第十九話
「よし」
オリジナルとシャドウはモニターの数値を見て頷いた。
「良好だな。これなら上手く結合してくれそうだが」
「ああ。あとは分裂が設計通りの成型を保てる粘度の平均値が分かればひとまずは成功だ」
オリジナルは手を洗って拭きながらシャドウに聞いた。
「分裂機の生産の方は問題ないか?」
「大丈夫だ。こっちは一度作れているし、あとは数だけだ。既に三十機程できている」
「そうか」
オリジナルは周囲を見回してため息をついた。
「問題はこっちか」
「……そうだな」
悟の研究を手伝ってくれるスタッフは誰一人いなかった。オリジナルは仕方無くシャドウに来てもらった。
隆がいなくなってから、研究所のメンバーからはいまいちやる気が感じられない。リーダーの不在。実は隆のために頑張っていた者もスタッフの中には多かった。
俺達は今何のために頑張っているんだろう……。そう思う者が現れると全体の士気が落ちる。技術ができても熱意が無ければ計画は成功しない。
佐藤隆はこの計画の魂だったのだ。
数週間後、悟の家に茂も含め四人で集まった。
「何か話があるって?」
「はい」
「何だ、改まって」
「この前、若と女の子が話してて少し考えていたんです。僕は何のために頑張っているんだろうかって」
「それは……人類のためだろ?」
「父はそうでした。でも僕は……どうやら違ったみたいです。急に分からなくなった」
「そうなのか?」
「ええ。でも、父を看取ったあの時の事を思い出したら答えが出ました」
悟達三人は見合わせた。
「自分のためか?」
茂は首を振った。
「僕は……父に月に行って欲しくて頑張っていたんです。移住計画自体、父が始めた計画です。希望に燃えて月を目指す父の背中を見ていたかった。他の仲間もそうです。父は人類のためにってよく言ってました。皆もそうだと思ってたけど、本当は皆は父のために頑張ってたんだって気付いたんです。皆、父が成功して世界から祝福されるのを見たかった」
そう言って、茂はアルバムを出した。そこには訓練用の宇宙服を着た隆が詩織やスタッフと共に笑顔を見せているたくさんの写真があった。
「先日、遺品整理をしていたら父のその宇宙服が出て来ました。そこにこれがくっついていたんです。それを見て、僕はこれしか無いって思ったんです」
茂はビニールに入れた髪の毛を取り出した。
「おい、まさか……」
茂は頷いた。
「若い時の佐藤隆をもう一度、複製してくれませんか。僕はどうしても父が月に行く所を見たい」




