プロローグ
西暦2xxx年、この世界から戦い、まぁ言うと戦争がなくなってからざっと100年以上経ち、世界に平和というものが広がった頃、ある1つのゲームが発売された。
その名は《マジックワールド》簡単に訳すと魔法の世界。
世界で累計6億本も売れた大ヒット作である。
なぜそんなに売れたかというと・・・
世界で始めて、バーチャルリアリティが導入されたゲームであったからだ。
しかも、それ以上にそのゲーム自体が今までにないほど自由度が高かったのも理由に含まれるだろう。
なんせ、このときのゲーム好きの大金持ちが集い、利益度外視で、惜しみなくお金を使い、最先端技術や最先端の医療技術、脳などの神経系のスペシャリスト、その他いろいろな分野のスペシャリストを集め、その技術を本当に惜しみなくつぎ込んだゲームであったからだ。
従来のゲームとは違い、頭の中で思うようにキャラクターが動くため、いろいろな動きを出来るようになっていた。
スキルも、これまでにないほどにあり、魔法の数はそれこそ数え切れないほどあり、《マジックワールド》の名に恥じぬできばえになっていた。
さらに、魔法は特殊な文字、ルーンを使って出来ており、そのルーンを独自につなぎ直し、新たな魔法を作れるシステムが導入され、各自オリジナルの魔法を作っていた。
また、グラフィックや五感のほうにも力を入れており、ほぼ完璧といっても良かった。ただ、さすがに五感のほうは、一部規制がかかっており、規制がかかっているものは通常の100分の1以下にまで抑えられていた。
ただ、これらを抜いても、もう1つの現実といっても過言ではないほどにすばらしい完成度であった。
ちなみに、VRを起動させると、強制的にレム睡眠に移行されるため、厳密に言うと夢を見ていることと同じになる。
そんな、ゲームにみんなはのめりこむようにはまっていった。
1つの社会現象ではないのだろうか。
いやそうなのだろう。
子供からお年寄りの方まで知らない人はいないとまで言われたゲームであったから、かなりの知名度を誇っていたゲームなのは確実だ。
普段、ゲームなんかやらない
って人でも、これならやってみようかと思わせれるほど、魅力的なゲームであったのだ。
そんな、ゲームに人一倍のめりこんでいるのが、彼、鉄 鉄平である。
現在高校1年生、身長145cm高校1年生にしては少し、いやかなり低いほうだろう、幼少の頃から鉄平という名前なのに病気がちで、友達が”なかなか”出来なかった悲しい人である。
まぁ、”なかなか”なだけで、まったく出来なかったわけではないのだが、その友達もゲームヲタクばかりなのだから悲しいっちゃ悲しいのかもしれない。
病気がちだから、部活は入っておらず、帰宅部である。
そんな彼は、いつもみんなより早く帰り、その時間で《マジックワールド》をするのが彼のただ1つの楽しみであった。
もちろんと言っていいのか分からないが、彼も《マジックワールド》をやりこんでいる。
いや、やりこみすぎた。
レベルは、もちろんカンストしており、スキルも先日すべて習得してしまった。
はっきり言うとやることはほとんどないのだが、まだまだサーバー側が出すイベントはあるので、それを目当てでやっていくつもりである。
そんなある日いつも通り、家に帰り、手洗いうがいをした後、VR機を起動し、いつものように
《マジックワールド》に入った。
1瞬の浮遊感のあと、目に入ってきた光に眼を細ませながら、習慣になってしまっているメールボックスを見て、彼は見慣れないものを目にした。
「転生の書」
はっきり言って、ものすごく怪しい。
誰かのいたずらか?と思っていると、ふとあるゲームヲタクの言葉が思い浮かんだ。
「おい、鉄平しってるか?マジックワールドで、スキルをすべて習得すると、異世界にいけるっていう噂。
確か、鉄平ってほとんどスキル習得してるよな?それが本当か確かめてくんねぇか。頼むよ、本当なら俺も異世界いってみたいしよ。」
と、友人の一言。
本音を言うと、彼自体も異世界には興味があり、異世界転生系や、召喚系の小説は、ドキドキワクワクしながら読んだものだ。
彼はその言葉を思い出し、迷わずそのメールを開いた。
その瞬間、目の前が真っ白になり、意識がだんだん遠のいていくのが分かった。
後日、鉄 鉄平さんが、《マジックワールド》をされているとき、自宅で死亡されているのを鉄平さんのお母さんが発見した。
今朝の、新聞より抜粋。
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