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転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた  作者: 季未


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72話

「キシャァッ!!」


金属と硬質な爪が擦れ合う、不快な高音が響いた。

リナの足元の影から噴き上がった[R]ブラッド・ストーカーの爪が、ゴアの剣の腹を強引に叩いたのだ。


致命的な軌道を描いていた刃がわずかに逸れる。

風切り音がリナの頬を撫で、剣先は彼女の数センチ横の空気を切り裂いた。


「なにっ……!?」

「キィッ!(させない!)」


ブラッド・ストーカーがリナを背に庇い威嚇の声を上げる。

だが、ゴアの表情が憤怒に歪んだ。


「この下等生物がぁッ!!」


ゴアが咆哮と共に手にした剣を目にも止まらぬ速さで振り回した。


「キィィィッ!!」


ブラッド・ストーカーも負けじと[シャドウダイブ]と[AGI 45]の敏捷性をフル活用して応戦する。


(は、速い……!)


俺の動体視力でも二人の姿はブレて見える。

黒い残像と銀の剣閃が火花を散らし、一瞬の間に数合、数十合の攻防が繰り広げられる。

だが……冷静に考えれば、あり得ない光景だ。

ブラッド・ストーカーのAGIは45。対するゴアは98。倍以上の差がある。

まともにやり合えば、一瞬で切り刻まれて終わるはずだ。


だが──今のゴアの動きには、以前のような神がかった鋭さがない。


(そうか、あいつ……!)


傷を塞いだとはいえ、ジェネラルに食らった[SR]魔剣の一撃によるダメージ、そして大量の失血。

それらが確実に奴の体を蝕んでいるんだ! 回復したのは表面だけで、スタミナも反応速度もガタ落ちしている!


「ハァッ……ハァッ……! チョコマカとッ!!」


ゴアが焦燥を露わにし、大振りの一撃を放つ。

ブラッド・ストーカーはそれを紙一重で回避するが、衝撃波だけで吹き飛ばされそうになる。


「キィッ……!?」


やはり地力の差は埋めきれないか!?

体勢を崩したストーカーに、ゴアの追撃が迫る。


「死ねェッ!!」


だが──刃が届く直前。


「負けないで!!」


リナの声が響いた。

彼女が[UC]乙女の聖杖を掲げると、清浄な光がブラッド・ストーカーを包み込んだ。

その時、俺の脳裏に強制的にウィンドウが割り込んだ。 [R]ブラッド・ストーカーのステータスだ。


(……な、なんだこれは!?)


表示された数値を見て、俺は我が目を疑った。




♢   ♢   ♢


名前: ブラッド・ストーカー

レアリティ:[R] レア (進化種)

種別:奇襲・暗殺用魔物(吸血種)


Lv: 15 HP: 180/180 | MP: 120/120

STR (筋力): 32 (基礎: 25 + 補正: 7)

VIT (体力): 33 (基礎: 24 + 補正: 9)

AGI (敏捷): 52 (基礎: 45 + 補正: 7)

INT (知力): 27 (基礎: 22 + 補正: 5)


♢   ♢   ♢



(ステータスが……強化されてる!?)


基礎値に加えて、謎の補正値が加算されている。 特にAGI(敏捷)は50の大台を超えている!


(まさか……リナのスキル [迷宮の祈り] か!?)


本来はダンジョン内でリナ自身のステータスを底上げするパッシブスキルだったはずだ 。

だが、どうやら[コアの守護]で守っている対象、あるいはリンクした味方にもその加護を分け与える効果があるらしい!


俺は周囲を見渡す。

バウォークや他の魔物たちの動きは変わっていない。強化の光を纏っているのはブラッド・ストーカーだけだ。


(なるほど……。部隊全体へのバフじゃなく、[コアの守護]と同じで対象は一人限定か)


だが、それで十分だ。

その一人が今、最強の敵を食い止めているのだから!


(いける……! そのおかげで、ゴアとなんとかやりあえてるんだ!)


AGI 98を持つ怪物ゴア。

だが奴は満身創痍で本来のキレを失っている。

対するストーカーはリナのバフで限界を超えた速度を手に入れた。


(奴が本調子じゃない今なら──このバフがあれば、拮抗できる!)


「くそっ……! 鬱陶しい羽虫がぁっ!」


ゴアが苛立ちを隠せずに吠える 。

[R]ブラッド・ストーカーの神速の攪乱と、リナによる鉄壁の支援 。 この二つが噛み合い、手負いの怪物を辛うじて押し留めている。


(いける……! これなら、主力が戻ってくるまで持ちこたえられるか──!?)


俺が一縷の希望を抱いた、その時だった。


「がはははは! ゴアの奴は無視しろ! 先にダンジョンを散策しちまえ!」

「ふん……強いのがゴアに気を取られてる隙に、お宝を頂くといくか」


(──!?)


ゴアとストーカーの死闘を他所に他の冒険者たちが堰を切ったように動き出したのだ。

彼らはゴアを恐れてはいるが、それ以上に目の前に広がる未踏のダンジョンへの欲望が勝ったらしい。


「うおおおおっ! どけぇ魔物ども!」


「カッ……!?」

「ブモッ!?」


周囲を見れば[N]ミノタウロスや[N]ゴーレムたち防衛部隊が、数の暴力に押され始めている 。

ただの烏合の衆じゃない。 動きの良い連中──Cランク級の手練れも混ざっているのか!?


(くそっ、押されてる……!)


[R]スケルトン・バウォークが[不動]で粘っているが、敵は彼を迂回して広間の奥へと雪崩れ込んでくる 。

このままでは包囲され、各個撃破されるのも時間の問題だ。

何より──この乱戦にリナを巻き込むわけにはいかない!


俺は決断した。

──ここは捨てる。魔物たちとリナの安全が第一優先だ!


(みんな! 陣形を維持しながら2階に避難するんだ! 階段へ急げ!)


俺の撤退命令が飛ぶ。

バウォークが殿となり、リナと魔物たちが階段へと走る。


(焦ることはない……)


俺は自分に言い聞かせるように思考する。 この広間は全16階層ある塔の、ほんの入り口に過ぎない 。

これから上には俺がDPを叩いて拡張した長い回廊や迷路、毒の沼地や色々なものがある 。 地形を活かした防衛網の本番は、これからだ……!


(撤退だ! リナを守りながら階段へ走れ!)


俺の悲痛な命令が飛ぶ。

[N]ミノタウロスや[N]デュラハンたちが即座に密集隊形を組み、その中心にリナを庇うようにして後退を始めた。


「カッー!!(後退だ!)」

「ブモォォッ!(壁になれ!)」


[R]スケルトン・バウォークが巨大な[巨人の城壁盾]を構えたままジリジリと後退し、追撃してくる冒険者たちの攻撃を一身に受け止める。


「おい見ろ! 魔物が逃げ出したぞ!」

「勝てるぞ! 押せ押せぇッ!」

「あの女も捕まえろ! 生け捕りだ!」


冒険者たちが勝利を確信し欲望に目を血走らせて殺到してくる。

バウォークの脇をすり抜け、雪崩のように階段付近へと迫る。


(くそっ、足が速い……! このままじゃ追いつかれる!)


魔物たちはリナの歩調に合わせているためどうしても逃げ足が遅くなる。

冒険者の切っ先が、最後尾の[N]リザードマンの背中に届きそうになった──その時だった。


カチリ。


先頭の冒険者が、床の石畳を不用意に踏み抜いた音が響いた。


(──かかった!)


俺は心の中で叫んだ。

そこは[UC]コボルト部隊がせっせと仕掛けておいた置き土産だ!


[簡易トラップ (Lv.MAX)] 起動!


カッ!!!!


「うおっ!?」

「め、目がぁぁぁッ!?」


床下から強烈な閃光が炸裂し、広間全体を白く染め上げた。

目くらましだ!

さらに、視界を奪われ立ち止まった冒険者たちへ、壁の隙間から死の雨が降り注ぐ。


ヒュンヒュンヒュンッ!!


「ぐああっ!?」

「や、矢だ! 待ち伏せか!?」


潜んでいたコボルトたちが放つ石礫と粗末な矢の雨。

威力は低いが、混乱を助長するには十分すぎる!


(ナイスだ、コボルトたち!)


「キャ、キャン!(今のうちに逃げろー!)」


混乱の隙を突き魔物たちは一気に加速する。

閃光に目を焼かれ、矢の雨に足を止められた冒険者たちを置き去りにして、一行は広間の奥──2階へと続く階段へと滑り込んだ。


(よし……! なんとか第1防衛ラインからの脱出成功だ!)


ここから先は俺が作った悪意あるダンジョンエリア。 本当の地獄を見せてやる……!

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