表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた  作者: 季未


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/72

57話

風を切る音。流れる緑の残像。

俺はウルフの鋭敏な感覚と同調し、森の中を疾走していた。


(消えたな)


鼻腔を刺激していた鉄と脂の臭い──人間の気配が森から完全に消失していた。

あれだけ騒がしかった森が、今は不気味なほど静まり返っている。


(全員、撃退したのか?)


完勝と言っていいはずだ。だが、何だろう。この胸のざわつきは。

勝ち戦のはずなのに、何かが喉に引っかかっているような奇妙な不安が拭えない。


(まぁいい。今は戦果の確認が先決だ)


俺は思考を切り替え、上空で待機する偵察・回収部隊に意識を飛ばした。


(ヴァンパイアバット! 戦場に落ちている人間の死体や装備……「資源」を回収してくれ!)


「キィキィ!(もう運んだ!)」


返事は早かった。さすがは俺の自慢の部隊だ。

戦闘の裏で、既にせっせと仕事を進めていたらしい。


俺が意識を拠点に戻すと戦利品──冒険者たちの成れの果てが既に山と積まれていた。

1階の『威圧の広間』に山と積まれた冒険者たちの成れの果て。 鉄と血の臭いが充満するその惨状を俯瞰しながら俺は奇妙な感覚を覚えていた。


(……)


かつての俺なら間違いなく嘔吐していただろう光景だ。 それなのに今の俺の心は静まり返っている。

恐怖も、嫌悪も、罪悪感すらも希薄だ。 淡々と「源の山を見積もっている自分自身の冷徹さが、逆に俺を不安にさせた。


「神さま……戦いは、終わったの?」


不安げなリナの声が俺を思考の淵から引き戻す。 彼女は心配そうに俺(石)を見つめ杖をギュッと握りしめていた。


(……ああ、大丈夫だ。終わったよ)


俺は彼女を安心させるようにポゥ……と柔らかく光を二回明滅させた。

リナがホッと息を吐くのを確認し、俺は意識を1階の魔物たちへと向ける。


(よし、総員聞け! 1階ホールにある[DP納品石]に回収した人間や装備をすべて納品してくれ!)


俺の号令一下、[N]コボルト・マイナーや運搬部隊が忙しなく動き始めた。 彼らは冒険者の遺体やひしゃげた武具を、次々と[DP納品石]へ放り込んでいく。


光の粒子が立ち上るたび、俺の脳裏にあるカウンターが凄まじい勢いで跳ね上がった。


[DP: 1,600] → [DP: 15,000] → [DP: 28,000] ……


[DP: 36,000]!!


(こ、これは……!)


俺は戦慄した。 以前、侵入者を撃退した時とは桁が違う。 数が多かっただけじゃない。今回襲ってきた連中は、それだけ「質」が高かったということだ。魂の輝きも、装備の魔力も、以前の比ではない。


(すごい……! これだけのDPがあれば、防備を完璧に整えられる!)


俺が歓喜に震えた、その時だった。


「マスター!!マスター!!」


開け放たれた窓から、小さな影が弾丸のように飛び込んできた。 [R]エレメンタル・フェアリーのベルだ。


「ベルちゃん! 無事だったんだね!」


リナが嬉しそうに駆け寄り、ベルを掌で包み込む。


「ウン! ワタシも戦っタんダヨ~! ……って、チガウ! ワスレナイうちに報告!」


ベルはリナの手から飛び出すと、俺の目の前で慌てふためきながら羽をバタつかせた。


「あのネ、ムラの様子も見に行っタノ! ソシタラ……まだまだボウケンシャっていうノガ、沢山イタノ!」


(……なんだって!?)


冷水が背筋を駆け上がる。 あれだけの数を殲滅したのに、まだいるのか? 一体どうなっているんだ……? 今まであんなに静かだったこの森に、どうして急に人間が雪崩れ込んでくるんだ?


(ベル、その冒険者たちは……すぐに来そうか?)


「ワカンナイ……デモ、ナンカ準備シテたカラ、ソノウチ来るカモ……」


(……なるほどな)


俺は理解した。 今回襲ってきた連中は、ただの「先陣」──露払いに過ぎなかったのだ。 本隊である第二陣が控えている。それが数時間後か、明日か、明後日かは分からない。


だが──確かなことが一つある。


(準備だ。……奴らが来る前に溜まったDPで準備を整える!)


俺は決意と共に、36,000という莫大なDPを見つめた。




♢   ♢   ♢


[現在の拠点状況]

拠点名: (未設定・円形の塔)

階層: 16階建て + 屋上

DP: 36,000 訪問者: 1リナ

召喚中:

総司令官: [R] ヒーロー・ゴブリン・ジェネラル (Lv.20)

狩猟部隊長: [R] ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフ (Lv.15)

突撃隊長: [R] オーク・デストロイヤー (Lv.15)

防衛部隊長: [R] スケルトン・バウォーク (Lv.15)

偵察部隊長: [N] ヴァンパイアバット (Lv.8)

遊撃・伝令: [R] ベル (Lv.1)

(他、多数)

侵入者: 第一陣殲滅完了

その他: ベルの報告により、第二陣の存在が発覚。


♢   ♢   ♢




(36,000 DP……これだけあれば、軍団を根本から作り変えることだってできる)


俺は震える意識で脳裏に浮かぶ莫大な数字を見つめた。

だが、浮かれている場合じゃない。 ベルの報告によれば、敵は準備をしている。


(数で押してくるなら、こちらも面で制圧するか、質で圧倒するか……)


俺は16階層ある塔の全体図と現在の戦力配置を脳内で重ね合わせる。 敵はいつ来てもおかしくない。

時間はないが、即効性のある強化なら間に合う。


潤沢な資金を、どこに一点集中させるか──?


(……よし、決めた)


俺の意識は、偵察任務から戻ったばかりの[N]ヴァンパイアバットへと向く。

偵察に運搬、雑用まで……最近の彼は獅子奮迅の働きを見せてくれている。まさに縁の下の力持ちだ。もし彼が撃ち落とされでもしたら、俺たちは「目」を失うことになる。


(彼を強化しよう。……死なせるわけにはいかないからな)


俺はウィンドウを開き、彼のレベルを現在の「8」から、進化の節目となる「15」まで一気に引き上げる操作を行った。


(必要DPは……2500か。今の懐事情なら、安いもんだ!)


[DP: 36000] → [DP: 33500]


俺が承認した瞬間、DPが消費され、塔の1階に控えていたヴァンパイアバットの体が黒い光に包まれた。

バチバチと音を立てて魔力が奔流する。


「キィッ……!キィィイイ!!」


苦悶の声にも聞こえる叫び声。だが、それは成長の証だ。

小さな体躯が膨れ上がり、皮膜の翼がより強靭に、より鋭利に変質していく。


やがて光が収まると、俺の脳内に輝くウィンドウが展開される。




♢   ♢   ♢


[進化先選択]


1. [R] ヴァンパイア・バット・ロード

→ 特殊・指揮型。知性が飛躍的に向上し、下級魔物への[指揮]スキルを得る。自らも[吸血]能力が強化され、偵察部隊のリーダーとして高い生存能力と統率力を発揮する。


2. [R] ブラッド・ストーカー

→ 奇襲・暗殺型。[AGI]と[STR]がさらに強化され、[サイレントダイブ]が[シャドウダイブ]に進化。[吸血]による回復量も増大し、単独での暗殺任務すら可能になる。


♢   ♢   ♢




(どっちも魅力的だが……)


俺は二つの選択肢を前に唸った。

部隊全体を動かす統率力を取るか、個の力による暗殺能力を取るか。


(……いや、迷っている場合じゃないな)


今の俺たちに足りないのは、決定的な打撃力だ。ジェネラルやウルフは強力だが、敵の指揮官や魔法使いを乱戦の中でピンポイントに排除できる暗殺者はいない。

偵察部隊の指揮能力も魅力的だが、今は綺麗事よりも、確実に敵を殺せる鋭い牙が欲しい。


(よし、決めた。個の力を極める!)


俺は迷いを振り払い、2. [R] ブラッド・ストーカーを選択した。


[DP: 33,500] → [DP: 30,500]


意思を確定させた瞬間、光に包まれたヴァンパイアバットの姿が劇的に変化を始める。

翼がより大きく、鋭利に。そして体躯が引き伸ばされるように……人型へと近づいていく?


「キシャアアアアッ……!」


光が弾け飛ぶ。

そこに現れたのは、単なる巨大コウモリではなかった。

体長1メートル強。小柄な子供ほどのサイズだが、体つきは引き締まった筋肉に覆われ、折り畳まれた翼はマントのように体を包んでいる。

顔つきも獣のそれから、どこか知性を感じさせる冷徹な悪魔の相貌へと変貌していた。

鋭い爪は短剣のように長く、紅い瞳は静かに俺を見据えている。


(おお……! なんて禍々しさ……そして、強そうだ!)


今までのような魔獣ではない。明確な殺意と知性を持った狩人の風格だ。

俺は興奮と共に、生まれ変わった彼のステータスを確認する。


♢   ♢   ♢


名前: ブラッド・ストーカー

レアリティ: [R] レア (進化種)

種別: 奇襲・暗殺用魔物(吸血種)


Lv: 15 HP: 180/180 | MP: 120/120

STR (筋力): 25

VIT (体力): 20

AGI (敏捷): 45

INT (知力): 22


特技

[吸血 (Lv.3)]: 対象の血液を吸い、HPを中量回復すると同時に、一時的にSTRとAGIを上昇させる。

[シャドウダイブ (Lv.1)]: 影から影へと瞬時に移動する。移動中は物理攻撃を無効化する。

[超音波探知 (Lv.4)]: 反響定位により、遮蔽物越しの敵や罠を正確に察知する。

[麻痺の牙 (Lv.1)]: 噛みつき攻撃時、確率で相手を麻痺状態にする。


進化先

[SR] ヴァンパイア

進化タイプ: 指揮・魔法

概要: 闇の眷属として覚醒する。強力な暗黒魔法を操り、吸血した相手を眷属グールなどとして使役可能になる。


[SR] ナイトメア・アサシン

進化タイプ: 即死・隠密

概要: 影そのものと同化し、認識されないまま死を与える処刑人。[即死攻撃]や[精神汚染]などの凶悪なスキルを習得する。


♢   ♢   ♢


(強い……! 特にこのAGI(敏捷)45ってのはとんでもなく役に立つんじゃないか……!?)


影を渡り、麻痺毒で動けなくして血を吸う。

まさに闇討ちのプロフェッショナルだ。これなら敵の野営地に忍び込んで首を掻っ切ることもできるかもしれない。


「キィ(命令……を……)」


頭の中に直接響くような、鋭くも忠実な思念。

進化したことで念話もよりクリアになっている。

俺は頼もしい新たな相棒に、最初の指令を与えるべく思考を巡らせた。


(よし……ブラッド・ストーカー、お前には……)


言いかけて俺はふと思考を止めた。

敵状視察も暗殺も重要だ。だが、それらはあくまで点の戦果に過ぎない。

これから来る第二陣がもし数百の規模だったら?

ジェネラルやウルフたちは優秀だが彼らだけで全てをカバーするのは物理的に不可能だ。多勢に無勢。いくら個が強くても、数で押し潰されればジリ貧になる。


(……そうだ。今の俺たちに足りないもの……それは圧倒的な数……層の厚さだ!)


俺は脳裏のDPカウンターを見つめた。


[DP: 30,500]


進化に投資したとはいえ、まだこれだけの余力がある。

これで特大の[R]ガチャで一発狙うのもロマンだが……外れれば終わりだ。それに今は英雄が欲しいんじゃない。軍隊が欲しいんだ。


(今度は質じゃない! 量だ……!)


俺の視線は、リストの下段……今までスルーしていた「中堅クラス」のガチャ項目へと向けられた。


【ノーマル召喚(Nガチャ)】

消費:500 DP / 回

概要:[N]ランクの魔物が排出される中級召喚。


これだ。

1回500DP。決して安くはないが、今の俺なら連打できる。

一般魔物ガチャ(5DP)のようなスライム地獄ではなく、即戦力となる兵隊を確実に揃えるならこれしかない。


(3万DPあれば……!)


塔の各階層を魔物で埋め尽くす。

侵入者が絶望するような軍勢を作り上げる時が来たのだ。


(いくぞ! 怒涛の連続召喚だ!)


俺は震える意識で、そのボタンに狙いを定めた。


連打。連打。連打!


[DP: 30,500] → [DP: 30,000] → [DP: 29,500] ……


俺は脳裏の【召喚リスト】から、[N]中級魔物ガチャを40回連続で実行した。


[DP: 30,500] → [DP: 10,500]


ゴゴゴゴゴゴ……!


1階の防衛フロアが[N]ランク召喚の凄まじい魔力の奔流に包まれる。

[N]バウォークたち防衛部隊が、自分たちのテリトリーに新たな仲間が出現するのを、緊張した面持ちで見守っている。

40回の召喚エフェクトが嵐のようにフロアを駆け巡り、そして……収まった。

そこには40体の新たな[N]ランク魔物たちが、ジェネラルの指揮を待つように佇んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ