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転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた  作者: 季未


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41話

とある日のことだ。


[DP: 15250]


(よし……DPも15000を超えた!)


俺は脳裏に表示された数字を見て満足げに震えた。石だけど。

[N]セージ・スライム率いる資源回収部隊と、[N]コボルト・マイナーたちの働きは素晴らしいの一言に尽きる。

彼らは昼夜を問わず俺の知らない場所からせっせと苔や鉱石を運び込み、この塔の経済を回してくれている。まさに縁の下の力持ちだ。


(どんどんDPが溜まるな……)


だが、溜め込んでいるばかりじゃ何の意味もない。

DPは使ってこそ拠点の強化に繋がる。


(さて、何に使おうか……)


俺はリストを眺めながら思案する。 [フロア増設]でさらに塔を高くするか?それとも主力部隊のさらなる強化か……。

俺が使い道に悩んでいると──。


「キィィィッ!!(報告! 報告!)」


上空から切羽詰まった鳴き声が降ってきた。 [N]ヴァンパイアバットだ。

偵察部隊の隊長が、慌てた様子で塔の屋上の縁に舞い降りてきた。


(どうした? 敵襲か!?)


俺は瞬時に警戒レベルを引き上げる。 魔族の再来かそれともアント軍団か……。


「キィ! キィキィ!(人間!森の入り口!数人!弱そう!)」


(人間……!?)


ヴァンパイアバットの報告によると森の入り口付近に人間の集団が現れたらしい。 数は数人。

武装は……「貧弱」とのことだ。


(冒険者の討伐隊か? いや、それにしては装備が貧弱だと言うし……)


ヴァンパイアバットはヒーローではないため[視点共有]が使えない。 彼の報告だけでは詳細が分からない。

誤って攻撃してしまえば、それこそ全面戦争になりかねない。


(確認が必要だ。……ウルフ! 頼めるか?)


俺は待機していた狩猟部隊長[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフに意識を飛ばした。

彼なら足が速いし[視点共有]で俺が直接状況を確認できる。


「ガウッ!(御意)」


[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフが即座に反応し、音もなく立ち上がった。

彼は[N]シャドウウルフなどの部下を数匹引き連れ、風のように塔を飛び出していく。


(視点共有、起動!)


俺の意識が切り替わる。 流れる景色。風の音。

ウルフは森を全速力で駆け抜け、報告のあった森の入り口付近へと急行する。


数分後。

ウルフは速度を落とし、身を低くして茂みの中に滑り込んだ。


「グルル……」


(……いた)


俺はウルフの目を借りて茂みの向こう側を凝視する。

そこには、以前見かけた顔があった。


「ここら辺なら……大丈夫かしら」

「あぁ、これ以上奥に行くと、また何が出るか分からん」


おそるおそる森の中に足を踏み入れているのは完全武装の冒険者や騎士団ではない。

鍬や古びた剣を持った村の男たちと……以前、子供たちを助けた時に先頭に立っていた、あの気丈そうな女性だ。


彼らは大きな荷車や背負子に積んだ木箱を降ろし不安そうに周囲を見回している。

敵意や殺気は感じられない。むしろ、恐怖と……何か別の感情が混じっているようだ。


(攻撃しに来たわけじゃなさそうだな……)


だが、塔まではまだ距離がある。彼らのような一般人がこれ以上奥に来るのは危険すぎる。


(どう接触するか……)


俺はウルフの視界で、彼らが荷車から降ろしている「何か」を見つめながら次の一手を考えた。


(……よし)


俺はウルフの視界を通して荷車を守るように固まっている村人たちを観察する。

中心にいるのは以前子供たちを迎えに来たあの気丈な女性だ。名前は知らないが、村のリーダー格なのだろう。

彼らが持ってきた荷物……木箱や樽からは、微かに食べ物の匂いがする……ような気がする。

ウルフの嗅覚が俺にも分けられてるのかな……?


(敵意はない。なら、追い払う必要はないな)


俺は[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフに意識を送った。


(よし……ウルフたち! 姿を現せ! ただし、絶対に怖がらせるなよ! 前に子供たちに見せたみたいに、フレンドリーにな!)


(ヒーローのお前は……まあ、王としての威厳を保ちつつ、敵じゃないことだけ伝わればいい。愛想を振りまくのは部下に任せよう)


「ガウッ」


[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフが短く喉を鳴らすと、茂みの陰からゆっくりと姿を現した。

それに続き、[N]シャドウウルフや[UC]ファングウルフたちも、尻尾を下げながら姿を見せる。


ガサッ……


「ひっ!?」

「ま、魔物……!?」


村の男たちが悲鳴を上げ腰の引けた構えで鍬や剣を握りしめる。

先頭の女性も、顔を蒼白にして剣の柄に手をかけた。


「……ッ!」


緊張が極限に達する。 だが──。


「クゥ~ン……」

「ハッ、ハッ、ハッ♪」


部下のウルフたちは俺の命令通り殺気を完全に消し去っていた。

尻尾をちぎれんばかりに振り、わざと地面に寝転がって腹を見せたり、甘えるような声を出しながら、ゆっくりと近づいていく。


そして、その群れの中央。 [R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフが銀色の毛並みを風になびかせ、静かに堂々と歩み出た。

彼は媚びることはしない。だが、瞳に害意はなく静謐な理性の光を宿して人間たちを見下ろした。


「あ……」


女性が目を見開いた。


「この狼……あの時の……!」


彼女は剣から手を離し、震える声で周囲に告げた。


「みんな、武器を下げて! ……大丈夫よ。この狼たちは、あの子たちを助けてくれた時の群れだわ」

「えっ、本当か?」

「ああ、間違いない……! うちの娘が言ってた『銀色の大きな狼さん』だ!」


村人たちの間に走っていた戦慄が安堵へと変わっていく。

彼らは恐る恐るだが、ウルフたちに向けられた敵意を完全に解いた。


どうやら、ファーストコンタクトは成功したようだ。




♢   ♢   ♢


[現在の拠点状況] 拠点名: (未設定・円形の塔)

階層: 6階建て + 屋上

DP: 15250

訪問者: 1リナ

召喚中:

総司令官: [R]ヒーロー・ゴブリン・ジェネラル (Lv.20)

狩猟部隊長: [R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフ (Lv.15)

突撃隊長: [R]オーク・デストロイヤー (Lv.15)

偵察部隊長: [N]ヴァンパイアバット (Lv.8)

防衛部隊長: [N]スケルトン・ガーディアン (Lv.13)

(他、多数)

侵入者: なし(森の入り口で村人と友好的に接触中)

その他: ウルフ部隊が村人たちの警戒を解くことに成功。


♢   ♢   ♢




「……子供たちを助けてくれて、本当にありがとう」


群れの中央に進み出た気丈な女性が[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフの正面に立ち、深く頭を下げた。

彼女の声は震えていたが、瞳には強い感謝の意志が宿っていた。


「これは村のみんなからのお礼です。……あなたたちの口に合うかは分からないけれど」


彼女が合図を送ると、後ろに控えていた男たちが荷車の覆いを外した。


(おぉ……!)


俺はウルフの視界越しに中身を見て感嘆した。

木箱や樽には新鮮な野菜や果物、燻製にされた肉が詰め込まれている。 貧しい村だろうに精一杯の感謝をかき集めてきたのが伝わってくる。


「ワン……」


ウルフが短く喉を鳴らすと、女性はホッとしたように表情を緩めた。


(ありがたい!リナや食魔物たちに食べさせてやれる!)


だが、ここで一つ問題が発生した。


(……量が多いな)


ウルフ部隊は[R]ランクを筆頭とする戦闘のエキスパートだが、これだけの物資を運搬するのには向いていない。

口にくわえたり背中に乗せたりするには限界があるし、何より彼らは鋭い爪や牙を持っている。せっかくの食料を傷つけてしまうかもしれない。


(よし、あいつらを呼ぼう!)


俺は拠点に意識を飛ばし、待機していた資源管理のスペシャリストに号令をかけた。


(セージ・スライム! [N]コボルト・マイナー! 直ちに森の入り口へ向かえ! 村人からの供物を受け取るんだ!)


(ただし、絶対に怖がらせるなよ! 愛嬌たっぷりに振る舞え!)


数分後。

村人たちがどうやって荷物を渡そうかとウルフたちとお見合い状態になっていると、森の奥からペタペタ、カチャカチャという奇妙な音が近づいてきた。


「な、なんだ……?」

「また魔物か!?」


村人たちが再び身構える。

だが、茂みをかき分けて現れたのは恐怖の権化ではなく、どこか間の抜けた集団だった。


「プヨヨ~ン」

「キャンッ!」


先頭を切って現れたのはサファイアブルーに輝く[N]セージ・スライム。

その後ろには色とりどりの[UC]アルケミー・スライムや緑色の[C]スライムたちが、一列になってプルプルと行進している。

さらにその脇をヘルメットを被りツルハシを背負った[N]コボルト・マイナーたちがキビキビとした動作で付いてきていた。


「ス、スライム……? それに、コボルト?」

「あのコボルト、兜をかぶってるわ……」


村人たちが拍子抜けしたように武器を下ろす。 ウルフたちの圧倒的な威圧感とは対照的な、ぽよんぽよんとした動きに、彼らの顔から完全に恐怖の色が消えた。


「プヨッ!(みんな、運べ~!)」


セージ・スライムが指示を出すと、部下のスライムたちが荷車に向かって跳ねていく。

彼らは野菜や果物の入った木箱に体を押し当てると──ずるん、と体内に取り込んでしまった。


「うわっ、飲み込んだ!?」

「食べたのか!?」


村人が驚くがスライムの中の野菜は溶ける様子もなく、ゼリーの中で大切に保持されている。[収納]スキルだ。

コボルトたちも、重そうな樽や木箱を軽々と持ち上げ、器用に背負子に固定していく。


「プヨプヨ」


スライムたちが体を揺らしてアピールすると、村人たちからも自然と笑みがこぼれた。


「力持ちなんだな……」

「なんだか、ここの魔物たちは変わってるな。襲ってこないし……」


女性もスライムの頭を恐る恐る撫でてみて、冷たくて柔らかい感触に目を丸くしている。


(よし、完璧だ!)


これで俺たちは話が通じるという印象を植え付けることができた。……まぁ、森の魔物と俺たちの区別はつかないとは思うが……。


(スライムを村に派遣してもいいかもな……何か貰えるかもしれないし、人間の生活の様子が分かるかもしれない)


彼らが村に受け入れられればこちらの意図を伝えたり、逆に村の情報を得たりするパイプ役になれる。

そんな外交的な展望を考えていた、その時だ。


「その……狼さん! お願いがあるの!」


不意に気丈な女性が[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフに向かって叫んだ。

なんだ……? と思い、俺とウルフは足を止めて女性を見る。彼女は拳を握りしめ、意を決したように叫んだ。


「この間くれた赤茸……まだあったら分けて欲しいの!どうか……どうかお願いします……!」


彼女の瞳は恐怖ではなく、縋るような必死さで揺れていた。

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