第十話 ワイバーン討伐依頼その2
「ん、んーーーー
あれ?ここはドコだ?」
私は、体を起こし周りを見てみる。
普通のテントのようにしか見えない。
だが、私がいつも使っているテントよりも一回りから二回りほど大きいものだった。
すると、ある発見をした。
身長が目測150cmもない1人の男の子が1メートルも離れていないところで寝ているではないか!!
私は、なぜか人知れず赤面した。
私は、誰にも見られていないだろうが、思わず顔をうつむせてしまった。
そうすると、私の体全体に包帯が巻かれているのが見えた。
もちろん胸や、股間のところも。
しかも、お腹の所に少し赤みがかっていた。
私はそれらを見た瞬間、昨日のホワイトワイバーンとの戦闘の記憶を思い出してしまった。
それも鮮明に。
特に最後の気を失う前に受けた、突っつきの際の映像は、今思い出しても胃の中には何も入っていないが、何かを無理やりにでも吐いてしまいしそうだった。
そしてそこまで思い出して気づいた。
「何故私は生きているの?」
と
確かに私は、やつの白い炎を纏った一撃必殺と言っていいほどの過剰の殺傷力の塊を受けたはずだ。
そのときは、奇跡的に一命を取り留めたが、次の瞬間には、意識が遠のいていくのがハッキリとわかった。
ホワイトワイバーンは、ワイバーン種の中でもかなり賢い部類に入る、ホワイトワイバーンがあの格好の機会を逃すはずがない。
となれば、あの私よりも小さい彼が助けてくれたのか……?
いや、今はまだ分からない。勝手に決め付けるのもよくないし。
彼が起きたら、体に影響のない程度に質問してみるか。
私は、そう決めた後少しでも早くこの傷を癒すために再び眠ることにした。
「ふわぁぁぁ~~~ん、んーー
ふぅ、よく寝た」
俺は、一度起き上がり、すばやく且つ音を出来る限り立てないように着替えた。
そして、すばやく着替えた後、昨日助けた美女の元に行く。
「すぅすぅ」
よく眠っているようだ。
俺は、彼女が眠っていることを確認してから、テントの外に出て、顔を洗い少し残っていた眠気を吹き飛ばし、朝食の準備に取り掛かる。
朝食の準備といっても、前露店で買った、携帯食料を出してかじるだけなのだが。
ガブガブ
ゴクゴク
ぷはぁーー!
口の周りについた、油を指で落とし、渇いた喉を水で潤す。
するとそこで、先ほどまで寝ていたはずの彼女がテントから出てきた。
足取りは決して軽いものではない。
「おいおい無理はするなよ」
一応注意だけはしておく。
「大丈夫だ。一応歩けるくらいには回復しているから」
彼女はそう言って、俺の正面に腰をかける。
そして、自分のポーチから、携帯食料と水を取り出しおもむろに食べ始める。
自分と違って、がっつくようなことはしなかったが、それでも、少し食事のマナーを習って人から見れば、かなり大雑把な食べ方だった。
彼女も、喉が渇いたのか、食べ終わった後水を喉に流し込む。
そして、開口一番に言い始める。
「助けてくれてありがとう。とても感謝している。貴方がいなければ、きっと私は今頃ここにいることはなかった。本当にありがとう」
「いや、こっちももっと早く助けにはいっていれば、君もあんな重症を負うことはなかっただろうし」
「それは、もしもの話だ。今私は、貴方が助けに入ってくれたことに対して礼を述べているの。助けてくれたことだけでも、本当に感謝している」
「あぁ、そういうことならこっちも気が楽だよ」
「そうそう、私の名前は、クリスよ。これからもよろしく頼む」
「あぁ、自分の名前はレックスだ。名前で呼んでくれて全然かまわない。これからよろし……く?それってどういう事だ?」
「え?私を助けた時にここにいるという事は、レックス、貴方も私と同じ依頼を受けたんじゃないか?」
「いやいや、自分がここにいるのは……あれ?なんでだ?」
「依頼書を見たらどうだ?」
「あぁ、そうだな。ちょっと待ってくれよ。あぁ、あったあった。えぇっと、依頼内容はっと」
"依頼"
ホワイトワイバーン2頭の討伐、または撃退。ちなみに、討伐のほうが好ましい。
"場所"
龍谷
"報酬金"
20,000,000G
「へぇ?」
間の抜けた声が、彼の口から漏れ出した。
確か、いや確実に自分はこの依頼はDランク依頼が貼ってあるところから取ってきたはずだ。
本当に自分がこの依頼を受けたのならば、難易度は軽くAランクは越す、いや、場合によってはS、もしくはSSランクの依頼になるはずだ。
到底Dランクであるはずの自分が受けることの出来る依頼ではない。
しかも、その前にこんな依頼が、Dランク依頼が貼ってあるところにあって言い訳がない。
というか、“討伐のほうが好ましい”って、これって絶対、討伐して来いよってことだよな?
「どうした?」
彼女―――いや、もうすでに名前を教えてもらっているのだからここはクリスと言おう―――が、俺の手元にある依頼書を覗き込む。
「!!
レックス、失礼だけど冒険者ランクどれくらいなんだ?」
「自分は、Dランクだけど「なんでDランクが、このSランク、もしかするとSSランク相当の依頼を受けているのだ!?」おかしいですよね……」
続きを言う前に、先に言葉を言われてしまった。
「私が受けた依頼は、Aランク、ホワイトワイバーンの1頭の討伐または撃退の依頼だ。私がAランクになってやっとギルドから許可が降りた依頼なのだ。何でDランクの貴方が私より上の依頼を受けているの!!」
「いや、な、何でだろうなぁ……。でも、ちゃんとギルドで手続きはしてきたぞ」
「あれ?でも、貴方の言っていることが本当なら、貴方はどうやってホワイトワイバーンの攻撃を防いだの?あいつの攻撃は、Dランクくらいでは防ぎきることなんか出来ないはずだし、あれ?もしかしてあの時攻撃してこなかったのかな?いや、あいつはそんなことはしないだろうし。いやでも……」
って、聞いてないし。
「おーい。カムバック」
「うん、そうだな」
自分の中で、結論が出たようデスネ。
「貴方がいたから、私が助かった。これが今私に分かるこだ。だから、レックス。私と一緒に、依頼を手伝ってくれないかい?」
「え!?
別に、自分もホワイトワイバーンの討伐か撃退が何故か依頼内容になってるし、手伝う分には全然いいんだけど、ギルドのルールを破っていないか?」
「大丈夫だ。きっと。自分1人では遂行できないと思ったから、偶然近くにいた、冒険者に手伝ってもらったって言えば」
「すごい心配なんですけど……。
まぁ、いいっか。本当に1人では無理そうだし。では、一緒にやりますか?」
「そうね、一緒に頑張りましょうか。でも、先にこの体をどうにかしない、とね」
彼女は、苦しそうにおなかの部分を抑えながら言う。
「う~ん、どうしよう。クリス、ポーション残ってる?」
「いえ、ホワイトワイバーンと戦ってたら、底を尽きたわ。ポーションだけじゃなくて、ほかの薬草やらもね」
「じゃあ僕のを分けるから、これを飲んで回復して」
僕は、アイテムポーチに入っているハイ・ポーションが入っているビンを彼女に差し出した。
「!!
なんで貴方が、こんな高いものを?いえ、ありがたくもらうわね」
驚いたのは、俺がDランクの冒険者だと知っていたためだろうか?
彼女は、ビンの中に入ってる液体を一気に飲み干す。
すると、体の痛みが消えたのか、顔が強張ったものからずいぶんやわらかい表情になる。
ずいぶんと傷が癒えていたようでよかった。
「んじゃ、依頼を遂行しますか」
「そうね、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょ」
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