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第十三話

 遠山悟が目を覚ますと、口元のマスクを外し、タンクからゆっくりと出て床に降りた。

「ここは……?」

「異常は無いかしら?」

「え?」

 悟が顔を上げると白衣を着た若い女性が立っている。

「手足を動かしてみて。どこかおかしい所は無い?」

「え? ああ……」

 言われるがままに少し動いてみた。

「特に異常は無いみたいだけど」

「そう。良かったわ。おめでとう」

「どうも……」

「……」

 女は念入りに悟の体を見てクリップボードに何か記入している。

 二十五歳の悟には研究所前の記憶しか無い。悟は周囲を見回した。

(ここはどこだ? 研究所じゃないな)

「あの……」

「なに?」

「君は誰なんだ?」

「私? 私は遥よ」

「……? はあ」

 悟はいまいち状況が読み込めない。

「目が覚めたか」

 ドアが開いて白衣の男が入って来た。

「やあ悟。問題無いか?」

「大丈夫だ。あんた、俺だな?」

 白髪の白衣の男はニヤッと笑った。

「ああそうだ。俺は今、六十九歳だ。言っただろ遥、若い俺はイケメンだって」

「そうね。悪くないわ」

「悟、状況を説明する。そこの服を着たら外の部屋に来てくれ」

「服?」

 悟は遥と目が合うと急に恥ずかしくなり、急いで服を着てサンダルを履いて部屋を出た。

 先を行く老いた悟に続く。白い半円状の通路が続いている。何の建材かは分からない。

「研究所じゃないのか?」

「新しく建てたんだ」

「ふーん」

 しばらく歩くと、先を歩く老いた悟が左側にある部屋のドアを開けた。

「ここだ。入ってくれ」

 言われるがままに部屋に入ると、ソファや簡易なキッチンが備え付けられた六帖程の部屋だった。五十歳くらいの中年の男と、四十歳くらいの女が部屋にある椅子に向かい合って座って話をしている。

「連れて来たぞ」

 老いた悟がソファに座っている男に声をかけると、中年の男は悟に挨拶した。

「やあ」

「どうも……?」

 言われるがままに挨拶を返す。後ろでドアが開いて遥も部屋に入って来た。

「なんだ、俺の顔を忘れちまうなんてひどいじゃないか? ここがどこだか分かるか?」

「いや……」

 老いた悟がニヤニヤしている。

「窓の外を見てみろよ」

 悟が窓のカーテンを開けると悟は驚いて息を呑んだ。

「え!? こ、ここは……お、お前まさか」

 青黒い空に鮮やかに地球が見える。

「そうそう、その顔が見たかったんだよ。ここは月だ。俺は佐藤隆だよ。そこにいるのは遠山遥。悟の娘だ」

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