第513話大きな扉
そのために敢えて全体を攻撃することも可能であるにも関わらず、ウィリィン単体にターゲットを絞り、威力を集約させることで確実に葬るつもりなのだ。
「狙いは悪くないね。
ちなみに、話は変わるけど、お前って、この攻撃はすり抜けてても当たるんじゃないかな?」
ウィリィンは黒い悪魔が攻撃してくる前に先制して魔法を炸裂させる。
「っ!?グギャギャギャギャギャ!?」
ウィリィンが行ったのは閃光と音の爆弾である。
黒い悪魔は苦しそうに眼と耳を抑え、悶えている。
そして、溜めていた攻撃は集中力が途切れたことで不発に終わってしまった。
「んお?なになにー?」
「みえなーい」
「きこえなーい」
当然他の子達には防護できる装備を攻撃寸前に装着させた。
ウィリィンは魔法を放って、牽制をしている際に明るいものを見た時に目を細めたり、音に対して反応しているのをしっかりと確認していた。
まあ、そもそもすり抜けている最中も喋った笑い声は聞こえていたし、眼の付いている部分しか認識できていなかった様子からほぼ確証は得られていた。
だが、ひとまずは正攻法で攻めた後にこういった最後の悪あがきに対して使うことで、うまく潰すことができた。
「ほら、攻撃をって、外さないと見えないし、聞こえないか。
いくよっ」
ウィリィンは子供達の目と耳を守っている防護を取り外し、再度攻撃を呼びかける。
「おー」
「おおー」
「とりゃー」
ウィリィンの掛け声とともに今度こそ、総攻撃を開始する。
大技に失敗し、思いっきり隙を晒した黒い悪魔に成す術があるわけもなく、そのままボコられて、塵となって消えた。
そして床には綺麗な鍵だけが残された。
「勝ちー」
「やったー」
「いえー」
カチッ
「え?」
「お?」
「ん?」
「ふぇ?」
ドゴーン、ゴロゴロゴロゴロ
「まじかっ、逃げるよっ」
「あいさ」
「ほいさ」
「一目さーん」
行き止まりの壁の上部から道一杯の鉄球が落ちてきた。
それは平地であるにも関わらず、ウィリィン達の方へと転がってきた。
ウィリィンは素早く鍵を回収し、子供達を逃げるように急かす。
本来であれば先頭を走りたいところであるが、
「あびゃっ!?」
「回収っ。
立てるようになったらまた走ってっ」
「ありがと、ウィリィンー」
このように罠にかかって転んだり、行動不能になった子らを救出して、抱えて走る必要があるため、最後尾を走らざるを得ない。
鉄球の重さは大きさからして確実にぺしゃんこにされてしまう。
それに置いていってしまうと後からの回収には一度この鉄球をどうにかする必要があり、はぐれた際の行動も予測出来ないのでやりたくない。
「落とし穴に身を潜めてやり過ごすのも思いついたけど、それはそれでリスク高そうなんだよなっ」
鉄球が通り過ぎれば安全とは限らない。
鉄球の終着点がゴールへと続く道といった可能性は否定できず、そもそも落とし穴はかかった子が脱した際に閉じてしまっており、再度開くのかまでは検証していない。
また、これを破壊するという手もあるのだが、ウィリィン達の方を未だに追いかけている時点で確実に魔力によって強化されている。
であるならば、逃げたほうが良いと判断した。
そして、最終的には鉄球が通れないぐらいの大きさの部屋へと辿り着き、
ドゴーン!!!!!!
後ろから迫ってきていた鉄球はその入口に突っ込み、そのまま塞いでしまった。
「ふう、変にやり過ごしてたらここの道には入れなかったということだよね。
この選択が当たりだといいけど・・・」
「ふう、ふう。
危なかったー」
「鉄球凄かったー」
「ギリギリー」
子供達は戦闘からの逃走で割と体力を使っており、かなり消耗気味のようだ。
ウィリィンは周りを観察しながら子供達の回復を待つことにする。
そして、息が整ってくると、再度探索を再開する。
といっても先ほどの道中同様に罠や、敵との遭遇があるだけで、それほど凝ったものでもない。
分かれ道はまあまああって迷路も本格的になってきているが、ウィリィンはしっかりと脳内で通った道を覚えており、迷うことは無く、既に探索が済んでいるエリアに関しては進まないようにしている。
子供達も探索に慣れてきたのか、罠を見分けられるようになってきたり、敵との戦いでも反撃を受けにくい立ち回りを見せ始めている。
まあ、攻撃を受けても生き生きしているので、喰らおうが喰らわなかろうがどちらでも良いのかもしれないが。
「お、これは・・・」
「扉―」
「大きい―」
「何かいそうー」
見るからに何かがいそうな大きな扉がウィリィン達の前に現れた。
恐らくであるが、ここの中にボスとなるような相手がいるのだろう。
また、扉には4か所離れた位置に手をかざすような場所が存在しており、全員で押すように促されている。
「いこいこー」
「私ここー」
「ウィリィン早くー」
「あ、うん」
ウィリィンは促されるままに扉に手をかける。
手をかけるたびにその場所に光がつき、4つ点灯すると、扉全体が紋様を描いて輝きだし、ゴゴゴゴゴゴゴと音を立てながら自動的に開き始めた。




