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転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた  作者: 季未


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62話

(恐怖に飲まれるな!)


部下の死に動揺する空気を切り裂くように[R]ヒーロー・ゴブリン・ジェネラルが大きく息を吸い込んだ。


「グルァァァァァァッ!!!!(怯えるな……殺せッ!!)」


ビリビリと大気を震わせる裂帛の咆哮。

それは単なる叫びではない。英雄としての覇気が、部下たちの心に巣食いかけた死への恐怖を強制的にねじ伏せ、闘争本能に火を点けたのだ。


「……ッ」


衝撃波めいた咆哮を正面から受け、鉄仮面の男──ゴア・シェルドーがわずかに眉をひそめたように見えた。

彼は音もなくバックステップを踏み、瞬きする間に数メートルの距離を取る。


(速い……! バックステップだけで残像が見えるぞ!)


ゴアは細剣を構え直し、仮面の奥から冷ややかな視線を向けた。


「やかましいな……浅ましい獣だ」


感情のない侮蔑の言葉。

だが、今のジェネラルたちに言葉は届かない。


「グルァ!(掛かれ!)」


ジェネラルの号令が飛ぶ。

それと同時──恐怖を怒りに変えた[N]ホブゴブリン・ファイターや[N]オークたちが、死を恐れずに一斉にゴアへと躍りかかった!


「オオオオオオッ!!」


[N]ホブゴブリン・ファイターたちが盾を構えて突進し[N]オークが大ナタを振りかぶる。

単純な暴力の嵐。まともに食らえば鉄塊とて粉砕する質量攻撃だ。


だが──。


「遅い……」


ゴア・シェルドーの姿がブレた。オークの大ナタが空を切り地面を砕く。

ホブゴブリンの盾が何もない空間を突き飛ばす。


(消えた!? )


俺は[視点共有]の解像度を限界まで上げる。

──見えた。奴は魔物たちの攻撃の隙間──針の穴を通すような僅かな死角を散歩でもするかのように滑り抜けている!


「キィッ!」


木陰から[N]ゴブリン・レンジャーが放った必殺の矢。

それすらもゴアは首を僅かに傾けただけで回避した。視線すら向けていない。


「芸がないな……所詮は薄汚い魔物か」


冷淡な呟きと共に、細剣が閃く。


「ブゴッ……!?」


すれ違いざまオークの太い腕から鮮血が噴き出した。

腱を斬られたのか、オークが膝をつく。


(速すぎる……! [AGI 98]ってのは、ここまでデタラメなのか!)


「グルァッ!!」


部下の窮地に[R]ヒーロー・ゴブリン・ジェネラルが動いた。

[将軍の魔剣]が唸りを上げ、ゴアの回避先を薙ぎ払う。衝撃波を伴う一撃!


「むっ……」


硬質な金属音が森に響き渡った。

ジェネラルの剛剣を、ゴアは細剣の腹で受け流し──いや、弾いた!?


「STR(筋力)も高いのか……!」


ジェネラルの腕が痺れているのが伝わってくる。

ゴアは涼しい顔でバックステップし、距離を取る。


「この魔物たち……弱いが統率が取れているな……こいつらはダンジョンから出てきた固体か」


ゴアが仮面の奥で目を細めた。

次の瞬間、彼から放たれる殺気が爆発的に膨れ上がる。


「──[瞬歩]」


ドンッ!!


足元の地面が爆ぜた。

ゴアの姿が完全にかき消える。


「!? グルァッ(防御!!)」


ジェネラルの叫びが遅れて響く。 だが、その時には既に──。


「ガッ……!?」

「ギィッ……」


前衛にいた[N]ホブゴブリンの鎧の隙間、そして[N]ゴブリン・レンジャーの喉元から同時に血飛沫が上がっていた。


(いつの間に斬った!?)


「さて、あと何匹だ?」


血塗れの戦場で、ゴア・シェルドーだけが汚れ一つない姿で佇んでいた。

切っ先は正確にジェネラルの心臓を狙っている。


だが……。


「グゥ……!!」


首を刎ねられたと思った[N]ホブゴブリン・ファイターは分厚い鎧ごと胸を深々と斬り裂かれながらも、膝をつかずに耐えていた。

[N]ゴブリン・レンジャーも喉元を紅く染めて倒れ伏しているが、微かに肩が上下している。


(瀕死だが……即死は免れたか!)


[R]ヒーロー・ゴブリン・ジェネラルのスキル[戦陣の号令]による防御力底上げと、彼ら自身の戦士の誇りが皮一枚で冥府への道を繋ぎ止めたのだ。


だが──。


「ほう。意外と頑丈だな。ゴミにしては」


ゴア・シェルドーは冷淡に言い放つ。

息一つ乱れていない。汗一つかいていない。

彼にとっては、ここまでの攻防すら作業の一環でしかないのだ。


(どうする……!?)


俺は[視点共有]越しに、脂汗が噴き出るのを感じた。 勝てない。 ステータスの桁が違う。スキルの質が違う。 このまま戦い続ければ、全滅は時間の問題だ。


(ジェネラル! 一度退いて……いや、逃げ切れる相手じゃない!)


背を見せた瞬間、[瞬歩]で追いつかれて背後から[処刑執行]だ。

詰んでいる。完全に格上だ。


だが──。


「グルルルゥ……ッ!!」


喉の奥から絞り出すような唸り声。

ジェネラルは退かなかった。 傷ついた体で[将軍の魔剣]を構え直し、さらに濃密な闘気を膨れ上がらせる。


彼は俺に語りかけていた。

ここで自分が退けば後ろで倒れている部下たちは確実に殺される。 そして、この怪物を塔へ──主の元へ近づけてしまう、と。


(……やる気か!)


勝算なんてコンマ数%もないかもしれない。

それでも、俺の最強の武人は瞳の光を失っていなかった。


(分かった……!)


俺は腹を括った。

小細工は通用しない。撤退も許されない。 ならばこの一瞬にすべてを注ぎ込むしかない。


(俺にできることはないのか!?)


俺は脳裏のDPカウンターを睨みつける。


[DP: 10,500]


これが俺の弾薬。これが俺の武器だ。

この1万ポイントで、デタラメな速さを持つ怪物を止める手段を探せ!


(考えろ……考えるんだ!)


召喚? ダメだ、[N]ランクのミノタウロスが一瞬で首を飛ばされた。今さら数を増やしても肉壁にすらならない。

進化? 今の状態でさらに上の[SR]へ進化できるとは思えないし、条件も満たしていないだろう。


(なら、アイテムか? 設備か? 何か奴の足を止める手立ては……!)


奴の強さは速さと一撃必殺だ。 まともにやり合っては勝ち目がない。

搦め手だ。奴の虚を突き、動きを封じ、ジェネラルの一撃を叩き込むための何かが必要だ!


(出ろ……! 今、この状況を覆せる可能性を!)


俺は祈るように、脳裏の【生成リスト】を全展開した!




♢   ♢   ♢


【生成リスト:緊急・戦闘支援】


[R] レア魔物ガチャ

コスト: 5,000 DP

効果: [R]ランク以上の魔物を即時召喚。


[N] ノーマル装備ガチャ × 3回

コスト: 3,000 DP × 3 (計9,000 DP)

効果: [N]ランク以上の魔法道具や武具を生成。


粘着の泥沼スクロール: 1,500 DP

指定範囲の地面を底なしの泥沼に変え、AGIを大幅に低下させる。


重力の呪符: 2,000 DP

対象一帯に高重力を発生させ、動きを鈍らせる。


落とし穴(大): 500 DP

鉄格子の檻: 1,000 DP

毒ガスの噴出: 800 DP


♢   ♢   ♢



駄目だ……この程度じゃ勝てない……!


(ジェネラル……ッ!!)


[視点共有]から伝わってくるのは絶望的なまでの実力差だった。


「遅い……さっさと死ね」


ヒュンッ。


ゴア・シェルドーが指先一つ動かすような軽い動作で細剣を振るう。

それだけでジェネラルの強固な[N]ランクの鎧がバターのように切り裂かれ、鮮血が舞う。


「グルァ……ッ!!」


ジェネラルは[将軍の魔剣]を振るうことすらできない。 防御に徹し、致命傷となる首や心臓への一撃だけを野生の勘と[戦士の誇り]でギリギリ回避している状態だ。

だが、それも限界が近い。全身が切り刻まれ立っているのが不思議なほどだ。


「しぶといな。だが……つまらん」


ゴアの目が細められる。

遊びは終わりだ、という殺気が膨れ上がる。


(くそッ! 何かないのか! こいつの足を止める手段は!)


俺は脳裏のリストを必死にスクロールする。

ポーション? 間に合わない!

攻撃魔法? [AGI 98]に当たるわけがない!

罠? 今から掘ってる暇はない!


(もっとだ……! もっと、根本的に状況をひっくり返す「何か」が!)


俺の焦燥に応えるように、リストが激しく明滅した。 【生成リスト】の深層。

普段は表示されない[緊急・特別]カテゴリの中に、禍々しくも頼もしい輝きを放つ項目が出現した。


(これだ……ッ!!)


俺は震える意識で詳細を確認する。




♢   ♢   ♢


【強制進化:魔剣の覚醒】


コスト: 10,000 DP


効果: ジェネラルの武器[将軍の魔剣]を一時的に[SR]ランク相当の魔剣へと強制覚醒させる。


剣に「必中」や「範囲切断」の概念を付与し、速さを無視して空間ごと敵を断ち切る一撃を放たせる。


♢   ♢   ♢




コスト10,000 DP。 現在の全財産である10,500 DPのほぼ全てを吐き出すことになる乾坤一擲の大博打だ。

だが、その効果は──「必中」と「範囲切断」。


どうする……?


俺は──

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