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リオナと約束の唄  作者: 月森 かれん


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1/9

プロローグ

 とても、とても昔のお話です。


 まだこの海辺の村が、ほんの三十人ほどの人々しかいなかった頃。

村人たちは海に生き、海に糧を求めて暮らしていました。


 けれどその海は、いつも優しいとは限りません。

急に空が暗くなり、荒れ狂う波が船をさらっていく――

そんな嵐に、何人もの命が奪われていました。


 ある夜のこと。

村長は浜辺に立ち、月明かりに照らされた海を見つめながら、ひとり静かに祈っていました。


 「どうか、もうこれ以上、大切な者たちを海に奪わないでください」と。


 そのときです。

波間から、ひとりの青年が現れました。

上半身は人の姿、下半身は魚の尾――それは、海に棲む種族・マーフォークの青年でした。



 彼は村長の願いを聞き、海神のもとへ赴きました。

そして、こう交渉したのです。


 「我らマーフォークが夜ごと唄を歌い、嵐を鎮めよう。

その代わり、人間たちには年に一度、供物を捧げてもらいたい」


 村人たちは大いに喜び、この約束を受け入れました。

その日から、夜の海には不思議な唄が響くようになり、嵐に命を奪われることも減っていったのです。


 けれど――

長い年月のあいだに、人々はこの約束を忘れてしまいました。

供物の儀式も、“唄”の意味すらも……。


 唯一残ったのは、夜の海からかすかに聞こえる不思議な唄だけ。

人々はそれを“災いの声”と呼ぶようになりました。

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