9話
私は生まれて初めてふかふかの綿に包まって寝ていた柔らかくて……暖かい。
部屋の隅には神様が出してくれた松明がパチパチと音を立てて燃えている。
もう真っ暗闇を怖がらなくてもいい。
扉の前ではさっき体が大きくなった緑色の魔物が、新入りの魔物たちに命令しているみたいだった。
壁をガリガリ削る犬みたいな魔物。
天井の隅っこに張り付いてる、すごく気持ち悪いムカデ。 扉を守る魔物たち。
(怖い……けど、誰も私を殴らない)
みんな神様の命令でこの場所を守ってくれているのが分かる。
お腹もいっぱいだ。さっき食べたシチューは私が今までに食べたどんなものよりも……ううん、そもそも食べ物なんてカビたパンか残飯しか知らなかったから……本当に美味しかった。
──私はずっと奴隷だった。
物心ついた時から、私は「私」じゃなくて商品番号だった。
朝から晩まで働かされて、逆らえば殴られてお腹はいっつも空いていた。
そんな時、いつも私をかばってくれていた年上のお姉さんがいた。
お姉さんは私が泣いていると、こっそり黒パンを分けてくれながら教えてくれた。
『大丈夫。この世界にはね、どこかに神様がいるんだよ』
『今はつらくても一生懸命お祈りすれば、いつかきっと神様が助けに来てくれるから』
私はその言葉だけを信じて生きてきた。
でも、お姉さんは死んじゃった。働きすぎて病気になって、動けなくなったら……簡単に捨てられた。
神様は助けに来てくれなかった。
(神様なんて、やっぱりいないんだ)
そう思った。だから……別の場所に移動されてる時に逃げた。
必死で走って森に逃げ込んで変な魔物に追いかけられて……商人に見つかる直前に廃墟みたいな場所に転がり込んだ。
──そこで光る石を見つけた。
不気味だった。怖かった。
でもその石は……私にパンをくれた。
夢みたいだった。
お腹が空いたって思ったら温かいスープが出てきた。
寒いって思ったら、布をくれた。
奴隷商人が私を捕まえに来た時、私はもうダメだと思った。
そしたら石が光って魔物たちを呼び出して私を守ってくれた。
(お姉さん。神様、いたよ──)
私は寝袋からそっと這い出すと部屋の中央で静かにたたずむ、神様の前にひざまずいた。
すごい石の神様。
私はお姉さんに教わった通り、胸の前でそっと手を組んだ。
もう怖くない。 だって神様がここにいる。
「神様……」
どうか、私を──
♢ ♢ ♢
俺は少女が寝袋から出てきて自分の目の前でひざまずき、祈りを捧げる姿を見つめていた。
彼女が何を願ったのか内容までは分からない。
だが、彼女の表情から絶望的な恐怖が消え絶対的な「信頼」のようなものが宿っているのはなんとなく理解できた。
(……重い。なんか期待が重いぞ)
俺の背中にプレッシャーがのしかかる。 だが彼女の安全が俺のDPに直結する以上、やることは変わらない。
スライム軍団は今もせっせと外で資源を集め続けている。
[DP: 380]
さぁ、次は何をしよう……。
♢ ♢ ♢
[現在の拠点状況]
拠点名: (未設定)
階層: 1階のみ (組織化完了)
DP: 380
訪問者: 1名 (少女、俺に祈り中)
召喚中: 全18匹 ([C]スライムx18、[C]ゴブリンx3、[UC]ゴブリン・ファイターx1、[UC]コボルトx2、[UC]ラットx1、[UC]ムカデx1)
♢ ♢ ♢




