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転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた  作者: 季未


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30/72

30話

(なんでこんな森の奥深くに武器も持たない子供たちがいるんだ!?)


俺は混乱した。

ここは[R]アント・ジェネラルや[N]ランクの魔物が跋扈する危険地帯だ。 だが、理由なんて後だ。

目の前で消えかかっている命を見捨てるわけにはいかない。リナを助けた時と同じだ。俺は……俺の手が届く範囲の悲劇を許容できない。


(ウルフ! 子供たちを助けるんだ! 奴らを排除しろ!)


「ガウッ!」


[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフが大地を爆発的な力で蹴った。

AGI 30の神速が、空間を切り裂く。


「ブヒ……?」


先頭にいた[N]オークが目の前の子供に大ナタを振り上げようとしたその瞬間だった。


「オォォォォォン!!!」

「!?」


銀色の閃光がオークと子供の間に割って入った。衝撃音と共にオークの上半身が消し飛んだ。

[エンシェントファング]の一撃だ。何が起きたのか理解する間もなくオークの下半身だけが崩れ落ちる。


「シッ!?」


隣にいた[N]リザードマンが反応して槍を向けようとするが遅すぎる。

ダイアウルフは着地することなく空中で軌道を変え、リザードマンの頭蓋を前足の一撃で粉砕した。


「ガッ……!?」


瞬きする間に二体が絶命。

残ったオークとリザードマンが、恐怖に顔を歪めて後ずさる。


「ギィッ……!?」

「ガァ……」


子供たちは目の前で起きた暴力を理解できず腰を抜かして震えている。

だが、ダイアウルフは子供たちに視線を向けることなく残党を見据えた。


「ワオォォォン!」


そこへ遅れて到着した配下の[N]シャドウウルフと[UC]ファングウルフたちが殺到した。


「グルァ!」


残った二体の魔物は逃げることすら許されなかった。

ウルフたちの連携攻撃によって喉笛を食いちぎられ、数秒で沈黙した。


勝負は一瞬だった。

子供たちに指一本触れさせることなく、[R]ヒーロー率いる狩猟部隊は野生の[N]魔物たちを完全に殲滅したのだ。


(……間に合ったか)


俺は安堵のため息をつくと同時に震える子供たちへと意識を向けた。


「あ、あぁ……」

「た、食べないで……」


子供たちは腰を抜かし、互いにしがみつきながら涙目で震えている。

無理もない。彼らからすればオークから助かったと思ったら、今度は巨大な銀色の狼と群れに囲まれたのだ。

助けられたというよりは更に上位の捕食者に獲物を横取りされたようにしか見えないだろう。


[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフは子供たちを傷つけないよう距離を取りつつも、周囲を警戒して円陣を組んでいる。


「グルル……」


ダイアウルフから思念が伝わってくる。


──どうすればいい?と。


このままここに放置すれば、他の魔物に襲われるか森で迷って死ぬだけだ。


(どうするか……)


俺は瞬時に計算する。

塔へ連れ帰ればリナは喜ぶ……かもしれないが拠点の位置が人間にバレるリスクは無視できない。


(人里まで護衛してやるか……)


俺は子供たちを安全な場所まで送り届けることを選択した。

助けておいて見殺しにするのは気が引けるしな。


だが、問題は子供たちが恐怖で凍りついていることだ。

このままでは護衛しようと近づくだけでパニックを起こして逃げ出しかねない。


(ウルフ!部下たちに命じて、敵意がないことを示せ!少し……こう、優しく接するんだ!)


「……グゥ」


プライドの高い[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフは俺の指示に対して気まずそうに視線を逸らし、周囲の警戒に専念する構えを見せた。

さすがに、威厳ある王が進んで腹を見せて媚びるわけにはいかないか。


だが主である俺の命令は絶対だ。 王が動かない代わりに配下の[N]シャドウウルフや[UC]ファングウルフたちが動いた。


「クゥーン……」

「ハッ、ハッ、ハッ」


さっきまでオークを食い殺していた凶暴な魔物たちが急に殺気を完全に消した。

彼らは尻尾をちぎれんばかりに大きく振り、姿勢を低くして子供たちに近づく。 ある個体は子供の頬をぺろりと舐め、ある個体は地面にごろんと転がって無防備な腹を見せた。


「え……?」

「わんわん……?」


子供たちの表情から少しずつ絶望の色が薄れていく。

目の前の大きな狼たちが自分たちを襲うつもりがないこと、むしろ遊ぼうとしているように見えることに困惑しつつも極限の緊張が解けていくのが分かった。

一人の少女がおそるおそる手を伸ばし[UC]ファングウルフの頭に触れる。ウルフは気持ちよさそうに目を細めた。


(よし、いけるな)


俺は胸を撫で下ろした。

これなら子供たちを誘導して人里まで連れて行けそうだ。




♢   ♢   ♢


[現在の拠点状況]

拠点名: (未設定・円形の塔)

階層: 6階建て

DP: 2100

訪問者: 1リナ

召喚中

探索部隊長: [N]ヒーロー・ゴブリン・コマンダー (Lv.18)

防衛部隊長: [N]スケルトン・ガーディアン (Lv.13)

狩猟部隊長: [R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフ (Lv.15)

偵察部隊長: [N]ヴァンパイアバット (Lv.8)

(他、[N][UC][C]ランク多数)

侵入者: なし

その他: 狩猟部隊が子供たちの警戒を解き、人里への護衛を開始。


♢   ♢   ♢




子供たちの順応性の高さには驚かされる。ついさっきまで腰を抜かしていたのが嘘のように、今は[UC]ファングウルフの背中に乗ったり[N]シャドウウルフの首元の毛に顔を埋めたりしている。

ウルフたちの極上のモフモフ具合に魅了され完全に懐いてしまったようだ。

[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフだけは王としての威厳を保つためか少し離れた位置を歩いているが、子供たちはキラキラした目で銀色の巨体を見つめている。


(近くに人里があるのか?)


ウルフたちの足取りは迷いがない。おそらく子供たちの匂いの痕跡を逆に辿っているのだろう。

森の浅い部分か外縁部に村があるのかもしれない。


(ん……? どうした?)


順調に進んでいた列が少し乱れた。

ウルフの背に乗っている子供たちが、キョロキョロと必死に周囲の茂みや木の根元を探している。


「キノコあった?」

「こっちにもないよ……」


ダイアウルフの聴覚を通して子供たちの囁き声が聞こえてくる。


「もっと奥に行かないとないのかな……」

「キノコがないと薬が作れないよ」


(薬になるキノコ?そうか……)


俺は合点がいった。 こんな危険な魔物が跋扈する森のに子供たちだけで入り込んでいた理由。

冒険ごっこや迷子ではなく病気の家族を救うための薬用キノコを探していたのか。 そのために死ぬかもしれないリスクを冒してここまで来たというわけか。


(健気なことだ)


だが、ここは魔物がはいかいする魔境だ。

探している余裕などないはずだが子供たちは諦めきれない様子で、泣きそうな顔で森を見渡している。


(このまま手ぶらで帰せば、また森に来てしまう……)


俺は根本的な解決が必要だと判断した。


(ウルフ! 周囲を嗅ぎ回れ! 子供たちが探している赤いキノコを見つけるんだ!)


『……?』


[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフと配下のウルフたちが鼻を鳴らす。

獲物の血の匂いや、外敵の気配を察知するのは得意だが、特定の植物を探すのは彼らの専門分野ではないらしい。

ウルフたちは困惑した様子で地面を嗅ぎ回るが、目当ての物は見つからない。


(駄目か……どこにあるんだ)


焦る俺の脳裏に別の回線……[N]ヒーロー・ゴブリン・コマンダーからの念話が割り込んできた。


『グルァ(報告!)』

『ブゴッ、ブゴッ!』


(え?)


視点をコマンダー側に一瞬切り替える。

そこには探索部隊の一員である[N]オークが巨大な手で小さな赤いキノコを摘まみ上げ、得意げに鼻息を荒くしている姿があった。


(キノコを見つけた? 俺の思考が共有されているのか?)


俺はコマンダーたちにはキノコを探せとは命令していない。

もしかして俺がウルフに強く念じていた焦りを、コマンダー経由で察知したのだろうか。


(やっぱりブタに似てるから、トリュフ探しみたいにキノコ探しは得意なのかな……)


オークの顔を見てそんな失礼な感想が浮かんだが、今は感謝すべき時だ。

[N]オークは見た目によらず、意外と器用で探索能力が高いらしい。


(でかしたぞ、オーク!オークを含む探索部隊は今すぐウルフ部隊と合流しろ! キノコを子供たちに渡してやるんだ!)


「グルァ!」


暫くして森の茂みがガサガサと揺れる。

子供たちが再び怯えてウルフの毛にしがみつく。茂みから現れたのはキノコを持った[N]オークとそれを率いる[N]ヒーロー・ゴブリン・コマンダーだった。


「……!?」

「ま、魔物だ!」


子供たちはウルフたちに縋りつくようにして叫んだ。


「ブゴッ」

「えっ……?」


[N]オークが子供たちの前にヌッと歩み出る。 巨体と厳つい顔に子供たちが息を呑む。

だが[R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフが「受け取れ」と言うように短く喉を鳴らした。

オークはそっと赤いキノコを少女の前に差し出した。


「あ……これ……!」

「薬になるキノコだ!」


少女がおそるおそるオークの手からキノコを受け取る。

[N]オークは満足げに「ブゴフッ」と鼻を鳴らした。


(ちょうどいい。コマンダー、ウルフ部隊と合流してそのまま子供たちを送り届けてやれ)


俺は探索部隊と狩猟部隊の合同護衛任務を命じた。 [R]ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフに、[N]ヒーロー・ゴブリン・コマンダー、[N]オーク、その他多数の狼たち。

たかだか数人の子供を送るには過剰戦力かもしれない。 だがここは魔境だ。この森では何が起こっても不思議ではない。


「グルァ(総員、護衛陣形!)」

「ガウッ(周りを固めろ)」


二体のヒーローが目配せし、子供たちを中心にしてガッチリとガードを固める。

しかし、子供たちの様子がおかしい。ウルフたちの背中には慣れた様子で乗っているが、新たに加わった[N]ヒーロー・ゴブリン・コマンダーや[N]オークの方をチラチラと見ては、ビクビクと体を震わせている。


「ひぅ……」

「ゴブリン……オーク……」


あぁ、なるほどな。

狼はまだ「大きな犬」として可愛がれる要素があるが、ゴブリンやオークは残念ながら可愛い要素は皆無だ。

特にオークにはさっき野生のやつに襲われたばっかだし……。


(なんで自分たちを襲わないのか理解できないんだろうな……)


子供たちはキノコをくれた[N]オークがいつ豹変して自分たちを喰らうのではないかと、生きた心地がしないようだ。

[N]オークは少し居心地が悪そうに巨大な手でポリポリと頭を掻きながら、子供たちから少し距離を取って歩いていた。


一行は森の出口を目指して進んでいく……。

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