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第十四話

 佐藤茂は目を覚ますと口元のマスクを外し、タンクを降りた。

「あれ? ここは……僕は確か銃で撃たれて……」

「目が覚めたか」

 茂が顔を上げるとシャドウが立っている。

「おじさん」

「どこも異常は無いか?」

「え? ええ……」

 茂は少し体を動かしてみた。

「大丈夫です」

「そうか。どこまで覚えてる?」

「えっと、確か金を渡しに行ったら銃で撃たれてしまって……死……え?」

 今まで気付かなかったがシャドウの後ろにそっくりな男とよく似た若者が立っている。

「あれ? おじさんて双子なんでしたっけ? あれ……え、ちょっと待って」

 茂は自分が今とんでもない状況にいる事が少しずつ分かって来た。茂は撃たれた場所を恐る恐る触ってみた。傷が無い。

「え、ちょっと待って。まさか……まさかまさか!」

「よう。生き返った気分はどうだい?」


 状況を説明された茂は自分の死体を見ながら椅子に座っていた。

「僕、本当に二人目なんですね」

「ああそうだ。君を助けるにはこれしか無かった。許してくれ」

「許すも何も、おじさんは僕の命の恩人なんですから。感謝しか無いです」

 若は嬉しそうに言った。

「お、意外と飲み込みが早いね」

「この死体を葬って、僕が黙っていればそれでいいって事ですね?」

「そうだ。できるか?」

 茂は死体を見て涙をこぼした後、頷いた。

「はい。誰にも言いません」


 庭で茂の遺体を火葬した。シャドウは茂に言った。

「腹立つだろうが……復讐なんて考えるなよ」

「はい。あいつはもういいんです。僕のこれからの人生には関係ありませんから」

 茂はパチパチと音を立てる火に照らされながら、シャドウを見て言った。

「もう一度もらったこの命、大切にします」

「ああ」


 佐藤隆が作った無人ロケットは無事月に着陸し、もう一度飛んで地球に帰還する事が出来た。これでもう一度ロケットを作れば月に行く事が出来る。隆達は喜びに包まれた。ニュースでも大きく取り上げられ、色んな人から祝福のメールが届いた。


 夜空の星が輝く丘で、隆と詩織が余韻に浸っていた。

「ついにここまで来たな」

「おめでとう隆」

「ありがとう。でも俺の目的はまだまだ先なんだよ」

「月に降り立つのが目的?」

「それだけじゃない」

 隆が月を手で包み込んだ。

「あそこに皆で住むんだ。人類を月に連れて行く。それが俺の目的だ」

「隆……」

「分かってるよ詩織。俺はもう年だ。月に行く体力は残ってない。生きてるうちに叶えたかったけどな。残念だよ」

「それでもロケットは出来たんだもの。後に続いてくれる人がいるわ」

「茂か」

「……ええ。あの子ならきっと」

 二人は夜空を見上げた。星々が美しく輝いている。隆は微笑みながら呟いた。

「人間てのはちっぽけだな」

 二人は肩を寄せ合った。

「それでも悪あがきして、少しずつ……前に進むのが人間よ」

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