第九話 ワイバーン討伐依頼その1
話の中で出てくる医療的なことは、作者の不確かな記憶ですので、鵜呑みにされないようにご注意してください。
でわ、最新話どうぞ!!
「グァアアアア」
右から来る犬の様な姿をしたモンスター―――ブルドッグの攻撃を余裕を持ってかわしながら、すれ違い時に一撃をおみまいしてやる。
たった一撃でブルドッグだったものは、首から上が体から離れる。
「ふぅ。
これでここ3日間で何度目だ!?」
質問をしても、答えが返ってくることはないと分かっているが、それでも口に出したくなる気分だ。
ちなみに、街を出てからこれで約30回目の戦闘である。
結果だけを聞くと少ないと思うかもしれないが、まだ街を出てから、3日しか経っていないため、かなり高い遭遇率だ。
―――まぁ、ゲームであれば、もう少し多いだろうが―――
「くそぉ結構日にちたったけど、まだ龍谷につかんのか?いや、地図ではもうすぐでつくな。
もう少し歩いたら休憩するか」
サクサク
周りの音は、自らの足音のみ。
周りは、驚くほど静かだ。
「転移が使えたら、もっと早く着くねんけどな~魔法使われへんから、転移使われへんし。
いや、でも、龍谷のことを全然知らんから、どっちにしても同じか」
転移を使うためには、行く場所のことを頭の中に、明確に想像しておかなければ、一生次元の狭間に漂う羽目になってしまう。
結構命掛けな魔法なのであるが、ここではそんなことは発見されていないので、頭の中で場所を思い浮かべるだけで、一瞬にしていきたい場所にいける魔法として認識されている。頭の中で、イメージがちゃんとしていれば問題ないのでそんなことを調べようとする人がいない。
歩みを進める。
少し上り坂になっていたところを上りきったところで、一気に視界が開けた。
周りを見れば、そこら中に飛び回っている飛竜の姿がそれこそ山のようにいた。
飛竜は、一匹が元から大きいため、そこまで数はいなくても山の様になるのだが、ここにいる飛竜の数は、大きさを1回りから2周りほど小さくしても、目の前に積めば、山のようになるのは見るだけでも分かる。
「ギィヤァァァァァァァァァアアアアアアアアア」
声のするほうへ向いてみると、目の前に体の鱗が真っ赤なで綺麗な紅の飛竜が飛んでいた。
「ほほぉ。
目の近くで見てみると、まっことに綺麗な鱗じゃな~」
いきなりの飛竜の登場で、何かがおかしくなってしまったようだ。
「グゥァァァァアアアアアア」
「うわぁ、あぶねぇなこの野郎」
すると、いきなり目の前の飛竜が、いきなり俺に向かって火を吐きやがった。
しかも、チョー巨大な火の玉。
分かりやすく言えば、ドラゴン○エストに出てくる、メラゾ○マや、下手したら、メラガイヤ○位の大きさ。
もちろん、その吐かれた火は問題なく回避するが、回避をするため、少し意識を目の前の飛竜から、飛んでくる火の玉に移したところで、視界の端で飛竜が自ら突進して来るところが見えた。
空中を滑るかのごとく。それも、かなりのスピードで。
この状態では、突進より、滑空といった方がいいのかもしれないが。
そんなことは置いておいて、まずはこの飛んでくる飛竜をどうにかしなければならない。
俺は、まず、すばやく背中に背負った黒の大剣を、鞘代わりにしている、布から抜いた。
そして大剣を前に構え、襲ってくる飛竜に向かって大剣に魔力を込めながら、飛竜の頭を狙いながら大剣を振る。
この間、僅か2秒フラット
対する飛竜の方は、対応されるとは思っていなかったのか、一瞬スピードが落ちた。
だが、すぐ立て直し、またトップスピードにまで戻る。
この間鉄平と同じく2秒フラット
その刹那の瞬間、鉄平の振った大剣と、飛竜自身がぶつかり合う。
ガン!!
すさまじいほどの音を立てながら、勝敗はつく。
赤い飛竜の方が、鉄平の放った一撃に耐えることが出来なかったのか、空中でバランスを崩しながら、地面へ落ちていく。
「はぁはぁはぁふぅー緊張ものだよあれは。
てか、何だあれは。いや、ちょっと待てあれは知ってるぞ。えぇっと確か、あぁ、そうだあいつはレッドワイバーンやったな。
確か特徴は、体が真っ赤で、火を吐いて、時々空中を滑空してくるモンスターだったな。
一番めんどくさいのは、空を飛んで、空から火を吐いてくる攻撃やったな。剣士の俺にゃぁしんどい相手やったな。うん、初めてのときは、あいつをよく倒せたと思ったもんだよ。
じゃなくて!!問題は、何でBランクのあいつがDランクの依頼の所に出てきてるんだよ。意味が分からん」
ここでどんな事を言っても何も問題の解決にはつながらないが、それでも叫びたくなる気分だった。
キィンキィンカァン
すると、小さく刃と何か硬いものがぶつかり合う様な、硬質な音が遠くから聞こえてきた。
(ん?誰かがいるのか?)
彼は、そう思いながら、音がしたほうへ向かう。
音がした方へ足音を忍ばせて歩いていってみると、そこには、1人の身長目測165~170cmの見た目16~18才位の女の子が翡翠色の腰までありそうな長い髪の毛を後ろでひとつに纏め、剣を持ち目の前の巨大なモンスター―――白い飛竜、ホワイトワイバーン―――に向かって戦っている姿であった。
しかも、かなりの美女であった。
だが、男にとってはかなりうれしい場面であるのに対し、鉄平は少し、いやかなりコンプレックスを踏みにじられるような気分になった。
(くそ、あの娘俺より身長がたけぇ)
ゴォン
グハァ
そんなことを思っていると、目の前でホワイトワイバーンと戦っていた美女は、攻撃を避け損ねたのか、連続で出される突っつきを鈍い音を立てながらもろにくらっていた。
突っつきが当たった際、口から血を吐いてしまっている。
また、元の体重が軽いのか、それとも衝撃を少しでも和らげるためか、ホワイトワイバーンの攻撃をくらった彼女は、大きく後方に吹っ飛び、大きな音を立てながら地面に叩きつけられる。
だが、途中で意識を失ったのか、受身も取らず、少し待っても地面から立ち上がらない。
すると、ホワイトワイバーンはここで彼女の息の根を完全に断ち切るためか、口の周りに魔方陣を展開させ、魔方陣に魔力を装填する。その直後、口から白色の炎を倒れている美女に向かって吐き出す。
一瞬で、彼女が危険な状態であることを察し(誰でも分かると思うが)、ホワイトワイバーンが吐いた炎を止めるべく行動する。
そう決めた俺のそこからの行動は、速かった。
コンマ1秒で、スキル《移動速度3段階アップ》を発動させ、その2秒後には、炎と彼女の一直線上に立ち、そこでスキル《魔法反射》のスキルを発動させ、その後、瞬き一回分もない後、ホワイトワイバーンが吐いた白い炎の魔法―――ホワイトファイヤー―――を吐いた本人、ホワイトワイバーンへ跳ね返す。
「ギィヤァァァァァアアアア」
自らの吐いた白い炎に身を焦がれ、苦しそうな声を上げる。
だが、流石に高い耐性があるのか、炎が消えた後、自らの翼を広げ、空へ向かって飛び立っていく。
それが視界の端に入った後、急いで倒れている美女の所に近づき、彼女が身に纏っている鎧を外しながら(もちろん胸や、大事なところは触らないように細心の注意を払って作業をした)傷の状態を診ていく。
彼女の傷は、少し遠くで見ていたときに想像していたより、もっと深刻なものだった。
まず、一番初めに気づいたのは、最初は鎧に隠れていて見えなかったが、体中の火傷だ。
体の前側ほぼ全てに火傷が出来ており、これは、非常にやばかった。
うる覚えではあるが、体の表面積に対して、約4割火傷をすると、死に至る場合が高いらしい。
次に目に入ったのは、最後やつに突かれたときに出来たと思われる、穴。
くちばしの形に、体の一部分が抉り取られている。
その他体中には、数え切れないくらいの切り傷や打撲擦り傷が出来ていた。
また、体の至るところの骨が折れており、こちらもかなり大変そうだ。
だが、そんな傷を治してくれるのが、冒険者の必需品ポーションなのだ。
けれど、こんな大きい傷を治すには、普通のポーションでは、かなりの数を使わなければならない。
彼も、街で買ったポーションの数も、今後の分も買ったが、それだけではまったく足りないので、彼女の持ち物を使おうかと考えたが、それを使って回復できるのならば、ここまで傷の状態はひどくならないだろうと思い、自分のを使おうと思う。
そこで俺は、ここへ来る途中で作った、ハイ・ポーションを使うことにする。
ちなみに、このハイ・ポーションは、通常のポーションに比べて、約10倍~15倍くらいの効果の差があるのだ。
液の純度が高ければ高いほど、高い治癒効果が得られる。
作り方は俺のオリジナル(ゲームでの作り方どおりに作った)だ。イコール、無印良品だ。しかも、水で薄める前の原液。
この貴重な、ハイ・ポーションを彼女の口へ流し込んでいく。
ゴクリと音を立てながら、ハイ・ポーションを喉の奥にやると、早速効果が出たのか、苦しそうな顔が、少し和らいだ。
そして、体の小さい傷から順々に元のきめ細かい綺麗な肌へと戻っていく。
貴重なハイ・ポーションを一本のみ終わる頃には、体にあいた穴が少しづつ治っていた。
さらにもう一本飲ませると、火傷の部分もほとんど治り、完治に近かった。
俺は、その後彼女の体に包帯を巻き、骨が折れているところには、添え木をし、固く結んでおいた。
その一連の作業が終わった後、俺は、テントを立てその中に彼女を入れ、安静にしておいた。
そしてそれらの後、水で濡らしたタオルで体中を拭き、清潔にしてからテントに入る。
もちろん魔物よけを施し、とても安心安全だ。
女の人と一緒に寝ることに少し抵抗感を覚えたが、仕方ないと諦め目を瞑り、睡眠の波が来るのをじっと待つ。
そして、疲れが出てきたのか、目を瞑るとすぐに波が来て、心地よいその波に体をゆだねる。
落ちゆく意識でおぼろげながら思う。
(イイコトするときもちがいいなぁ~)と
そして、(この人大丈夫だといいなぁ)
と意識がおぼろげながらひそかに思う。
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