19話
(こいつらのステータスは主力には劣る! だけど数で勝負だ! 1階の全戦力で狂戦士ダインを集中して叩けば、[UC]ランクでも押し切れるかもしれない……!)
俺は2階のコアから1階の防衛部隊全軍に厳命した。
(全軍、侵入者を攻撃! 狂戦士ダインを集中攻撃しろ! ムカデ、スパイダーは天井からだ!)
「「「ギィィィ!」」」
「(カタカタ!)」
(スルスルスル!)
俺の命令を受け、[C]ゴブリンと[UC]スケルトンが壁となってダインに突撃する。
同時に、天井に張り付いていた[UC]大ムカデと[UC]スパイダーが、獲物の頭上めがけて一斉に降下した!
「ハッ! 虫ケラが鬱陶しいんだよ!」
狂戦士ダインが叫ぶ。 彼は[バーサーク]スキルを発動させたのか目を血走らせ大斧を凄まじい速度で振り回した。
大斧が一閃し、突撃した[C]ゴブリン二匹と[UC]スケルトン一匹が、抵抗する間もなく両断される。天井から降下してきた[UC]大ムカデも、地面に着く前に横薙ぎに叩き斬られた。
(!?つ、強い……!?)
「キィ……」
[UC]コボルトたちは仲間の惨状とダインの狂気に怯え、ツルハシを構えたまま後ずさるばかりだ。
そ、そうか……こいつらは戦闘用じゃないからスライムと同じで戦えないんだ!
「雑魚は俺がやる! お前は小さい奴を警戒しろ!」
「言われなくとも」
盗賊ジンはダインの周囲を舞うように移動しながら、防御の薄い[C]ゴブリンの喉を的確に短剣で切り裂いていく。
(まずい……! 数秒で5匹以上やられたぞ!)
このままでは1階の防衛戦力が全滅し、2階まで攻め込まれるのも時間の問題だ。
(主力の帰還まで、とてもじゃないが持たない!)
──こうなったら、賭けだ!
俺は残存している防衛戦力……辛うじてダインの攻撃を避け、壁際に張り付いた[UC]大ムカデ一匹とジンの攻撃範囲から外れていた[UC]スケルトン一匹に意識を集中させた。
(DPはまだ2200ある! 今、ここで進化させる!)
俺は【魔物管理メニュー】を瞬時に開き、二匹のLv.1の魔物に「経験値注入」を強行した。
(レベルアップだ! Lv.1からLv.5まで、一気に上げろ!)
[UC]大ムカデ (Lv.1) → (Lv.5) (150 DP消費)
[UC]スケルトン (Lv.1) → (Lv.5) (150 DP消費)
(合計300 DP消費! 残りDP 1900!)
「グシャァ!?」
「(カシャ!?)」
侵入者の目の前で、生き残った二匹の魔物が眩い光に包まれた。
レベルアップの光が収まるのを待たず、俺は脳裏に表示された【進化リスト】を睨みつける。
(こいつらを[UC]アンコモンから[N]ノーマルレアに進化させれば、あの二人を止められるかもしれない!)
問題は進化先だが……
♢ ♢ ♢
大ムカデ
[アシッド・センチピード]: [強酸液]が強化され、より強力な酸を吐くようになる。DP消費:500 DP
[インビジブル・センチピード]: [壁面移動]が強化され、[隠密]能力を獲得し、奇襲に特化する。DP消費:500 DP
♢ ♢ ♢
スケルトン
[スケルトン・ソルジャー]: 戦闘能力が向上し、武器の扱いがうまくなる。DP消費:500 DP
[スケルトン・ガーディアン]: 防御に特化し、[シールドガード]を習得する。DP消費:500 DP
♢ ♢ ♢
大ムカデは……盗賊ジンがいる以上、[インビジブル]での奇襲は通用しないかもしれない! なら狂戦士ダインの[STR 19]と大斧を受け止め、溶かす![アシッド・センチピード]だ!)
そしてスケルトン!まともに斬り合っても勝てない! 主力が帰還するまでの時間を稼ぐんだ! [スケルトン・ガーディアン]になれ!)
俺は侵入者たちが生き残った魔物を蹂躏する刹那、残存DPに望みを託した。
(いけっ! 進化だ!)
【魔物管理メニュー】から、二匹の[UC]魔物(Lv.5)の進化を強行した。
[N] アシッド・センチピードへの進化 (500 DP消費!)
[N] スケルトン・ガーディアンへの進化 (500 DP消費!)
(合計1000 DP消費! DP残高 900!)
「オラァ! 死ねや、虫ケラァ!」
狂戦士ダインが、壁際に逃げた[UC]大ムカデにとどめを刺そうと、大斧を振り上げる。
その瞬間。 [UC]大ムカデと階段の手前で盾を構えていた[UC]スケルトンが、[UC]ランクとは比較にならない、禍々しくも強烈な[N]ランクの光に包まれた!
「「グオォォォ!?」」
「(カシャシャシャシャ!!)」
進化の光が、1階の防衛フロア全体を圧する。
「な、なんだぁ!? こいつら、戦闘中に……!」
「気を付けろ!この光は……進化か!」
ダインが思わず大斧を振り上げたまま硬直する。 ジンも、警戒して後方へ飛び退いた。
光が収まった時、そこには元の姿はなかった。
「グシュルルルル……」
壁には、[UC]時代より一回りも二回りも大きくなった、おびただしい数の脚を持つムカデ。
甲殻は濡れたように黒光りし、隙間から強烈な酸の匂いが漂っている。 [N] アシッド・センチピードだ。
「カッ……!」
そして2階へ続く階段の入り口を完全に塞ぐように、一体の骸骨が立っていた。
[UC]時代のボロい盾ではない。分厚い鋼鉄製のタワーシールドと全身を覆うプレートメイルを装備している。
眼窩に燃える魂の火が侵入者への敵意で青白く揺らめいていた。 [N] スケルトン・ガーディアンだ。
(おぉ……! これなら!)
俺は二匹の進化したステータスを脳裏に表示させた。
♢ ♢ ♢
名前: アシッド・センチピード
レアリティ: [N] ノーマルレア (進化種)
種別: 戦闘・防衛用魔物
Lv: 5 HP: 110/110 | MP: 30
STR (筋力): 8
VIT (体力): 22
AGI (敏捷): 4
INT (知力): 6
特技
[強酸液 (Lv.3)]: MPを消費し、より強力な酸性の液体を吐きかけ装備品に深刻なダメージを与える。
[酸性外皮 (Lv.1)]: (常時発動)体表を覆う酸の粘液が、物理攻撃を行った武器を低確率で[腐食]させ、耐久度を低下させる。
[壁面移動 (Lv.1)]: 壁や天井を自由に移動できる。
[R] コロシブ・センチピード
進化タイプ: 属性特化
概要: [強酸液]が[腐食液]に進化し、敵のVIT(体力)や防御力を永続的に低下させるデバフ効果を得る。[酸性外皮]が[酸のオーラ]に進化し、接近する敵に持続ダメージを与えるようになる。
[R] センチピード・トラッパー
進化タイプ: 奇襲・罠特化
概要: [壁面移動]能力が向上し、[隠密]スキルを習得する。[強酸液]が[粘着酸]に派生し、敵のAGI(敏捷)を大幅に低下させ、足止めする能力を得る。天井からの奇襲を得意とする。
♢ ♢ ♢
名前: スケルトン・ガーディアン
レアリティ: [N] ノーマルレア (進化種)
種別: 防衛用魔物・アンデッド
Lv: 5 HP: 130/130 | MP: 20
STR (筋力): 10
VIT (体力): 26
AGI (敏捷): 3
INT (知力): 4
特技
[シールドガード (Lv.1)]: MPを消費し大盾の防御力を一定時間引き上げる。物理攻撃のダメージを大幅に軽減する。
[大盾装備 (Lv.1)]: (常時発動)タワーシールドとプレートメイルによる高い物理防御力を得る。
[アンデッド体質 (Lv.1)]: 精神攻撃・毒・睡眠などが効かない。食事不要。
[R] スケルトン・バウォーク
進化タイプ: 防御特化
概要: VIT(体力)が[R]ランクとして極限まで上昇する。[シールドガード]が[フォートレス]に進化し、自身と背後の味方(1名)へのダメージを完全に無効化するスキルを習得する(MP消費大)。[不動](ノックバック無効)のパッシブスキルを得る。
2. [R] スケルトン・パラディン
進化タイプ: 防御・支援
概要: INT(知力)がわずかに上昇し、[大盾装備]を維持したまま[アンデット・ヒール]を習得する。また、[シールドガード]が[リフレクト](ダメージ反射)の追加効果を得て攻撃的な防御が可能になる。
♢ ♢ ♢
(──強い! 特にVIT(体力)が異常だ! これなら狂戦士の攻撃にも耐えられる!)
「チッ……! 進化しやがった!間の悪い!」
盗賊ジンが舌打ちし、再び距離を取る。
「ハッ! デカくなっただけだろうが!どんなに硬くなろうが叩き割ってやる!」
狂戦士ダインは怯むどころかより好戦的に目を輝かせ、進化したばかりの[N] アシッド・センチピードに向かって大斧を構え直した。
(この二人を2階へ上げるわけにはいかない! リナがいるんだ!)
俺は進化したばかりの[N]ランク魔物二匹に厳命する。
(アシッド・センチピード! 階段まで後退! ガーディアンの後ろに陣取れ!スケルトン・ガーディアン! [シールドガード]で死守しろ! センチピードが[強酸液]を撃つ隙を作れ!)
「カッ!」
[N]スケルトン・ガーディアンが命令に応じタワーシールドを突き立て完璧な防御態勢を取る。
「グシュルル!」
[N]アシッド・センチピードがガーディアンの背後に回り込み、巨体の上から侵入者たちを睨みつけた。
「ハッ! デカい盾で道を塞ぐ気か! 無駄だ!」
狂戦士ダインが[バーサーク]状態のまま突撃し、ガーディアンのタワーシールドめがけて大斧を振り下ろした。
凄まじい金属音が響き渡る。 [N]スケルトン・ガーディアンは、[シールドガード]を発動させ、ダイの渾身の一撃を衝撃で後退しながらも確かに受け止めた!
「……ッ!」
ガーディアンの腕が軋むのが伝わってくる。
「ブシャァァァッ!!」
その隙を逃さず、ガーディアンの背後から[N]アシッド・センチピードが[強酸液 (Lv.3)]をダインめがけて吐きかけた。
「うおっ!? チッ、俺の斧が!」
ダインは咄嗟に大斧で酸を防いだが、斧の刃がジュッと音を立てて腐食していく。
「ダイン! 下がれ! あの酸はヤバい!」
盗賊が叫ぶ。
「うるせぇ! こいつらさえぶっ潰せば……!」
ダインは斧の[腐食]に激昂し、さらに大斧を振り回す。
だが、[N]スケルトン・ガーディアンの鉄壁の防御と[N]アシッド・センチピードの執拗な[強酸液]の連携は、さすがの冒険者二人組も攻めあぐねていた。
(よし! これなら主力が帰還するまで……!)
俺がそう確信しかけた、その時だった。
「──チッ。埒が明かねえ」
盗賊ジンが短剣を構え直した。
「ダイン! 10秒稼げ! 俺があのデカい盾ガイコツを無力化する!」
「おうよ!」
ジンが[隠密 (Lv.2)]スキルを発動させ、姿を消した!
(消えた!? まずい、[N]アシッド・センチピードを狙う気か!?)
「お前の相手は俺だァァァ!」
ダインがジンの離脱を援護するように、[バーサーク]の雄叫びと共にガーディアンに猛攻を仕掛ける。
(センチピード! 上だ! 天井に退避しろ!)
俺はセンチピードに命令するが、遅かった。
「シャ!?」
ダインの猛攻を防いでいた[N]スケルトン・ガーディアンの動きが一瞬、不自然に止まった。
足元……鎧の隙間にいつの間にか姿を現したジンが短剣を突き立てていた!
「ノロマが!」
ジンがガーディアンの足の腱にあたる骨の接合部を破壊する。
[N]スケルトン・ガーディアンがタワーシールドを持ったまま、ガクンと膝をついた!
「グシュァァァ!」
[N]アシッド・センチピードが慌ててジンに酸を吐きかけようとする。
「死ね、虫ケラ!」
ダインが、膝をついたガーディアンを弾き飛ばし、がら空きになったセンチピード本体に肉薄する。
(しまった……!? )
[N]ランク二匹による防衛ラインが熟練した冒険者の連携によって破壊されていく。
二匹は健闘している。だが相手は実践慣れしすぎている……!
(くそっ! DPはまだ900ある! 何か、何かできることはないのか!?)
俺が焦りながら脳裏のメニューを必死で探したその時だった。
ある項目がリストに追加されているのを俺は見つけた。
♢ ♢ ♢
【生成リスト:召喚】
一般魔物ガチャ([C]コモン) …… 5 DP
下級魔物ガチャ([UC]アンコモン) …… 50 DP
中級魔物ガチャ([N]ノーマル) …… 500 DP (NEW!)
コモン装備ガチャ …… 30 DP
♢ ♢ ♢
([N]ノーマルガチャ!? 500 DP……!)
俺は膝をつかされた[N]スケルトン・ガーディアンと大斧に狙われた[N]アシッド・センチピードを見つめる。
残りDPは……900。
(まだある! 一回だけ……ひける!)
♢ ♢ ♢
[現在の拠点状況]
拠点名: (未設定・円形の塔)
階層: 2階建て
DP: 900
訪問者: 1名
侵入者:2名
召喚中: (1階防衛部隊が交戦・劣勢)
[UC]ヒーロー・ゴブリンファイター(ゴブリン部隊リーダー)
[N]ダイアウルフ(ウルフ部隊リーダー)
[N]アシッド・センチピード (劣勢)
[N]スケルトン・ガーディアン (劣勢)
その他: 1階防衛フロアに冒険者2名が侵入中。主力部隊は拠点外。
♢ ♢ ♢




