
ギルドの受付嬢が、証拠の品を見ると少し驚いたような顔をする。そしてその下に置いた依頼書を見て、あっている事を確認する。そして俺の冒険者カードを見てから、一瞬にして凍りついたように固まる。そしてたっぷり10秒ほど固まってから、「少し失礼します。ギルド長を呼んで参ります」と言って奥のほうへ消えていく。
~~~約5分後~~~
奥から先ほどギルド長を呼びに行ったギルド嬢さんが帰ってくる。
「申し訳ありませんが、ギルド長室までご足労お願い申し上げます」
たぶんどこかでギルド長さんと話をする時が来ると思いたくなかったが、思っていたので限られた人にしか知られない様に個室で話すことが出来るのは好都合だった。
~~~約1分後~~~
ある一室の前で不意に止まる。
コンコン
「開いておるよ」
「失礼します」
受付嬢の方が、ドアの上に「ギルド長室」と書いてある部屋にノックをし、一礼をしながら入っていく。
俺も真似てはいる。
「エンデからの報告を聞いたぞ。おぬしがこの依頼を受けていった輩だな?」
俺の前に一枚の依頼書をひらひらさせながら現れた人物は、おそらくこのギルドのマスターだろう。
一番初めに目に付くのは、筋肉隆々のボディービルダーよりも圧倒的にある筋肉の量。まさに筋肉の塊。某狩猟ゲームのやけに臭い猿、バ○コンガみたいな感じと言えば分かりやすいだろうか?
顔の堀は深く、なんかものすごく厳つそうな顔立ちをしている。
身長もかなり高く、すごく自分のコンプレックスをグサグサ付いてくる人であった。
ただ、想像していたよりずいぶんと若い見た目だった。大体40~50歳くらい?
髪の毛の色は、まだまだ色がしっかりと残っており、髪の毛の色は真っ赤で、目の色が茶色だった。
肌の色も、よく焼けた小麦色をしていた。若々しい!!
「は、はぁそうですが。それがどうにかなさいましたか?」
「“それがどうにかなさいましたか”か、おぬしはことの重大さが分かっていないようだな。おぬしは、一人でSSランクの依頼を受けて、そしてその依頼を見事完遂して帰って来よった。SSランクの依頼は、ギルドの誇る最大戦力のSSランクの冒険者であっても一人ではちと厳しい依頼なのだ。
しかも、ホワイトワイバーンの素材は、ほぼ市場などにも出回ることがない素材だ。しかも、この角の切り口からして、切り取ってから、それほど時間が経っていないように見える。偽造の疑いの余地はなしだな」
「それで、自分をどうなさるおつもりなのですか?」
「がはははは。いきなり核心を付いてきよった。普通おぬしと同じランクのものは、そこらへんでびくびくしておるものなのだがな。
そこで本題なのだが、おぬしSSランクの冒険者にならぬか?まぁ、本部のほうにわしから有望そうなものがおるというだけなのじゃがな。どうだ?」
「そのお誘い誠に光栄なのですがお断りさせていただきます」
「ほぉ、してその理由とは?」
「第一として、目立ちたくないからです。第二として、めんどくさいからです」
どちらかといえば、第二のほうが大きい気がする。あれ?最初となんかが違うような気が…?
「目立ちたくないか。唯もうすでに第一の理由は、庇いようがないな」
「何故ですか?」
「おぬしが、報告のときにホワイトワイバーンの角を出しているところを目撃しているものが多数いる。そこから、爆発的に広まっておるよ。150cmにも満たない小さな冒険者が、ホワイトワイバーンを倒したという事はな。せめて複数人で報告に来ておれば、少し目立つ程度で済んだというのに」
ナンテコッタ
すでに手遅れだったとは。
しかも、角を出しているところを目撃されたという事は、見た人は俺が複数同時狩猟に行ったことが分かっているかもしれない。基本角類は、一体につき一本しか生えないため、何頭倒したか数えるときによく使われる証拠の品だからだ。
「ただ、めんどくさいといわれてしまえば、どうしようもないが、せめて報告しておくだけでもいいか?」
「はぁ、もういいですよ、それくらいなら」
「よし、そうか。それなら、今から出来るだけ早くセントラル、王都セントラルへ向かってくれ」
「また、これは何でですか?」
「あと一巡りもすれば、そこで闘技大会が開かれるからだよ。3年に一度のセントラル闘技大会。この大会は、知っての通り唯一のSSランクになることの出来る可能性がある大会じゃ。ギルド長又は現役のSS冒険者に推薦された者はこの大会に出なければいけないのだ。権利ではなく義務だ」
と、少々強い口調で言ってくる。
ナ、ナンテコッタ
この強い口調が、今は猛烈にむかつく。
「そ、それじゃぁ報告もしないでください」
「すまんが、すでに報告は済ませておる」
なんだってぇーーー!!
この人は、ずっと俺と話していたはずなのに、そんな暇がいつあったのだ!?
「おぬしがこの部屋に入ってくる前から、報告は済ませてある」
ん?この人さらりと変ことを言わなかったか?え?自分がこの部屋に入る前にすでに済ませてある?
俺に拒否権ねーじゃん!!!じゃぁ、聞くなよ!!
こうなれば自暴自棄だ。
「分かりましたよ。行けばいいんでしょ?行けば」
行くだけ行って、そっこーでまけたらいいんだ。そうだ、そっこーで負けたら、目立たない。
「納得してくれてありがたい。そこでだが、セントラルに行くのなら、一緒に連れて行って欲しい人がいるんだが、いいか?」
「別にいいですけど、誰かを教えてもらわないと、返事のしようがないですね」
「フム。それもそうだな。入ってきてもらえるか?」
ここまで道案内をしてくれた受付嬢さんに一言。
10秒もしないうちに、扉の外に一人分の気配が増えたことがわかった。
そして、扉から出てきたのは----------ドレスを身に纏ったクリスであった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
ベタな展開でしたね。
ギルド長との会話はなかなかにしんどいですね。