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転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた  作者: 季未


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4話

(もう悩んでる暇はない! 一か八かだ!)


護衛の男が怯える少女に手を伸ばそうとした刹那。

俺は脳裏のリストに浮かんだ【召喚ガチャ】の文字を、ありったけの意識で選択した。


『一般魔物ガチャ(5DP)を実行しますか?』


( 今すぐ実行する!!)


俺の絶叫に応え、意識の中のDPが 10 から 5 へと瞬時に切り替わった。


(頼む……! ドラゴンとかは言わない! せめてあの護衛を足止めできるやつ……!)


直後。護衛の男と、怯える少女のちょうど真ん中。

何もないはずの石の床がパンを出した時よりも激しく歪み、バチバチと音を立てて光の粒子が密集する!


「なっ!?」

「なんだぁ!?」


護衛の男が思わず少女への手を引っ込め後ろに飛びのいた。 太った奴隷商人も突然の怪現象に目を剥いている。

光は一瞬だけ強まり……収束する。

そして、そこに出現したのは……。


ぽよん。


と、間の抜けた音を立てて床に着地した拳二つ分ほどの大きさの……緑色のゼリー?


(……は?)


それはプルプルと小刻みに震えていた。目も口もなさそうだ。

どう見ても、ゲームとかで最弱の代名詞として登場する……スライムだった。


(うそだろ!? これが5DPの「魔物」!? これでどうしろってんだ!?)


俺が絶望しかけたその時。


「な、なんだこの……トリックは!?」


奴隷商人が叫ぶ。


「おい! 構うな、さっさとガキを捕まえろ!」


護衛の男は突然の召喚に驚きはしたが、目の前のスライムがあまりに無害そうに見えたためかすぐに体勢を立て直した。

彼はスライムを無視し、再び少女のほうへ踏み出そうとする。


(やばい! 止まれ! お前、召喚されたんだろ!? なんかやってくれ!)


俺が内心で叫ぶが、スライムはただプルプルと震えているだけ。


(だめだッ!スライム一匹じゃ時間稼ぎにもならない!?)


護衛の男が無害なゼリーを無視して少女に再び手を伸ばす。


(こうなったらヤケだ! 残り全部、突っ込むしかない!)


俺は残りのDP 5をすべて叩き込む覚悟で、再度【召喚ガチャ】を選択。


(今度こそ、頼む! 使えるやつを……!)


DPが 5 から 0 になる。


そして俺は強く念じた。


(出すなら……奴らの背後だ!)


その意図が通じたのか今度の召喚陣は奴隷商人と護衛の男、二人の後ろ……彼らが入ってきた扉のすぐ手前の空間に展開した!


「!?」


護衛が振り返る。


バチバチッ!


光が弾け、今度こそ明確な人型の何かが実体化した。

それは背丈は少女とさほど変わらないが、筋張った緑色の肌を持つ醜悪な小鬼。 手には粗末な棍棒のようなものを握りしめている。


「ギィ……」


(……ゴブリン!?)


スライムの次がゴブリン! なんて王道な最弱ラインナップだ!


(ダメだ……! ゴブリン程度じゃ、剣を持った護衛に勝てるわけ……!)


俺が絶望しかけた、その時。


「キシャアアアアアッ!!」


背後から出現したゴブリンは状況を即座に理解したのか、それとも本能なのか……甲高い奇声を上げ、最も近い敵である護衛の背中に棍棒を振り下ろしながら襲いかかった!


「ぐっ!? この野郎!」


護衛は間一髪でそれを避け、剣を抜いてゴブリンと向き合う。


(お……? 思ったより……強い!?)


俺の予想に反し5DPのゴブリンは意外なほど素早かった。 護衛の男は確かに手練れのようだが、奇襲を受けた焦りもあってゴブリンのトリッキーな動きに即座に対応できていない。

圧倒はできない。だが、確実に足止めにはなっていた。


(いけるか!? いや、でも一体だけじゃジリ貧だ……!)


だが、俺の心配とは裏腹に護衛の男の顔が急速に青ざめていくのが分かった。

彼はゴブリンの攻撃を受け流しながら、脂汗を浮かべて叫んだ。


「……ゴブリンが一匹だけなんてあり得ない! 近くに巣があるんだ!」


(え?)


護衛の男は目の前のゴブリンよりも「まだ見ぬ数十匹のゴブリン」を想像してパニックに陥ったようだ。


「おい、旦那!」


と、彼は商人を振り返る。


「逃げるぞ! ゴブリンの群れに囲まれたら終わりだ!」

「な、何を言ってる! あと少しでガキが……!」

「死にたいのか!」


護衛は商人の腕を掴むとゴブリンを強引に突き飛ばして隙を作り、そのまま二人で転がるように扉の外へ逃げ出していった。

嵐のような足音が、あっという間に遠ざかっていく。


「……」


静寂が戻った。

部屋に残されたのは、 壁際でまだガタガタと震えている少女。部屋の中央でプルプルと震え続けているスライム。

そして敵が逃げた方向を向き、棍棒を構えたまま「キエ?」と小首をかしげているゴブリン。


……と、俺。


(……助かった……のか?)


開け放たれた扉から外の冷たい空気が流れ込んでくる。

部屋の隅で膝を抱えた少女はガタガタと震えながら、プルプルしているスライムと棍棒を構えたままキョロキョロしているゴブリンを、恐怖に引きつった目で見比べていた。


(まずい……今度は俺が召喚したモンスターに怯えてる……!?)


敵が逃げ去ったことを理解したのかゴブリンは棍棒をだらりと下げた。


「ギィ?」


緑色の小鬼はまずスライムを一瞥し、次に怯える少女を見て、最後に部屋の中央で一番目立っている俺の存在に気づいたようだ。

敵意は……なさそうだが、どう動くか全く予測できない。


(こいつら、俺の命令とか聞くのか? それとも今度は俺や少女に襲いかかってくるのか?)


俺がこのカオスな状況をどうしたものかと頭を悩ませていると、さっきのリストとは別の新しい情報が脳裏に鮮明に流れ込んできた!


(これは……こいつらの情報か!?)




♢   ♢   ♢


名前:スライム

レアリティ:[C]コモン

種別:資源採取用魔物


Lv: 1 HP: 15/15 | MP: 0

STR (筋力): 3

VIT (体力): 10

AGI (敏捷): 2

INT (知力): 1


特技

[溶解 (Lv.1)]: 食べたもの(主に有機物・ゴミ)をゆっくりと溶かし、養分にする。

[収納 (Lv.1)]: 体積の10%までのアイテムを体内に安全に保持できる。


進化先

[クリーナー・スライム]: [溶解]が強化され、部屋の清掃や廃棄物処理に特化する。

[アルケミー・スライム]: [溶解]したものを、低級な資源(魔素の欠片など)に変換可能になる。


♢   ♢   ♢


名前:ゴブリン

レアリティ:[C]コモン

種別:戦闘用魔物


Lv: 1 HP: 25/25 | MP: 0

STR (筋力): 8

VIT (体力): 6

AGI (敏捷): 6

INT (知力): 3


特技

[棍棒殴り (Lv.1)]: 棍棒で通常より少し強く殴りつける。

[威嚇 (Lv.1)]: 奇声を上げ、相手を怯ませようとする。


進化先:

[ゴブリン・ファイター]: 戦闘能力が純粋に向上し、武器の扱いがうまくなる。

[ゴブリン・スカウト]: 敏捷性が向上し、[隠密]や[罠発見]などの偵察技能を覚える。


♢   ♢   ♢




(なるほど……スライムは戦闘力皆無のゴミ処理&倉庫係。ゴブリンは最弱とはいえ、一応の戦闘要員か)


さっきの護衛が逃げたのはこいつの強さじゃなくゴブリンの群れを警戒したから、というのがよく分かるステータスだ。

ただ、HPが存在しているのにVIT(体力)の項目があるというのは少し気になるな。これは体力とは書いてあるが、総合的なタフネスを意味してるとか……?それか、所謂防御力的なものなのかもしれないな。


(だが、それより問題は……)


俺は怯える少女と手持ち無沙汰に棍棒をいじり始めたゴブリンを見比べる。

この戦闘用魔物と少女を、狭い一部屋で共存させなきゃならないってことだ……!


俺はこのカオスな状況を前に悩む。

まずスライムは……さっきから部屋の隅でプルプルと震えているだけで、俺の焦りや少女の恐怖など我関せずといった様子だ。


(ステータスのINT(知力)が 1 だったしな……こいつに状況を理解しろと言うほうが無理か。まぁ害もなさそうだし今はいいか……)


スライムは放置決定。

問題はゴブリンだ。 ステータスを見る限り戦闘用であり、あの少女にとっては恐怖の対象でしかない。

今も敵が去って手持ち無沙汰なのか棍棒で自分のスネをポリポリ掻いている。

その仕草一つで、少女が「ひぃっ」と息を呑んだ。


(ダメだ、このままじゃ少女のSAN値が持たない!それに、あの扉……開けっ放しだ!)


さっきの奴隷商人どもが仲間を連れて戻ってくるかもしれない。更に外にいる魔物が入ってくるかもしれない。


(こいつが命令を聞くなら……!)


俺は意識をゴブリンに集中させる。


(お前! 緑色の小鬼! ゴブリン!)


俺の声がゴブリンの意識に届くよう強く念じる。


「ギ!?」


ゴブリンはスネを掻いていた手を止めビクッと体を震わせた。

濁った目が、キョロキョロと部屋を見回し……やがて部屋の中央で一番目立っている俺に釘付けになった。


(通じてるか!?)


俺は開け放たれた扉を指さすイメージを送る。


(あの扉! 扉の前に行って、外を見張れ! 敵が来ないか、守れ!)


「……ギィ?」


ゴブリンは小首をかしげた。 知力 3 にはちょっと命令が複雑だったか……?


(だめだ、もっと単純に……! 扉! 立て! 外! 見ろ!)


俺がイメージを単純化して送り直すと、ゴブリンは何かを理解したかのようにおもむろに立ち上がった。

そして、トコトコと覚束ない足取りで開け放たれた扉のすぐ脇まで移動する。

そこで立ち止まると棍棒をだらりと下げたまま、ぼーっと外の景色を眺め始めた。

お世辞にも「有能な見張り」とは言えないが、少なくとも扉の前に立って外を見ている……。


命令は、一応通じたようだ!


「あ……」


隅で震えていた少女が、その一連の流れを……ゴブリンが俺を見て、命令されたかのように動いたのを呆然と見つめている

俺は少女に向かって意識を集中させた。 怖がらせないようゆっくりと優しく……一度だけ柔らかい光を点滅させる。


(大丈夫だ。こいつは俺が呼んだ。お前を守るためだ)


「あ……」


少女は俺が光ったのを見た。 その直後、俺は扉の前に立つゴブリンにもう一度命令を送った。


(おい、ゴブリン! 扉! 閉めてくれ!)


開けっ放しの扉を閉じるイメージを、強く念じる。


「ギィ?」


ゴブリンは振り返り、俺と開いた扉を見比べた。 知力 3 の頭で懸命に考えたのかゴブリンは扉に手をかけると、乱暴に開け放たれた扉を閉めた。


(お……おぉ……!意外とできるじゃないか、キミは!)


バタンと扉が閉まり、外の世界と完全に遮断された。

さっきまでの怒声や暴力が嘘のように部屋に再び静寂が戻る。


「かみさまが……まもって……くれた……?」


少女はまだゴブリンを怖がりはしていたが、あの魔物が神様の使い魔であり自分を守るために行動したのだと理解したようだ。

彼女は俺のそばまでやってきた。 そして今度はぎゅっと安心を求めるように俺の本体にしがみついてきた。

さっきよりも強く、少女の体温と震えが伝わってくる。 だが震えは徐々に小さくなっていた。


「よかった……」


俺にしがみついたまま少女はぽつりと呟いた。

どうやら、ゴブリンとスライムが同じ部屋にいる状況にも最低限納得してくれた……というか、恐怖よりも神様の庇護下にあるという安心感が勝ったようだ。


やれやれ……どうなるんだ、これから。

石の俺。奴隷商人に追われる少女。最弱のスライム。意外と賢いゴブリン。

なんとも奇妙な共同生活の始まりだ……。

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