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三題噺もどき3

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくにじゅういち。

 


 冷たい風が足元だけを冷やしていく。


 今月ももう後半に入ろうと言うのに、未だに暑い日々が続く。

 今夜は特に寝苦しい。雨が降ったりやんだりしていたせいで、蒸し暑くて仕方ない。

 扇風機を点けてはいるが、寝るときに顔に風が来たりするのは嫌なので、首を回さずに、足元だけに風を送っている。それだって、直接あたるのは気になるので夏用の布団をかぶったうえで冷やしている。さすがに暑さは少し残るが、ないよりはましだ。

「……」

 真っ暗な中、スマホを開き、画面とにらめっこをしている。

 写っているのが、ゲーム画面とか動画とかだったらよかったのに。

 そこに並んでいるのは、2色のふきだしと、デフォルトで設定されたままの背景。

 会話は、画面左側からのふきだして止まっており、こちらからの返信が終わっていないことを示している。

「……」

 パタリと、スマホを一度布団の上に置く。

 画面を見るのが疲れてきた。

 真っ暗な中なので、光がかなり強いのだろう。気分が悪くなってきた。

「……」

 最近、テレビすら見るのがつらくなってきている。

 内容が辛いとか面白くないとか、そういうのではなくて。

 チカチカと光が移り変わるのが行けないのか、どうにも見ていると気分が悪くなるのだ。

「……」

 以前は何もなかったのに、ここ数日程、数10分みていただけで気分が悪くなっていく。

 おかげで動画を見たりするのもつらくなってきている。ゲーム実況を見たりするのが好きなのに、それができなくなりつつあるのだ。元々画面酔いをしやすい方ではあったが、あまりにもひどすぎるのだ。まだ、声だけで楽しめるからマシではあるのかもしれないけど。

 ゲームも長時間はやっていられない。楽しみが減らされているようで、心なし、いろんなものが削れているような感覚が、しなくもない。

「……」

 目の奥が少し痛い。

 気持ち悪さは多少マシになったが、まだ見れそうにない。

 返事の内容でも考えながら回復を待ってみよう。

「……」

 しかし、毎度毎度。

 こうして、返信の内容にこんなに困るのも疲れるものだ。どうしてあんなに早く返信ができるんだろうな……。電話は苦手なので、そのほかの連絡ツールを使えるのはありがたいが、それはそれで色々と考えてしまう。気分を害さないかとか、文章がおかしくないかとか、変な言葉じゃないだろうかとか、そんなに気にすることでなくても、気にしてしまう。

「……」

 了承の連絡だったら、まぁ、もう少しすんなり返信できたと思うんだけど。

 今回は、どうしても断らないといけないもので……どういったものかと頭を抱えている。

 あの人に弱みを握られているわけでもないのに、断ると言う行為自体が悪のように思えてしまう。そんなことはないはずなのに。全部、あちらの勝手な都合だ。

「……」

 そもそも、こんな真夜中に連絡してくるような人の時点で、あちらに常識がないのは明らかではあると思うんだけど。まぁ、大前提として、辞めた人間に手伝いを頼むのがおかしい。と、思っているが、その辺は他で働いたことがないので、よくわからない。

「……」

 先月末も、働きに行ったのに。

 来週再来週の土日に手伝いに来てくれないかと。

 こんな真夜中の時間に連絡が来た。

「……」

 うん。やっぱり色々とおかしいよなぁ。

 返事をしないわけにはいかないから、断りの連絡はもちろん入れるけれど……今返信するのも、遅い時間だからなぁ。どうしたものか。

 最悪、明日の朝でもいいにはいいと思うんだけど、でも、この感じだとあちらに既読の文字がついてしまっているから……こういう時にあの機能は困る。既読無視とかいう言葉が生まれたぐらいだから。

「……」

 なんで断ると言うことだけで、こんなに頭を抱えているのか。

 自分でも分からないくらいに、頭が痛くなりそうだ。

 どうして、辞めた後も仕事のことを考えないといけないんだろうか。何のために辞めたんだか……まぁ、あれもこれも自分が悪いのかもしれないけど。

「……」

 あーでも駄目だなぁ。

 今はもう、スマホの画面を見れる状態まで回復しそうにない。

 色々と考えている間にも、居残る気持ち悪さはどうにもならなさそうだ。

「……」

 どちらにせよ、この時間に連絡をするのは、失礼だろうから。

 明日の朝にでも、連絡を取る用にしよう。

 その方が、思考もしっかりと回って、まともな返事ができるかもしれない。

 断るだけの返事に、まともも何もないかもしれないけど。







 お題:弱み・真夜中・テレビ

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