・Prologue
この物語はフィクションであり、実際の団体・人物・事件などには一切関係ありません。
ここは、東京都某区、駅からそれほど遠くもなく便利と言えば便利、と言えなくもない普通の一軒家である。
僕はそこに住む一家の長男として生まれ、育った。
僕は真面目でもないが、常識の枠内に入る人間だ。
そんな位置に収まるには自分から意見しなければいい、簡単だ。
煩わしい勉強を疎かにしながら、家族との距離を保ちつつとうとう高校生になった。
そこに淀みはなく、僕はそれに満足している訳でも不満に思うこともなく……。
要するに、足りないのだ。
誰でも思うことなのかそれは解らない。
しかし、ずっとこんな毎日が続いて行くのかと思うと……、時々、気が狂いそうになる。
ところで、ここ日本には今、禁忌と言われる暗黙のルールがある。
一ヶ月ほど前から流行りだしたそれは、日曜日に外に出るな、と言うものだ。
冗談にしてはあまりに陳腐で、笑えやしない。
しかし、信じられないことに、禁忌を破り、日曜の外に出てしまった人が帰ってこないのだ、1ヶ月たった今も、ただの一人すら。
なんとも胡散臭いが、真相を確かめようと日本政府が銃で武装した自衛隊を送り出したことがある。
それが、二週間前のこと。
結果、日本政府がそれについて結論を出した。
「えー、現在、日本政府の方針としまして、原因の解明を急ぎ行っております。この前代未聞の事態につき、近隣の方々にも注意を呼び掛けて頂きたく……」
それが、全国放送のニュースで流れたのだ。
一度切り、それは二度と流れることはなく、その時の僕は最後まで聞いて居られなかった。
それから日曜日は外出禁止……、禁忌とされたきっかけと言うわけだ。
そのニュースが流れる前の行方不明者数は1000万人を超えたそうだ。
TVでは執拗に犠牲者の名前を羅列していて……、全国民がうんざりした事だろう。
それもそうだ。
遠くない事実として、知り合いの名前も流れるのだから。
実際、日曜日に一年の時のみんなで同窓会を開いたクラスメイトがいた。
それっきり、僕の携帯に友達の名前は出てこなくなった。
だから、ではない。
みんなを助けよう、僕にそんな行動力……、ありはしない。
ただ好奇心を満たす、本能の為に、退屈な毎日、決定的になにか足りない……、そうだ、つまり、不満を埋めたいんだ。
僕の部屋に一つしかないカレンダーをパラパラと捲る。
……全く、こんなずぼらな性格してるから今月を探さなくちゃならないんだ。
「……あった、今日は土曜日、だから僕は……」
今日は土曜日、明日は当然日曜日。
それは大きな丸で印してあった。
つまり明日は出ちゃ行けないんだ。
……禁忌を破った者は罰を受ける。
そうだ、だからこそ、僕は出て行くんだ。
出ては行けない、禁忌の外へ。
もう一つ執筆してる作品はあるんですが、少し気分転換も兼ねて新しい小説でも書いてみようかと