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元社会人配信者、ダンジョン芸術で食っていく 〜娘にバレずにゴスロリ姿で世界救ってました〜  作者: 製本業者


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13/40

13. 世界最強……だった

連携スキルが発動。シンクロする動きに、視聴者も少女も揺れ始める

なぜ、ここまでシンクロ出来るの?

少女の思いは尽きない。

──インゲン視点──


閃光の直前、あたしは無意識に身体をひねって跳んだ。


反射的にFA-MASを手放して、爆風を避ける。

焼けた金属とオゾン臭が混ざる空気の中、回避に失敗していたら吹き飛んでいたかもしれない。

重低音が腹に響く。キューブの一体が、内部から崩壊するように砕けていった。


パンダ──いや、イーヴンの仮面が、白黒の縁をわずかに傾けてこっちを見た。


「おい、無事か!」

「だ、大丈夫……そっちこそ!」

「耳がキーンってしてるけど……まあ、許容範囲」


その声は、仮面越しでもどこか気遣いに満ちていて──懐かしかった。

あたしはゼェゼェ息をしながら、イーヴンの姿を見る。

右腕に抱えていたのは……あたしのM29。

弾倉の匂い、火薬の臭い。ついさっきまで撃っていた。

9mmパラベラム弾じゃあ貫通できても壊しきれないって思って渡した、映画だと世界一強力って宣伝してた銃。


だけど――

(なんで……なんで、そんなに自然なの?)


「三発しか入ってなかったな」

そう呟いて、彼は少しだけ口元を緩めると、リボルバーの弾倉をスイングアウトし、流れるような動作でロッドを押して排莢する。

「さっきも言ったけど、反動で跳ね上がって……自分の顔に向いたら、危ないからな」

そして、手渡しした44マグナム弾を、一発ずつ、わざと一発分だけあけて詰めていく。


──そのやり方。

それ、パパが昔……あたしに教えてくれた、やつじゃん。

それも、偶然じゃ無く、馴染んでる。


胸が、ぎゅっと締めつけられる。

違う。違うはずなのに。

けど──なんで、そんなことまで……


(まさか、やっぱり……)


言葉にできない何かが、喉元でつかえていた。


◇ ◆ ◇


コアキューブ・レヴは、まだ沈んではいない。

外殻をマグナムで吹き飛ばされた中央部が、むき出しの状態で宙に浮かんでいる。

赤黒いコアが回転しながら、異音とともに最後のフェーズへと移行する。


「来るぞ──!」

「うん!」


イーヴンの叫びと同時に、あたしはM29を再びホルスターに戻し、FA-MASを構えた。


だがその時──


【配信者ネーム:Even Laive、連携確認。仮想ギミックモード〈シンクロ・フレア〉を発動可能です】


HUD越しに、ギミックからの通知が現れた。


(まさか……!)


あたしとイーヴンが、同じタイミングで飛び出す。

あたしが跳び、イーヴンが滑る。


まるで台本があるかのように、フリルとヘッドセットが舞う。

そしてあたしが駆け、イーヴンが舞う。


ゴスロリとSWAT、そして──絶妙な軌道。視聴者リスナーのコメントが炸裂する。


『連携スキル!?』

『いや、これガチで親子じゃね?』

『#完璧すぎるコンビネーション』

『#動きがシンクロしてる』

『#大熊猫と青い鳥』

『#最強の遺伝子』


──もう、どう返していいかわからない。


でも、あたしの身体は自然と動いていた。


「Go ahead, make may day!」

イーヴンはそう叫ぶと敵の死角へと滑り込み、同時にあたしが牽制射撃。

そして──イーヴンの右手が、赤いコアのど真ん中に、ナイフを突き立てる。


【──ターゲット、沈黙。配信映像記録、終了範囲に到達しました】


空間に響いたのは、機械音だけだった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「いやぁ……やっと終わったな」

仮面越しに汗を拭きながら、俺は視線を向けた。

インゲンは、何かを言いたげに口を開きかけて、また閉じた。


(言いたいこと、あるよな。……でも、まだ言わないんだな)


「さーて、後は〆のコメントと、バズりタグの確認でもするかーっと」

軽口を叩いて、HUDのコメント欄に目をやる。


──その中に、ぽつんと、ひときわ目を引く文字列が流れてきた。


『……お父さん?』


「ぶっ──!?」

思わず、声が裏返った。

ピキィンとカメラが動揺を拾って、画面が微妙にブレる。


──同時に、画面のコメント欄が爆発的に加速する。


『#親子説再浮上』

『絶対パパって呼んでたろ今!』

『パンダと青い鳥、完全に家族構成』

『#DNA検査しよ』

『中の人同じ説まだ生きてるぞ!?』


「ちょ、やめろやめろ。ネタが暴走しとる!」


俺は仮面の奥で額を押さえながら、苦笑するしかなかった。


(こんな流れ、一番動揺してんの俺だよ……)


だけど、画面の隅で映る青い鳥ことインゲンは、ただ沈黙していた。

彼女の横顔からは、笑いもツッコミも返ってこなかった。

その“無言”が、視聴者には届かない。だが、俺には痛いほどわかってしまう。


(……頼む。今はまだ、聞かないでくれ)


「いやいやいやいや、俺にこんな可愛い娘なんていねぇってばよ!?」

場を変えるべく笑いながらツッコむが、視線の端で……

インゲンの表情が、ぐらりと揺れるのが見えた。


(あ……)


……やば。


仮面越しでも、わかってしまう。

あの一言が、何かを突き刺したのだと。

でも──どうして、そんな顔を。


(お前が、そこまで俺に……?)


いや、違う。

俺は彼女のパパじゃない。もう、その資格はない。


でも──


(それでも、名前を呼ばれるたびに、胸が痛いのは……なんなんだよ)


【To be continued】



今回もお読みいただき、ありがとうございます!

仮面越しの視線、スライドリロード、連携技……

見ている人間にはネタに見えても、ふたりにとっては記憶の断片そのもの。

次回は、配信終了後の静けさの中で、それぞれが自分と向き合う時間が描かれます。

ぜひ、もう少しだけ彼らに寄り添っていただければ嬉しいです。

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