第十一話 ワイバーン討伐依頼その3
クリスSide
私はふと思い考える。
(ついつい一緒にやろうみたいなことを言ったけど、彼は本当にホワイトワイバーンを、私がダメージを与えていたとはいえ、一度でも撃退したのだろうか?本当は自分を落としいれるために嘘をついたとか。自分でいうのもなんだけど、かなり美人だしな。
いやでも、本当にそのつもりだったのなら、そもそも助ける必要はない。まず、私になにか恨みがあるようには見えないし)
考えても、一向に解決へ向かわない。
それなら一度彼の実力を見ればいいだけの話。
本当に彼がDランク程度の実力しかないのなら、見捨てればいい。
ひどいと思うかもしれないが、それが、冒険者の世界。
依頼の難度に対して、相応の実力がないものは、死ぬしかない。
弱肉強食
これが、この世界の理であり、たった1つの理だ。
だが、Dランクの彼が何故あの依頼を受けられたのかが疑問だが、彼自身も分かっていないようなので、無視していても大丈夫だろう。
「クリス、速く行こうぜ」
「もう少し待ってくれ。まだ、君からもらった道具の整理が仕切れていないんだ」
呼ばれたので、できるだけ早く準備を終わらせてもう一度やつのところへ向かいますか。
次こそは勝つと心に誓って。
レックス(元、鉄 鉄平)Side
クリスを呼んでから、すぐに彼女がテントから出てきた。
「よし、んじゃ行こうか」
「少し待って」
「ほい?」
折角意気揚々と行こうとしていたところで、何故か呼び止められた。
「私たちお互いのこと実力とかを含めて、まったく知らないじゃないか。そんな状態でホワイトワイバーンの所へ行って大丈夫なのか?」
「さぁ~、わかんねぇよ。でも、一応目標は各個撃破の方向で行ったら大丈夫じゃね?」
「無責任なやつ……じゃあせめて大まかでもいいから作戦くらいは決めておくべきじゃないのか?」
「いや、大丈夫だから」
「その自信はどこから出てくるのよだよ」
なんか、呆れた感が漂ってくるのは何故だろうか?
「まぁまぁそこらへんはおいておいて。ちゃっちゃとやつを狩りに行きましょうよ」
まるで某狩猟ゲームの世界に入ったかのような気分だ。
防具と武器を片手に、狩場を駆け回るハンターのようだ(もちろん道具は所持しています)
そしてモンスターと遭遇。
己の肉体と技術を駆使して、時たまに道具をからめ、徐々にモンスターを追い詰めていく。
そしてついに討伐。
モンスターから素材を剥ぎ取る。その素材が自らの欲していたものであったり、レアなものであった時の感動はすさまじいものである……
「お~い、大丈夫か?目覚めなさーい」
おっと、マイワールドに入り込んでいたようだ。
気をつけなくてはいけないな。
「あぁ、すまん。考え事をしていたんだ」
「そう、じゃあ作戦を考えなくていいというあなたを信じてすぐに行こうか」
「そうだな。すぐに出発しようか」
俺は別にいいが、作戦を考えずに単体でAランクのモンスターホワイトワイバーンと戦って大丈夫なのだろか
まぁ、俺から言い出したのだが。
すると突然ふわぁっと風が肌をなでる。
何を思ったのか、クリスが空を見上げる。
「いや、別に私たちから向かう必要はなくなったみたいだな」
「それってどういうこと?」
「上を見てみな」
グワァァァァァァァァァァァァ
上を見上げると、視界いっぱいに両翼を開いた白い飛竜―――ホワイトワイバーン―――が飛んでいた。
その巨体によって、自分たちに降り注いでいた太陽の光が遮られる。
そしていきなりそいつは口の周りに魔方陣を展開させる。
口を閉めていてもわかる、隠しきれない白い炎が閉めているはずの口からくすぶる。
刹那の瞬間やつの口から、白い炎が的確に俺たちを狙って空から降り注ぐ。
俺は、その白い炎を防ぐべく《魔法反射》を発動させる。
すると俺たちに向かって吐かれていたホワイトファイヤーが、180度向きをかえ、ホワイトワイバーンのほうへ帰っていく。
飛びながら吐いていたためか、帰っていった炎は当たらなかったが、代わりに炎では相手に傷を負わせることが出来ないと判断したのか、やつが地面に降りてきた。
そして地面に降り立った瞬間いきなり俺たちに向かって突進を始めた。
ドスドスドス
ザ、ザザーーー
もちろんそんな攻撃は掠りもしないが、勢いのついた自らの体を己の脚だけで勢いを殺したその脚力はすさまじいものだった。
「オリャァァァァァァァァァ」「ハァァァァァァァァァァァ」
突進が終わり、少なからず出来てしまう隙を狙い、自分の武器で切りかかる。
隣では、クリスが自分と同じように切りかかっていた。
重量のある武器からでる重く鋭い斬撃は、硬い鱗や強靭な皮を引き裂きあるいは叩き潰し、その下にある皮膚下組織に届く。そして、この剣から出る闇属性の炎により肉を焼かれる。
ギャァァァァァァァァ
流石のホワイトワイバーンも、この攻撃は効いたらしく苦しそうな声を上げる。
隣では、自分の一撃必殺の攻撃とは正反対ではあるが、無数の斬撃が繰り広げられていた。
一撃目の攻撃は、やつの鱗を弾き飛ばし、二撃目の攻撃は鱗の下にある皮膚を切り裂く。
そして三撃目からは、今までにつけた傷のところを狙いその下にある組織に傷をつける。
剣に纏わりついているおそらく風の魔力が、剣の切れ味を高め、さらに深くやつに傷跡を残す。
そこまで攻撃をしたら、やつが硬直から抜け出し、体に力を込め始める。
すると、やつがいきなり後ろへ向かって飛ぶ。
いつの間にか口の周りに展開していた魔方陣から眩しいくらい光っている炎が2人に向かって吐き出される。
だが、その頃には、2人ともホワイトワイバーンの下から出ており、その攻撃は空を虚しく舞う。
次の瞬間、ついさっきの炎の光より、さらに眩しい光が目の前に広がる。
そして空を飛んでいた、ホワイトワイバーンが目を焼かれ落ちてくる。
おそらく、光玉と呼ばれる物が投げられたからだろう。
ちなみに光玉とは、割れたり圧力を加えられると少し時間を置いた後激しく発光する、閃光石が入った球状の物体である。
ちなみに、発光させるために投げる前に一度強く押してから投げないといけない。
ただ、少しの圧力で、閃光石が発光してしまうので入れものは必然的に少しは丈夫なものになる。
落ちてきたホワイトワイバーンの頭に向かって、魔力をいつもよりだいぶ多めに込めた一撃をお見舞いする。
ただ、頭の鱗や皮膚だけは、一番守らなければいけない場所なためか、先ほど切ったお腹に近い部分よりずいぶんと硬い。
まぁ、それでもある程度刃は届くわけだが。
という訳で、めちゃくちゃ切ってます。
いや、斬ってます。
~数十分後~
そんなこんないろいろありまして、ずいぶんと相手は満身創痍な感じです。
体中に残る大きなものから、目を凝らして集中しなければ見えないくらい小さな傷。
それも、一目見てずいぶんと新しいものから、かなり前につけられただろう思われるものまでいろいろ沢山ある。
ちなみに、新しくて大きい傷は自分のつけた傷。
比較的小さな傷はクリスがつけたものだ。
古い傷は、誰がつけたか分からない。
だが、敵も攻撃を受けてばかりではなく、時には反撃をしてきている。
俺はほとんど避けてはいるが、少々掠ってしまったものもある。
クリスも同じような感じだ。
ギャァァァァァァァァァ
相手は、自身が負けることを悟ったのか、一度天空に向かって吠え、防御を捨て攻撃に全ての力を注ぎ込み体全体に白い炎を纏わせ空を滑る様に滑空してくる。
「フ、一矢報いるってか。いいぜ、その勝負この鉄 鉄平が受けてやる!!」
俺は、剣を構え振りかぶり力を集め、こちらに向かって一直線に向かってくるホワイトワイバーンに向かって振り下ろす。
ガキィーーン
一瞬硬質な音が当たりに散らばり、その音は一瞬にして消え去る。
ドスン
ホワイトワイバーンが地上に落ちる音によって。
「てめぇ、いい男じゃないか。楽しい戦いだったぜ」
まぁ、本当にこいつの性別が♂だったのかは分からないが。
「やったね。本当に作戦なしでも倒しちゃったよ。貴方って本当にすごい実力者だったのか。
あれ?でも確か貴方はDランクのはず。あんな鋭い攻撃、Sランクの人でもそうそう出来るものじゃなかった。でもギルドカードも見せてもらったし、ちゃんとDランクって書いてあったし…」
また、考え込んでいるよ。
実は、能力値平均Sなんですぅーー!!って、告白してみるか?
いや、だめだ。なんか面倒事になりそうだ。
「実は私、この国のお姫様なの。という訳で、私を王都まで送ってくれませんか?」
とか言われたりして、この国の王都に行って、王様にお姫様届けたら、ご褒美もらってっと。
そこまではいいけど、お姫様が「このお方は、ものすごくお強いのですよおほほほほ」とか言われて、いつの間にか騎士団の人達と模擬試合してて、負けるの嫌だから、適当にあしらってから勝ったら王様がいて「おぬし本当に強いの~」とか言われて、「ちと、わしからの依頼を受けてくれんかのぉ~」とか言われて、
泣く泣く王様直々の、ちょー難しい依頼とかされたら嫌だしな。
って、考えすぎか。
クリスが本当にお姫様と決まったわけじゃないしな。
んじゃぁ、さっさともう一匹狩りますかぁ。
すると、最近こんな感じがあったようなやわらかい風が肌を撫でた。
「もしかしたらな……」
上を見上げると、案の定最近見たシルエットがそこにあった。
その最近見たようなシルエットの持ち主は、ゆっくりと地面に降り立ち、咆哮した。
グワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
先ほどのホワイトワイバーンより長く、且つ大きな声で威圧感がある咆哮をした。
俺たちは一瞬だがその威圧感に圧倒される。
それくらいの重圧があったのだ。
そして目の前にいるホワイトワイバーンは、先ほど俺が倒したホワイトワイバーンの亡骸を見て、目に見えて怒り出した。
体中の鱗は逆立ち、口からは魔方陣を展開させてもいないのに常に炎が燻る。目は怒りに満ちた目になり、眼光が先ほどまでが切り出しナイフのような鋭さならば、今は剃刀の刃のように鋭く今にも体中を切り刻まれそうなものになった。
「そういえば、ホワイトワイバーンは夫婦になると、普段より強くなるタイプのモンスターだったな。愛妻家、愛夫家とでも言えばいいのか?愛の力で私(俺)は強くなるんだーー!!とか言っていそうなやつだ。そういうやつに限って相棒を失うと、怒りでめっちゃ強くなるんだよ。くそ、めんどくさいことになった」
ちなみにホワイトワイバーンは、単独でAランク。夫婦になるとSランクにまであがる。まさに愛の力。その状態から夫または妻を失うと、怒りでS+にまで上がる。
え?
+がついただけじゃないかだって?
この「+」をなめちゃいけませんよ。
これが付くだけで、AランクとBランクくらいの力の差が出るんだよ。
恐ろしいんだよ。たかが「+」されど「+」だよ。
でも、こういう風にならなくちゃ戦いは楽しくない。
さぁて、どういう風に殺ってアゲマショウカ?
最後までお読みいただきありがとうございます。
あれ?
主人公がバトルジャンキーになってしまった…
そんなキャラじゃなかったはずなんだけどなぁ