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転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた  作者: 季未


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50話

拠点も順調に回り、魔物たちも着実に育っている。 リナにベルという新しい友達ができたことも大きい。


(うん、中々いい感じだ!)


俺は満足げに自分の拠点全体──16階層に及ぶ塔の隅々まで意識を巡らせていた。

異世界の石に転生した時は一体どうなることかと思ったが……。 今ではこうして盤石な体制を築き、安定した生活を送ることができている。

俺は石の身でありながら、深い安堵の息を吐くような気分に浸っていた。


(……ん? そういえば)


ふと、ある変化に気づく。


(最近、塔の「少し外」まで感覚が届くようになってる気がするな……なんでだ?)


転生した当初は、塔の内部……それも自分がいる部屋の周囲くらいしか分からなかった。

だが今は違う。塔の壁を越えて、周囲の地面や森の様子がおぼろげながら感じ取れる。

近くで[C]スライムが苔を食んでいる様子や、[N]コボルト・マイナーが地面を掘っている気配がわざわざ[視点共有]を使わなくても、自分の手足の延長のように何となく分かるのだ。


何故なのかは分からない。もしかしたら支配領域的な何かが、塔の外へ向けてじわじわと広がっている……?


(……なんでだろう?)


俺が塔の外への感覚の広がりに悩んでいると、ふいに声をかけられた。


「神様、どうかしましたか?」


いつの間にかリナが横にいた。 彼女は手に小さな籠を持っている。


(ん? それは……)


俺が意識を向けるとリナは少し照れくさそうに籠を差し出した。

中には、透き通るような紅色の液体が入った小瓶が数本。 以前、村人たちに持たせてやったのと同じ、特製ポーションだ。


「あ、これですか?」


リナは俺に見られているのに気づき、はにかむように言った。


「前に作ったポーションは村の人にあげちゃったから……また作ったんです。屋上の薬草園には定期的に色んな植物が生えてくるみたいで……赤いキノコもまた生えてたので、それで」


なるほど。 あの時は村人たちに渡してしまったが、元々はリナがこのダンジョンの魔物たち──傷ついたウルフやゴブリンたちのためにと、一生懸命作ったものだったようだ。

だから、また作り直してくれたのか。


(……なんていい子なんだ)


俺の心がじんわりと温かくなる。

俺は感謝の意を込めて、ポゥ……と柔らかい光を二回明滅させた。

リナは俺の言葉がわかったのか、嬉しそうに少し照れくさそうに俯いた。 そして顔を上げて提案してくる。


「それでね、神様。思いついたんです。このポーションを、塔の色んなところに置いておけば……もしみんなが怪我した時に、すぐに飲んで回復できるんじゃないかなって」


(!!)


回復アイテムの設置! ダンジョン内に「回復ポイント」を作るということか!


(いい案じゃないか……!?)


いちいちリナが現場に急行しなくても、魔物たちが自分で回復できるようになれば生存率は飛躍的に上がる。

ゲームで言うところの回復キットやセーブポイントの配置だ。


よし、採用だ! 即採用!


……まぁ、もちろん敵も使うかもしれないが、場所を把握している魔物の方が有利なはず……だよな。


俺は激しく明滅して同意を示した。

そして──ただ床に置くのは忍びないし、瓶が割れてしまうかもしれない。


(よし、入れ物を作ってやろう!)


俺は脳裏のリストを必死に検索する。 ただの木の箱じゃ味気ないし、戦闘に巻き込まれて壊されやすい。

もっとこう、ダンジョンらしい頑丈で特別な入れ物は……。


(……ん? なんだこれ?)


【拠点機能】のリストの隅に、見慣れない項目が追加されているのを見つけた。


[設備] ダンジョン宝箱(転送機能付き) …… 500 DP


(宝箱……? しかも転送機能付き?)


俺は詳細説明を食い入るように読む。


『ダンジョンコアのインベントリ(亜空間収納)に一度格納したアイテムを、ダンジョン内に設置したこの宝箱へ遠隔で転送・補充することができる』


(……ッ!!)


俺は心の中で快哉を叫んだ。


(素晴らしい! 神機能だ!)


これがあればリナがいちいち広くて構造的に危険な階層まで足を運んで、ポーションを補充して回る必要がなくなる。

俺がここでリナからポーションを受け取り、インベントリに入れて、念じるだけで各階層の宝箱にポンと補充できるわけだ!

まさにダンジョン運営のための設備!


(しかし宝箱一個で500 DPとは……少しお高いような気もするが)


5 DPでスライムが呼べることを考えると、宝箱一つでスライム100匹分だ。高級品である。

だが、スライム軍団とコボルト採掘隊が不眠不休で頑張ってくれたおかげで、一時は減っていたDPも 5,200 まで回復している。この程度の出費なら必要経費として割り切れるレベルだ。


(取り合えず、三つ作ってみるか……)


俺は1500 DP を支払い、[ダンジョン宝箱(転送機能付き)] を3つ購入した。


DP: 5200 → 3700


さて、問題は設置場所だ。

どこに置くのが一番効果的か?


(1階の[R]巨人の黒鉄門の側に置くのは……ナシだな)


あそこは最前線だ。もし侵入者に突破された場合真っ先に略奪されるリスクがある。

敵に塩を送る……いや、敵に回復薬を送るなんて馬鹿な真似はしたくない。


(となると……2階……いや、そこも不安だ。4階あたりか?)


4階: [C] 蝙蝠のねぐら……鍾乳洞のような天井が高い階層だ。

防衛部隊が傷ついて一時撤退した際や、ここを死守する部隊が補給するには丁度いい距離感かもしれない……。


(よし、一つ目は4階だ)


残りの二つは……主力部隊が常駐している 10階 [N] 闘技場への回廊。ここは外せない。防衛の要だ。

そしてもう一つは魔物たちの休憩所になっている 13階 [C] ゴブリンの詰め所 にしよう。休息中に傷を癒やせれば回転率が上がるはずだ。


(よし、配置完了!)


俺が念じると脳内のダンジョンの指定した位置に、重厚な装飾が施された宝箱が出現した。

同時に、この部屋の隅にもアイテム投入用の「親機」となる宝箱が出現する。


「わぁっ! 綺麗な箱!」


リナが目を丸くする。


(リナ、その箱の中にポーションを入れてみてくれないか?)


俺が光で箱を示すとリナは不思議そうにしながらも、籠に入っていた赤いポーションを一つ箱の中に入れた。

そして俺が念じる。


『転送:4階 宝箱へ』


シュンッ!


箱に入れたポーションが、かき消えるように消滅した。


「ええっ!? 消えちゃった!?」


リナが慌てて箱の中を覗き込むが空っぽだ。

俺は[視点共有]……は使えないが、ダンジョンコアとして4階の宝箱の中身を確認する。

……おぉ!入ってる!ちゃんと転送されている!


(成功だ! これで、ここから一瞬で各階層に補給ができる!)


「すごいです神様! 魔法で送ったんですね!」


リナも手を叩いて喜んでくれた。

これで、彼女が危険な階層を歩き回る必要もなくなり、魔物たちの生存率も上がる。


(さて、補給線も確保できたし……)


DPは残り3700。設備投資をした後でもまだ余裕がある。

戦力増強か、設備の拡充か、それとも次の何かに備えて貯蓄するか。


その時だった。


「タダイマー!」


16階の窓から元気な声が響き渡った。ベルだ。

彼女はキラキラと妖精の鱗粉を巻き散らしながら、一直線にリナの胸に飛び込んで来る。


「わぷっ!? おかえりなさい、ベルちゃん!」


リナがベルを優しく受け止める。

ベルはリナの頬にスリスリと顔を寄せ、甘えるように羽を震わせた。


「リナ! アイタカッタ!」

「ふふ、私もだよ。おつかい、ご苦労様」


実に癒やされる光景だ。

だが、俺には聞かなければならないことがある。

5000 DPも叩いて召喚した[R]ランクの知性派のはずのユニットだ。重要な情報を持ち帰ってくれているはず……。


(おかえり、ベル。で、どうだった? 村の様子は)


俺が念話を送るとベルは「アッ!」と思い出したようにリナから離れ、俺の前でビシッと姿勢を正した。


「ホウコク! スライムさんは、ゲンキだっタ!」


(スライムは元気か。それはなによりだ)


外交官が健在なのは良いことだ。

でも俺が聞きたいのはもっとこう、村の軍事力とか、人間の動向とか、そういう戦略的な……。


(他には?)


「他……? うーん……」


ベルが腕を組んで悩むポーズをする。 俺の心に嫌な予感が過る。


(……うそだよな?)


彼女はまだ生まれたばかりだ。見た目通り、中身も子供なのかもしれない。

伝令役という高度な任務を単独で任せるのはまだ早かったのでは……?

俺が内心で冷や汗をかいているとベルはポンと手を叩き、何かを思い出したかのように顔を輝かせた。


「あ、ソウソウ!」


(おお! 良かった、流石にそれだけじゃないよな!)


さあ、重要な情報を聞かせてくれ!


「スライムさんは、ご飯も美味シイの貰エテるミタイ!」


(まあ、友好関係の証拠だな。さっきの情報よりはマシか。それで?)


「アト、子供タチと遊ンデたら、綺麗なイシを見つけたっテ!」


(……?)


「スゴーく、キラキラしてるイシだって! スライムさん、ジマンしてた!」


ベルは「ニンムタッセイ!」と言わんばかりのドヤ顔で、えっへんと胸を張った。


(……)


俺は絶句した。

スライムの健康状態。食生活。そして、子供と遊んだり、綺麗な石の自慢話。

これが、5000DPをはたいて召喚した俺の[R]ランク諜報員の初仕事の成果……?


村長的な存在とか、大人たちとの会話はなかったのか? 村の雰囲気はどうだったんだ?


俺が頭を抱えたくなっていると、ベルがふと、首を傾げた。


「アッ……ソウいえば」


(まだあるのか!?)


ベルが元気よく言った。


「オジサンがいっテタ! オジサンが元気にナッタっテ!」


(はぁ?)


オジサンがオジサンが元気になったって言っていた……?

だ……駄目だ。意味が分からない。

いや、オジサンが元気になったというのは、以前渡したポーションが効いたということだろうか?

だが、それを「オジサンがオジサンが」と連呼されても、戦略的な価値が全く見えてこない。そもそもオジサンって誰なんだ……。


(どうしよう……彼女に伝令は無理だったんだ)


俺は絶望した。

貴重な虎の子の5000 DPが……。

ジェネラルやデストロイヤーに匹敵する戦力を期待して支払った対価が、こんな報告もまともにできないお子ちゃま妖精に変換されてしまったなんて……。


(しくしく……)


心の中で涙を流す俺をよそに、リナがベルを優しく抱きしめながら首を傾げる。


「ベルちゃん、どういうこと? よく分かんないよ」


「ウー……。ダカラね、オジサンが、オジサンが……」


一生懸命説明しようとするが語彙力が足りていない。

俺はもう諦めの境地だった。 どうせ聞いたって分かんないさ。

妖精はそういう、無邪気で役に立たない愛玩種族なんだ……きっと……。

ある程度戦力にはなるし、リナが可愛いがってるからもうペット枠でいいか……。


俺はもうどうでもいいと言わんばかりに、ベルから意識を外そうとした。

だが、次の瞬間だった。


「アッ! ソウソウ!」


ベルがポンと小さな手を叩いた。

俺は虚ろな意識で反応する。

今度はなんだ? 美味しいおやつを貰ったとか、綺麗な花が咲いてたとか、そういうほのぼのニュースか?

もう驚かないぞ。俺が期待せずに、ベルの次の言葉を待つ。


そして、ベルは無邪気な笑顔で口を開いた。


「ボウケンシャってニンゲンたちが、ワタシたちのところにタクサン、タクサン向かっテルッて!」














なん……だと……?

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