第512話仕掛けを紐解け
「まだまだ、かわせるけど、どうにか打開策を考えないとっ、状況が改善しないんだよねっ」
この黒い悪魔に攻撃が届かない仕組みをどうにかしないことには倒すことはできない。
それに、相手からの攻撃は都合よくこちらに届いたり、鍵を掴んで飲み込んだりした時点で、何かしらのルールに基づいて攻撃をすり抜けさせたり、させなかったりしているはずである。
「色々試してみるか。
どうすれば、こいつに攻撃が当たるようになるかやってみよう」
「おー」
「らじゃー」
「いくぞー」
ウィリィンは子供達とともに試行錯誤を行う。
まず、カウンター。
相手が攻撃をヒットさせたいタイミングに合わせて、こちらも寸分たがわぬタイミングで攻撃を行ってみるが、攻撃はすり抜けてしまった。
次に死角からの攻撃、相手が見て、判断しているのであれば、こちらの攻撃は当たるはずであるが、残念ながら攻撃は当たらなかった。
目だけでこちらの攻撃を見ているわけではなかったり、そもそも常にすり抜けるようにしているのかもしれないが、そこまでを判別するには至らなかった。
そして、次に
「おお?」
「嫌がってる?」
「効果ありそうー」
「多分、すり抜けの部分解除はできないってことなのかな」
黒い悪魔の身体がある場所に常に魔法を設置しておく方法であるが、なんとこれを凄まじく嫌がったのだ。
最初の方は平然とした顔をしていたのだが、その後、全然攻撃してくる様子が無いことに皆気付き始め、そのすぐあとぐらいに焦れたのか、どうにか魔法から逃れて、攻撃を仕掛けてこようとしたのでこれは効果があると判断したのだ。
「ここまでを纏めると、あいつは攻撃を仕掛ける瞬間は実体化している。
ただし、攻撃より、すり抜ける方が優先されるので、攻撃は当たらず、攻撃が当たりそうな場合は途中ですり抜けるようになって、あいつの攻撃は中断する。
そして、魔法を長い間、あいつの中に置いていると、嫌がり方がどんどん激しくなっていく」
「ということはー?」
「ことはー?」
「はー?」
「ぐぎゃあ!?」
黒い悪魔の体内で魔法がさく裂した。
ウィリィンは笑みを浮べながら、告げる。
「透けていられる時間には限りがあるっ」
そう、この黒い悪魔は常に透けているわけではない。
攻撃が当たらない時は実体を保っており、当たりそうになると、自動的に透明化して、攻撃をやり過ごしているのだ。
となれば、対処法は攻撃を常に当て続けること。
「それに、あいつは自動的なすり抜けに頼り過ぎてる。
だから、マニュアルでの変更は慣れてないっ。
ありゃ!?、当たらなかった」
「とりゃー。
お、当たったー」
「グギャバっ!?」
ウィリィンの理論は間違っていないがタイミングが悪かった。
ウィリィンの攻撃は空を切り、その後すぐに他の子が続いて行った飛び蹴りは黒い悪魔の顔に見事命中した。
しっかりとキメて攻撃したのがすり抜けたのは小恥ずかしいがまあ、気持ちを切り替えて対応することにする。
黒い悪魔はそのすり抜けによる防御に絶対の信頼を置いており、ある種依存している。
そのため、自身ですり抜けと実体化を切り替えできるのにも関わらず、その動きが凄まじく拙い。
この状態であれば、ある程度の被弾は受け入れ、致命傷となりうるものや、こちらからの有効打となりうるタイミングをメインに考えて、実体化とすり抜けを実行すべきであるにも関わらず、ウィリィン達の攻撃を上手くすり抜けさせることができず、ダメージを受けまくっている。
「うおっ、この体内にいきなり埋まる感触、凄い気持ち悪いんだよね」
問題があるとすれば、近接戦を行った際に、自身の身体の一部が黒い悪魔の体内と重なっている状態で実体化した場合、ぬるっとはじき出されるようになることぐらいだろうか。
「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!?」
「おー?」
「力を溜めてるー?」
「おおわざー?」
「こいつ、攻撃のチャージを安全な場所からできるの、ずる過ぎるんだよな」
そう、なぜか槍で攻撃してくるぐらいしかしてこなかったが、このように溜めの長い大技を使ってこられると対処が大変である。
まあ、今までしてこなかった理由としてはこのすり抜ける状態になるのに魔力を使っており、魔力を消費しないような攻撃をメインにしているのだと予想できる。
つまり、この黒い悪魔もかなり追い込まれているということだ。
勿論、チャージしている間も魔法を体内に置いておくことは忘れない。
そして、
「ギャギャギャギャギャギャ」
大技が完成し、両の手のところにバチバチと音を立てたエネルギー体が構築された。
「ん?
でも、それって、皆を攻撃できないんじゃ?
ああ、そういうことね」
黒い悪魔は完全にウィリィンを狙いに定めている。
理由は単純で、ウィリィンがこの魔法を体内に留め続ける嫌がらせをしているためである。
他の子も出来なくはないのだろうが、ウィリィンと比べて安定性に欠ける。
なので、ウィリィンさえ倒せてしまえれば作戦の要の部分が消失し、後はどうとでもなると考えたのだろう。




