第523話検証について
ウィリィンの返答に皆一瞬あっけにとられたようであったが、復帰して説明を再開し始めた。
炎は燃焼するために酸素が必要である。
まあ、魔法の場合その過程なくして生み出すことも可能であるが、自然にあるものや法則を利用することで効率を上げることが期待できる。
今回はその観点で使用する魔力量あたりにおける炎の熱量がどのように変化するかを実験しつつ、実用に耐えうるかを評価するようだ。
「勿論、他にも燃料を別途用意するとか、炎の形状等、考慮できる点は色々ありますが、今回は酸素の供給、その一点に絞らせて貰っています」
ウィリィンはうんうんと頷く。
検証では比較したい項目以外は基本的に条件を揃えておく必要がある。
そうでなければ項目の差異によってどれぐらいの変化が発生したかが不明瞭になってしまうからだ。
目的は炎の熱量向上であり、部員が述べたように複合的な要素を加味して出力の向上を目指すことになるのだが、それはもっと後の段階ということだろう。
まあ、これらは周知の内容であるため、ウィリィンが今回の話題以外のことを話して場を乱してしまわないようにという配慮である。
「そして、今の現状ですが、均一に生み出した炎に対して、酸素を送り、その熱量を計算しています」
「ウィリィン様、何か気になることがある様子。
少し質問する時間を取らせてもらえますか?」
「いやいや、そんな。
検証に使われている手法のお話でなので私以外は分かってることに時間を取らせるのは...」
ナタトの気遣いに対してウィリィンは遠慮する。
「聞いておきなさいな。
なるべく疑問点が少ない方が検証内容についてしっかり考えられるわ。
いいわよね?」
ギャマナは部員に対して目配せする。
「は、はい勿論です」
ということで、ウィリィンは質問をし始める。
「質問は2つあって、
1つ目は均一な炎の作り方です。
人の手でやると、どうしても差が生まれてしまうと思うのですが、どうやって同じ出力を行っているのでしょうか?」
均一な炎に対しての疑問である。
手動で行ってしまうと、どれだけ意識しても毎回の出力に差が生まれてしまう。
「ああ、それはこちらの魔道具を使用してます。
こちらを通じて魔法を使うと、一定以上の出力は霧散するような仕掛けになっています。
使ってみますか?」
「あ、ありがとうございます」
ウィリィンは指輪型の魔道具を渡され、それを装着する。
そして炎を弱い出力から少しずつ強くしていくと、一定以上から魔力を込めても一切変化しなくなった。
中の機構が一定以上の魔力が入ってくると他の出口から放出しているのが確認できる。
「あ、あまり強く込めすぎると壊れてしまうので、程々にお願いします」
「は、はい」
ウィリィンは様子を見つつも強くしていた魔力の供給を引っ込める。
まあ、あまり強く込めるつもりはそもそも無かったが、込めすぎると壊れると言われると明確に意識してしまう。
「ちなみに、他の魔法もできるのですか?」
「いえ、この魔道具は炎だけですね。
他の魔法を出したい場合は同じような魔道具を使うか、値は張りますが、どんな魔法でも出力を同じにすることができる魔導具を使います」
「これよ。
これをつけた人同士で戦うと結構楽しいわよ?」
隣にいるギャマナがウィリィンの指から炎用の魔道具を外し、自身の同じ指輪型の魔道具を指へとつける。
ウィリィンが色々魔法を発動してみると、全て同じ威力になった。
「はい、十分確認できました。
ありがとうございます」
ウィリィンは一通り確認できたのでギャマナに指輪を返そうとするが、
「帰る直前でいいわよ。
ウィリィンちゃんが検証する時に使うでしょう?
それより2つ目の疑問について話しなさいな」
ギャマナはウィリィンから返却を断りつつ、話すように促す。
「2つ目は、熱量の計測方法についてです。
どのような原理で行われているのかが気になりました」
「・・・ウィリィン様は様々なことに疑問を持ち、理解しようとなさるのですね。
その知的好奇心と行動力が強さの源でしょうか」
ウィリィンの他の同世代とは思えないような思慮深さにナタトは感想を漏らす。
まあ、確かに同世代の子であれば気になるのはもっと派手であったりすることで、原理的な部分に興味を持って、しっかり納得した上で力に結び付けようとする様子は良い意味で異質に映ったようだ。
「っと、すみません、遮ってしまいましたね。
解説をお願いできますか?」
「あ、はい。
こちらの的に当てて、計測しています。
熱を吸収する素材で出来ていて、熱を吸収すると、その分体積が増えます。
その増える量を計測するんです。
それを定量化した値がここに出力されます。
熱は温度も大切なのですが、ひとまずは熱量の方を計測しています」
熱を吸収し、体積が変化する素材を使用するようだ。
温度と熱量の関係であるが、同じ熱量であっても1滴90度の水が当たれば火傷するかもしれないが、40度バケツ1杯の水を浴びてもなんとも思わないことを想像すれば分かりやすいだろう。




