第十八話
隆が倒れた。茂達が病院に駆けつけると、病室で人工呼吸器を付けて眠っていた。
「母さん」
先に来ていた詩織は頷いた。
「肺炎だそうよ。でも、あまり良くはないみたい」
「そんな」
まだ素材は完成していない。隆が生きているうちに茂と悟は完成させたかった。
「今回も失敗か」
研究所で、シャドウは表示された数値を見て呟いた。スタッフも印刷された紙を見て頭を掻いた。
「なかなか上手くいきませんね」
「ああ。もう少しここの数値を上げてみよう。粘度が上がって安定するかもしれない」
「分かりました」
「悟さん!」
茂が顔色を変えて走って来た。
「どうした?」
「父の容態が良くないそうです。すぐ来てくれって」
「何?」
シャドウと茂が病室に駆けつけると、隆の周りで医療スタッフが対応している中、詩織が隆の手を握っていた。
「悟さん」
「おい嘘だろ、これからだってのに」
近付くと隆がもう片方の手を上げた。茂が隆の手を握った。
「見え……るか……」
「え?」
「父さんな……あそこに、行くんだぞ……」
隆は今どこにいるか分からないようだった。
「父さん」
「隆!」
「皆を……連れてってやる……」
そう言って隆は目を閉じた。
「そんな……」
詩織は手を握ったままうなだれた。
医療器具の機械音だけが静かに規則正しく鳴っていた。




