20 自滅の迷い路
文化祭の前に崩れた、塾と図書館のルーティンをどう立て直すかは悩みの種だった。文化祭の直前は、シュウと学校の近くの図書館で待ち合わせていた。
槙村の思わせぶりな話や、シュウとの朝のやり取りも含めて、映有の心は疲弊していた。問題は遠ざける方がラクだ。今は、関わった分だけ疲れる。
シュウに対して特別な感情を持っていることは否定しない。しかし、それを今、恋心と認めるのは、嫌だった。
「塾の自習室、今日一緒に行こうかな… 」
弁当を食べながら、かすみに呟いた。
「図書館じゃなく?」
自転車で通学している時は、塾の受講日以外に塾まで地下鉄で行くのは嫌だった。学校の最寄り駅に自転車を置いて、塾帰りに自転車のある駅に戻って自転車に乗り直すのは面倒だからだ。
「うん… 」
「文化祭の日、何があったの?」
「ああ… 」
かすみに話すレベルの話なのかと考えると気が重い。
「ん?」
「要約すると、ちょっといい関係だなって思ってた関係が、私の独りよがりだなと再認識して、受験生たるもの浮わつくべきじゃないなって結論づけるまでに、精神的にアップダウンを繰り返してた、って感じ」
「… なるほど… 今は落ち着いたってことね… 」
かすみはため息を吐いた。
「それは、あの男の話しだよね。かすみちゃんに愚痴りたいことある? 協力して欲しいこととか? "Previously on Hal's Life"的な要約じゃなく、オチのない話でも聞くよ?」
海外ドラマ通のかすみらしい言い方に思わず吹き出した。場の雰囲気を変えてくれるかすみに感謝する。こういうところは、かすみと槙村は似ている。
「やっさんをベンチマークに、距離感を取ろうと思ってる」
かすみのおかげで、冷静に明るく話せる。
「やっさん?」
かすみが反復する。
「クラスメイトでも、まあまあ仲いい部類じゃん。つかず離れず」
「あのヤスシ? 大谷泰? 私の幼馴染で? お調子モンの? 脳筋の?」
散々な言われようだが、笑いながら頷く。
「ベンチマークね… ヤスシとか楢崎みたいなって意味ね。わからんでもない。わかった。ハルがそう思うから、その部類として扱うのに協力する」
かすみはそう言って映有の背中を叩く。
「他には?」
「ん… 」
まだ、ケリがついてないことがある。
「あのさ… 人として好きだなって思っていて、特別っぽい扱いを受けたら、ちょっと勘違いするよね?」
「… おう… 」
かすみが黙り込む。
「… 言ったこっちゃない、だよね。私も振り回されすぎだ」
かすみの沈黙を自嘲で遮った。
「う〜ん… 」
キーンコーン
「やば、予鈴だ… とりあえず、自習室、一緒に行こ」
弁当箱を手早く片付けると、かすみに急かされるように歯磨きに立ち上がった。
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かすみ: ハル、なんか勘違いしてる
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泰: どういう?
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かすみ: 白鳥、押すなら押せ、と思う
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泰: めんどくさい男なんだってば 顔はいいけどよw
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かすみ: ハルが一人で悩んだり傷ついたりしてて、白鳥なんかムカつく
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泰: シュウもなんか考えてんじゃね? 知らんけど
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かすみ: 無責任男!!(anger symbol)
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泰: オレのこと?
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かすみ: あんたも!
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泰: 当人同士で解決するしかねーじゃん 首ツッコミすぎんな
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かすみ: (angry face)
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マキ: 今朝、珍しく早かったじゃん。後ろから見守った
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マキ: おい! 既読つけたら、返事してよ
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SHU: おう
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マキ: 気の利く親友に感謝してる?
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SHU: おう
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マキ: ちゃんと会話した方がいいと思うぜ?
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マキ: これには、「おう」はないのかよ、、
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泰: おす 今朝、オレ、お邪魔だった?
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SHU: むしろ、気の利く男だった?
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泰: まだ、起きてる? 昼間の話、やっぱ、問題ねえ
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かすみ: どういう意味よ?
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泰: 面倒くせー男なだけって話
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